44 / 63
44
しおりを挟むさっきから、通知が鳴り止まない。
……見てみると、チャンネル登録を告げる通知だった。
宣伝したから多少は登録者数が増えてもいいとは思っていたが、なんか想定以上の速度で増えていた。
え? もう登録者数5000人突破?
ネットとか見ていたら、収益化できる1000人にいくのもわりと大変と聞いていたんだけど?
マジで?
まだルルラのショート動画しかあげていないのに?
もうこれルルラチャンネルに変えていいんじゃね?
……これって、もしかして舞のおかげなのだろうか?
それとも、助けたあの空城院って子か?
空城院って子って有名な人とかだったのだろうか?
舞以外のことはよく知らん。舞の友達の使っている武器については知っているが、誰が何を使っていたかはまったく覚えていないし。
まあ、理由はなんであれラッキー程度に思っておこう。
とりあえず、俺はルルラが何かを感じ取っていたのを確認するため、彼女に声をかける。
「ルルラ、あそこの石碑で何を感じたんだ?」
「……なんだか怪しい気配が感じられました。魔力がもっと満ちているときに行ってみたらいいと思います」
「魔力が満ちているときってのはいつなんだ?」
「満月のとき、です」
「……満月か」
「あと、三日後くらいだと、思います」
次の満月までとりあえずレベル上げとか配信とかそっち方面をやっていくとするかね。
しばらくレベル上げをしていてログアウトしようとしたら、空城院なつみと天海マナからフレンド申請がきていた。
メッセージもついていた。
『あとで改めてお礼させてください』
『ウチもあとで何かお礼をさせてください』
律儀な子たちだなぁ。
とりあえず、チャンネル登録者数に関わるかもしれないコネなので、フレンド登録は許可しておいた。
配信を終えた私は……小さく息を吐いた。
それから……天井をじっと見ながら、ぽつりとつぶやく。
「……かっこよかったなぁ」
「なに……? ひょっとこの兄貴のことっすか?」
「うえ!?」
私の近くにいたマナが、ニヤニヤと口元を緩めながら顔を覗き込んできた。
「な、なにかな!? 何のことかな!?」
「とぼけても無駄っすよー、さっきのなつみ、完全にメスの顔してたっすから」
「……め、メスの顔って……してないよ!」
「いやいや、してたっすよ。でもまあ、ひょっとこの兄貴、めちゃくちゃかっこよかったっすね」
「それは……まあ、うん。世間一般的に見てね! 私のピンチに颯爽と現れ、悪をほろぼしていく……王子様、みたいだった」
「ピンチに颯爽と、っていうより、ひょっとこの兄貴にピンチを押しつけた、というのが正解っすけどね」
「細かいことはいいの……うん。世間一般的に見てかっこいいね。うん、私の感情とかは関係なしにね!」
私が見事に誤魔化すと、マナはちょっと呆れた様子に息を吐いてから答える。
「それなら、フレンド申請しておいたらどうっすか?」
「…………え? い、いやでも迷惑になったらいやっていうか……」
「ほら、仲良くなるチャンスじゃないっすか!?」
「そ、そうだけど……」
「それならウチは申請しておくっす。なつみの分まで、ウチがお礼伝えておくっすね」
「……そ、それは失礼になっちゃうね! 私もお礼を伝えないと! だから、お礼を伝えるために! フレンド登録しないとね!」
あ、あくまでお礼をするために!
3
一度、トイレ休憩するためにゲームからログアウトした俺は『リトル・ブレイブ・オンライン』のスマホアプリを起動する。
これは自分のアカウントと連携してあれば、ゲームのデータなどを確認できるようだ。
ミニキャラになった可愛らしいひょっとこと、その隣ではルルラがぷかぷかと浮いている。
『お兄様、どうしたの?』
ホーム画面では、ルルラがそう問いかけてくる。
……AI技術を駆使した、AI彼女なるアプリが流行っていると聞いた。
それは、スマホなどで対話や通話ができるらしいが、ルルラも恐らくそれと似たような技術なんだろう。
ゲームプレイ中以外でも、楽しめそうだな。
297
あなたにおすすめの小説
癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。
branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位>
<カクヨム週間総合ランキング最高3位>
<小説家になろうVRゲーム日間・週間1位>
現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。
目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。
モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。
ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。
テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。
そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が――
「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!?
癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中!
本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ!
▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。
▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕!
カクヨムで先行配信してます!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました
グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れ果てた俺がたどり着いたのは、圧倒的な自由度を誇るVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。
選んだ職業は、幼い頃から密かに憧れていた“料理人”。しかし戦闘とは無縁のその職業は、目立つこともなく、ゲーム内でも完全に負け組。素材を集めては料理を作るだけの、地味で退屈な日々が続いていた。
だが、ある日突然――運命は動き出す。
フレンドに誘われて参加したレベル上げの最中、突如として現れたネームドモンスター「猛き猪」。本来なら三パーティ十八人で挑むべき強敵に対し、俺たちはたった六人。しかも、頼みの綱であるアタッカーたちはログアウトし、残されたのは熊型獣人のタンク・クマサン、ヒーラーのミコトさん、そして非戦闘職の俺だけ。
「逃げろ」と言われても、仲間を見捨てるわけにはいかない。
死を覚悟し、包丁を構えたその瞬間――料理スキルがまさかの効果を発揮し、常識外のダメージがモンスターに突き刺さる。
この予想外の一撃が、俺の運命を一変させた。
孤独だった俺がギルドを立ち上げ、仲間と出会い、ひょんなことからクマサンの意外すぎる正体を知り、ついにはVチューバーとしての活動まで始めることに。
リアルでは無職、ゲームでは負け組職業。
そんな俺が、仲間と共にゲームと現実の垣根を越えて奇跡を起こしていく物語が、いま始まる。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる