ゲームの悪役に転生した俺が、影の英雄ムーブを楽しんでたら、俺のことが大嫌いな許嫁にバレてしまった

木嶋隆太

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 未だ子どもたちからは警戒されていたが、ここにいても仕方ない。
 ヴァリドールの転移石へ移動するため、空間魔法を展開する。

「なんだそれは……?」
「俺の空間魔法だ。今から俺が住んでいる街につなげるから、一緒についてきてくれ。まあ、転移石みたいなもんだ」
「……転移石、だと」

 驚いた様子のルーフたちに、まずは俺が通って見せた方がいいだろうと思い、先に穴を抜ける。
 移動先は転移石の前だ。
 俺が先に向かうと、後からルーフがやってきた。
 少し目立つため、周囲にいた人たちはぎょっとしていたが、俺が頭を撫でるとすぐにペットだと思われたようで、特に問題はなかった。
 幸い、首輪もつけているしな。

「……外出歩く時は気をつけないとな」
「……そうだな」

 ルーフがいた村とは違い、ここでは自由に動き回るのは難しいだろう。
 ルーフの後から、三人の子どもたちもついてきた。
 ……ごっそり魔力使ったな。
 でも、まだまだ残っているので、大丈夫だ。
 だいぶ余裕が出てきた自分が誇らしいぜ。

「それじゃあ、屋敷に向かいながら簡単に街中も案内するぞ」

 俺はそう言ってから、ルーフたちともに屋敷へと向かった。



 家族たちには特に詳しい話はしない。
 三人の子たちは使用人という扱いで、ルーフは戦力の一匹としてこっそり計上しておけばそれで終わりだ。

 うちの家族たちはそこらへんのことをすべて把握しているわけではないし、細かいことは代理人に全て任せているからな。
 彼らがうるさいのは、自分のものを購入するためにちょろまかす時だけだ。
 下手に俺が話をすると、その方が面倒なことになる。
 代理人にもそのように話すと、使用人への費用として計上してくれると約束してくれた。

 使用人たちが使っている寮があるので、三人の子たちにはそちらへ行ってもらい、俺は早速ルーフに鑑定魔法を使ってもらうことにした。

 俺はもっていた短剣を彼のほうに見せる。
 見せたのは、ミスリルナイフの方だ。

「ルーフ、とりあえずこの短剣のスキルを確認できないか?」
「……ふむ。それに付与されているスキルは、【敏捷+25%】のみだな」

 ……へぇ、なるほどな。
 結構いい短剣だとは思っていたが、まさか最高レアリティのスキルがついていたとは。
 冥牙に関しては、スキルは固定されているし、グラディウスもスキルなしだ。
 あとは、特殊モンスター狩りで集めた装備品を調べてもらいたいところだが、結構な量があるからな。
 それはまた今度でいいだろう。

「それじゃあ、ルーフ。とりあえず、今日はこれでいい。落ち着くまでは三人の面倒を見てやってくれ」
「……いいのか?」
「ああ。あとで、スキルの入れ替えをしてもらうつもりだ。その時に動けるようにだけ準備しておいてくれ」
「了解だ」

 ……三人の子どもたちもまだ不安に感じているだろう。
 俺としては今すぐに知りたかったことはそれくらいだったので、ルーフたちとは別れた。
 俺がその場にいるよりも、使用人やルーフたちに任せておいた方が三人も警戒しなくて済むだろうしな。


 俺はルーフの力を有効活用するため、ヴィリアスの鍛治工房へと向かっていた。
 今日は護衛の兵士とルーフを引き連れての面会だ。
 彼女には、もちろん事前に予定は組んである。
 ヴィリアスの鍛冶工房は、いたって普通の住宅街にあった。
 ……鍛冶師たちは魔法を使って装備品を作る。素材と鍛冶師のランクが足りていればあとは魔力のみで製作できるので、場所はどこでもいいのだろう。

 ゆっくりと扉が開くと、ヴィリアスが姿を見せた。

「おはようございます、レイス様」
「おはよう。予定通り、いくつかの装備品を購入したい。大丈夫か?」
「うん、大丈夫です。中へどうぞ……」
「俺とルーフで中に入る。ルーフ。体少し小さくできるか?」
「ああ、大丈夫だ」

 ルーフはすっと体を子犬程度まで小さくした。
 ルーフは体のサイズを変えられる。ただ、普段からは使わないそうだ。魔力消費が大きいため、普段は基本のサイズにしておくらしい。
 ヴィリアスの視線は、ルーフに向けられている。心なしか、輝いているように見える。
 犬……ではないのだが、こういうのが好きなのかもしれない。
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