30 / 37
第30話
しおりを挟む五月二十九日。
Gランクの試練迷宮が解放された。
……この日のために、レールゴルの街に集まった冒険者は多い。
異世界の各街からだけではなく、地球の各国の冒険者たちもだ。
その数は、かなりのものになっていて、迷宮近くにある街のギルドは、それはもう大忙しの日となる。
だからまあ、専属契約のない職員はそれはもう大変なんだよな。
俺はというと、今日は特に大きな問題はない。
自宅にて、アイフィの支援をするための環境づくりもすでにできている。
迷宮に入ってからも、通信設備などは問題なく通じるので、試練迷宮に挑戦するときはカメラなどを通じて遠隔での管理を行うのが基本だ。
カメラが搭載された自動追従型のドローンとアイフィとの通話用のマイクもすでに準備はできている。
その時、部屋のリビングにアイフィがやってきた。
いつもと格好に大きな変化はない。
ただ、いつもとは違い、片耳を塞がないようにイヤホンがついているくらいだ。
「準備、できましたよ」
「よし、いくとするか」
家で待機していてもいいが、今日はアイフィが初めて試練迷宮に挑戦する日だ。
行けるところまでは一緒にいて、彼女を応援してやりたかった。
部屋を出て、迷宮へと向かって歩いていく。
俺たちと同じような様子の冒険者たちの姿がいくつもある。
職員と冒険者が一人ずつの場合もあれば、職員が複数の冒険者とともに歩いていることもある。
一人で数名見ていることもあれば、例えば仲の良い職員に遠征をお願いしたというケースもあるだろう。
……そして、一人で行動している冒険者の姿もわずかだがある。
職員が何かしらの理由で同行できないという場合もあるが……もう一つの可能性としては専属契約期間が終了してしまった子たちだ。
一年の間にGランクの試練迷宮が攻略できない場合、あるいはその前に冒険者活動が厳しいと判断された場合は、専属契約が打ち切られることになる。
目安としては、半年からだ。
……だが、多くの冒険者はその後も諦めきれずに活動することも少なくない。
それだけ、多くの人にとって冒険者は憧れの存在なんだろう。
……まあ、今の時代、元冒険者の上位の人たちってキラキラしている人が多いからな。
いわゆる、芸能人みたいな立場であり、地球でもよく元Sランク冒険者という肩書の人がテレビなどに出ているものだ。
だが、現実としては、Gランク冒険者になることだって難しい人だって多くいる。
上の方ばかりが見られていて、平均年収が押し上げられているのだが、中央値はけっこう少ないというのが冒険者だ。
街の外へと出ると、迷宮までずらずらと人が歩いているので迷うということはなさそうだ。
俺たちもその列に混ざるようにして歩いていくと、ボルドルに声をかけられた。
「おっ、ショウじゃねぇか。なんだよ、ようやくGランク迷宮に挑戦するのか? おそくねぇか?」
ボルドルが馬鹿にしたようにこちらを見てくる。彼の隣には控えめに会釈をしてきたルーナの姿があった。
ボルドルがルーナの担当になっていたのは知っていたが、まさか今日同じように挑戦するとはな。
「色々と適正を見ていたからな。そっちも……今日挑戦するんだな」
「まあな。さっさとGランク冒険者くらいにはしてやらねぇといけないからな」
まあ、ボルドルが見ているという不安はあるけど、俺よりも指導実績はあるからな。
そのボルドルが、行けると判断しているんだから、俺がとやかくいうことではない。
「おまえには負けないからな!」
「勝ち負けじゃなくて、お互い無事に戻ってくることを祈るぞ」
……ボルドルは、どうにもルーナじゃなくて俺を見ているようだ。
それだけ、アイフィを取られたことを根に持っているんだろう。
まあ、今はそちらよりも……アイフィだな。
外に出てから、彼女はずっと静かだ。
今日のアイフィはいつもよりも気合いが入っている。
いや、入りすぎてしまっている。
緊張、というよりもそのやる気が空回りしてしまわないことが心配だ。
迷宮へと到着すると、到着した順番に入っていく。
一言、二言かわしてから皆が迷宮へと入っていく。
職員たちは迷宮の近くにて、持ってきた椅子とノートパソコンを取り出し、すぐに担当の子と通話を始めている。
俺たちの番が近づいてきた。
アイフィをちらとみると、彼女はやる気満々だった。
……まだ、力は抜けていないな。
「アイフィ。リラックスしろ」
「……落ち着いていますよ?」
「肩の力、入りすぎだ。……やる気があるのはいいけど、ありすぎてもダメだぞ? いつも通りやれば、いいんだ」
色々なGランク迷宮に入って、今日まで体を慣らしてきた。
79
あなたにおすすめの小説
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
倒した魔物が消えるのは、僕だけのスキルらしいです
桐山じゃろ
ファンタジー
日常のなんでもないタイミングで右眼の色だけ変わってしまうという特異体質のディールは、魔物に止めを刺すだけで魔物の死骸を消してしまえる能力を持っていた。世間では魔物を消せるのは聖女の魔滅魔法のみ。聖女に疎まれてパーティを追い出され、今度は魔滅魔法の使えない聖女とパーティを組むことに。瞳の力は魔物を消すだけではないことを知る頃には、ディールは世界の命運に巻き込まれていた。
Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。
故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。
一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。
「もう遅い」と。
これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!
勘違いで召喚して来たこの駄女神が強引すぎる 〜ふざけたチートスキルで女神をボコしながら冒険します〜
エレン
ファンタジー
私は水無月依蓮《みなづきえれん》、どこにでもいる普通の女子高生だ。
平穏な生活を送っていた私は、ある日アルテナと名乗る女神に召喚されてしまう。
厨二臭いその女神が言うには、有給休暇で異世界冒険したいから、従者としてついて来なさいとの事。
うん、なんだその理由は。
異世界なんて興味ない、とっとと私を元の場所に返せ。
女神を殴ったり踏みつけたりしてやっと返してもらえるかと思いきや。
え? 勝手に人間を異世界に呼ぶのは天界の掟で禁止? バレたら私も消される?
ふざけるなー!!!!
そんなこんなで始まる私とポンコツ女神アルテナのドタバタ異世界冒険。
女神が貴族をハゲさせたり、「器用貧乏・改」と言うふざけたスキルを習得したり、ゴブリンの棲家に突撃する羽目になったり、手に入れた家が即崩壊したり、色々起きるけど全てを乗り切って見せる。
全ては元の世界に帰るために!!
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる