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しおりを挟むそんなに敵意剥き出しで来られたからといって、聖騎士の立場が入れ替わるわけでもないだろうに。
その様子を見ていたアレクシアが、からかうような調子で口を開いた。
「嫌われたみたいですね」
「俺何もしてないのにな」
「私の聖騎士になりましたね」
「それで友人できなくなるならやめようかな……」
「いいじゃないですか。私という最高の聖女がいるんですよ?」
わざとらしくウインクしてきたアレクシアを、俺は鼻で笑っておいた。
「さっきの挨拶の時も思ったが、そんなに嫌われるのか?」
「まあ、私って優秀じゃないですか?」
「強引な姿しか見てないからなんとも言えんが……まあ、周りの聖女からは嫉妬されてるみたいだったなおまえも」
聖騎士を準備したから、というよりは大聖女と仲が良くて、という感じではあったが。
「次の大聖女候補の中でも一番手ですからね、私。だから、そんな人の聖騎士になりたい人もいるわけです。なったら、それはもう将来安泰じゃないですか?」
「でもおまえは大聖女になる気はないんだろ?」
「はい。聖女くらいでちょうどいいんです。これ以上……周りの顔色窺って生活するなんて嫌ですし、何より忙しくなりますしね」
周りの顔色、か。
アレクシアが特に気にしているのはその部分のようだ。
「つまりまあ、アレクシアと違って皆は仕事熱心ってことか」
「それにほら、私可愛いですからねぇ。教会騎士の人たちも私を狙っているようなんですよ」
「聖女に可愛さって関係あるか?」
「一緒にいるなら、可愛い子の方が良くないですか?」
「まあ、可愛いとは思うが」
「ふふ、そうでしょう? スチルとしても気になるお年頃ですか?」
こちらにやってきた彼女はうりうりと肘でつついてくる。面倒臭いな。
アレクシアの攻撃を払いながら、ソファに座り、足を組む。
「あくまで、世間一般的な感覚での話だ。でも、さっき聖女たちを見てきたが、皆可愛いかったと思うが。そこまでアレクシアに拘る必要もないだろ?」
俺が冗談のつもりで返すと、アレクシアは頬を僅かに膨らませながら、俺の隣に座り睨んでくる。
「むー、私以外の聖女を褒めるなんて私の聖騎士として失格ですよ」
「いいだろ別に」
「まあ、別に可愛さは必要ありません。ただ、私の場合は貴族としての立場も関係してきます。例えば、先ほどの教会騎士は私に狙いをつけ、私とともに仕事をする機会も多かったのです。伯爵家の方で、野心も強く仕事の終わりにはいつも食事にも誘われるなど、結構大変でしたね」
「あいつも貴族、だったのか」
「教会騎士の八割以上は貴族ですからね。貴族の方を聖騎士に任命すると、それはもう家との関わりも増えるので私としては却下です」
「なのに、俺を聖騎士にしようとしてたんだな」
「ラッキーでした、ちょうど家を追放されてくれて」
「それ、俺じゃなかったら悲しんでるぞ?」
普通追放されて喜ぶ貴族の子どもは少ないからな。
俺だって、安泰だった生活を失ったことを悲しんでいたんだからな。
というか、だいたいの場合ここまで育てられたら政略結婚の道具くらいには使ってもらえることも多いからな。
まあ、俺くらいまで無能ともなると、子どもにも悪影響が出そうとかで不人気になるのは仕方ない。
この世界では、どうやら生まれてきた子どもに能力、才能もある程度引き継がれるようだからな。
人間同士をうまく配合すれば、理想の才能を持った子どもが生まれてきそう、なんてゲーム的な考えを持ってしまっている部分もなきにしもあらずだ。
昔、そんなゲームもあったな。
「あなたが悲しまないことを知っているから、言っているんですよ。家のこと、特に何も思っていなかったでしょう?」
「まあな」
ダラダラ生活できる便利な環境だった、くらいにしか思っていなかったのは事実だ。
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