捨てられた私が聖女だったようですね 今さら婚約を申し込まれても、お断りです

木嶋隆太

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第3話



 ジャネットが落ち着くまで、一時聖女の儀式は中断となった。
 そして、ジャネットはようやく落ち着き、他の聖女候補二人へと目を向けた。

「私は……選ばれませんでしたわ。けれど、あなたたちがきっと選ばれるでしょう……私の分まで、聖女の任を果たしてくださいまし」

 そういってから、再び涙を流し、ケルズ王子がその肩を抱き寄せていた。

「それじゃあ……次の候補者たち……順番に祈りをささげていってくれ」

 ケルズ王子の声にも元気はない。
 私はそんな彼らの様子を眺めていた。

「そ、そんな……っ」

 一人目が祈りをささげたが、やはり聖女ではなかった。
 次の一人はどこか緊張した様子で、しかし顔には抑えきれない笑みが見え隠れしていた。

 きっと自分が選ばれる、と思っているのだろう。誰も、私なんて眼中になどない。
 その聖女候補が石像の前まで行ったところで、両手を合わせる。

 祈りを捧げ、誰もが彼女が聖女になるのだと予想していたのだろう。
 僅かに盛り上がる雰囲気は……やがて消える。

「ど、どうなっているんだ! な、なぜ誰も聖女になれないんだ!」

 ケルズ王子が発狂した様子で叫び、それから私を見た。

「次は、私でしょうか。王子」
「……お、おまえは――やってみろ。どうせおまえも違う。恐らくだが、この世界のどこかに聖女候補がいるんだ」

 ケルズ王子の言葉に、ジャネットたちも声をあげる。

「そ、そうですわね! 恐らく前の聖女様が一人、間違えてしまったのでしょう!」
「き、きっとそうですわ!」
「ええ、そうに決まっていますわ! あんなただのスラム出身者が聖女になんてなれるはずがない!」

 四人の声に合わせるように、貴族たちの声も荒々しくなる。

「そうだそうだ! 血筋こそすべてなのだからな!」
「ああ! スラムの猿ごときが聖女なわけがない!」
「あんなボロボロのドレスを着るような常識なしの猿が、聖女のはずがない」
「ああ、さっさっと祈れ! そして、その後は牢獄にでもぶち込んでおけばいいさ!」

 好き勝手に騒ぐ周りの者たちを無視するように、私は石像の前へと向かう。
 そして、ジャネットがやっていたように膝を折り、両手を合わせる。
 すっと祈りをささげた瞬間、私の体内に力が溢れた。

 私の足元に神秘的な魔方陣が浮かびあがり、私の周囲を光が包む。
 私が……聖女みたいね。

「あ、ありえない……っ」

 ケルズ王子が驚いた様子でそう言っている。皆が唖然としたまま、こちらを見ていた。
 私はすっと立ち上がり、溢れでる力を確認する。……うん、ずっと訓練していたから、問題なく制御できそうね。

 これなら、この後もどうにかなるでしょう……っ。
 私はすたすたとケルズ王子の前に行き、ドレスの裾をもって、一礼する。
 ケルズ王子はジャネットから体を離し、小さく息を吐いた。

「仕方ないが……おまえと婚約してやろう」
「何アホなこと言っているんですか?」
「は?」
「私はこの力で自由に生きさせていただきます!」
 
 その驚いた顔を見るために、私は今日までいじめに耐えたのよ!

 この国を、破壊し、そして自由に生きてやるんだから!
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