ゲーム主人公に転生した俺、強くてニューゲームで続編世界のラスボス聖女様に好かれているようです

木嶋隆太

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「そ、それはいきなりこんな行動するなんて思っていなかったからで……」

 多少むせながらではあったが、そう言い訳を並べたルージュノウに俺は改めてため息を吐いた。

「それじゃあ、もしも教会内にスパイがいて、アレクシアを殺そうとしたときにも同じ言い訳をするのか?」
「……そ、その時は動いて守るに決まっているだろ!? 何を言っているんだ!」
「今動けないやつがそんなことを言っても説得力ないんだよ。とにかく、雑魚はいらん。アレクシアの今の聖騎士は一応俺だ。行くぞ」
「一応は不要です。申し訳ありませんが、そういうことですので。それでは」

 アレクシアがぺこりと頭を下げ、俺たちは並んで教会を歩いていった。
 さすがに、あそこまで言ったからかルージュノウたちが追ってくることはなかったが、ますます嫌われたようで憎々しげにこちらを睨んできていた。

 ただまあ……アレクシアは、ルージュノウたちを連れて行きたくはなかったみたいだからな。
 俺としても、さっき伝えた通り足手纏いは不要だ。

 これで、良かっただろう。


 教会を出たところで、アレクシアはフードを深く被った。

「聖女というのは外では街の人たちに挨拶をしながら歩き回るものとされています」
「じゃあなんで姿を隠したんだ?」
「面倒なので。そういうわけで、こっそり外に出て今日の仕事をしましょう。呪いを持った魔物の位置は分かっていますので、すぐに向かいましょう」

 アレクシアはにこりと笑い、俺の手を引っ張ってくる。
 まあ、俺としてもいちいち挨拶なんてしていたくはないな。アレクシアの意見に何の反対意見もない。
 彼女と共に歩いていくと、アレクシアはぽつりとつぶやいた。

「申し訳ありません。先ほどは嫌な役目を押し付けてしまって」
「え? 何がだ?」
「教会騎士の方々を、どのように断ろうかと迷っていました。それが、何やら悪役みたいなことをさせてしまったじゃないですか」
「安心しろ。人を痛めつけることは嫌いじゃないぜ」

 俺がぐっと親指を立ててやると、アレクシアは苦笑する。

「事実、彼が話すように聖騎士をつけたあとも数名の警備をつけるというのも珍しくはないので……間違ってはいないんですよね」
「んじゃあ余計なことをしたか?」
「いえ、助かりました。彼らがいるとなると、サボることができませんので。……彼らは、完璧な聖女様を尊敬していますからね」

 アレクシアはゆっくりと背筋を伸ばし、それから息を吐いた。晴れやかな表情だな。
 俺たちの格好にちらと視線を向ける人はいるが、それでも声をかけられることはない。

 この前。俺が街で強盗を捕まえたときに出会ったアレクシアは、すぐに街の人たちに囲まれていた。
 アレクシアがサボりたい、というのはこういうことなのかもしれない。
 そのまま特に問題なく街の外へと出たところで、アレクシアがフードを外した。

「ふう……さて、まずは呪いの魔物を倒しに行きましょう。あちらから禍々しい気配が感じられますので、向かいましょうか」
「了解だ」

 アレクシアが指差した方へむかってしばらく歩いていく。
 聖女というのは敵の位置を把握する能力を持っていて羨ましい限りだ。
 俺も多少は感知能力があるとはいえ、近くで戦っているやつがいれば気配で分かる程度のものだからな。

 王都の外に出たのは久しぶりだな。夜とかにこっそりと外に出ることはあったが、ここ最近はほとんどそういった機会はなかった。

「今回の呪いの魔物は、一度他の教会騎士と聖女たちで討伐に挑み、失敗しているそうですね。だから、私に仕事が回ってきた、と」

 アレクシアが受け取っていた紙に目を通す。

「それってつまり、ちゃんと仕事してくれたら俺たちの仕事も減ったってことだよな?」
「その場合は、別の仕事が振られていたと思いますね。私、優秀ですから」
「そりゃまた期待されてんな」
「ええ、そうみたいです」

 あまり、嬉しくはなさそうだな。
 ため息混じりに言った彼女が言った時だった。アレクシアの眉間が寄せられる。
 次の瞬間。俺たちの足元が揺れる。
 恐らくだが、アレクシアの聖女としての力に反応したターゲットが、攻撃を仕掛けてきたんだろう。

「スチルっ! 下にいます!」
「分かってる」

 俺はすぐにアレクシアを抱きかかえ、大きく跳びあがった。
 ちょうど俺たちがいた場所をトカゲのようなものが飛び出してきた。
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