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第8話 デレック視点
しおりを挟む「それって凄いんですか?」
ガギマルア国の魔物事情には詳しくない。
そもそも、リンドル国ではあまり冒険者というのは流行っていなかった。
リンドル国はまったく迷宮というものが存在しなかったからな。
冒険者がいるのは主に地方だ。俺も幼いころは田舎で暮らしていたが、冒険者に憧れたことはなかったので、冒険者の内情などは知らなかった。
受付は驚いたようにこちらを見てきた。
「と、当然ですよ! 滅茶苦茶倒すの大変なんですから!」
ってことは、たまたま運が良かったのかもしれないな。
「……はぁ、なるほど。とりあえず、それで登録料には足りますかね?」
「よ、余裕ですよ……ていうか、こんなきれいな状態のバウンティマウス中々見られないですよ。これなら、十万ゴールドくらいにはなるかもしれません!」
「なるほど。それって結構な金額、ですかね?」
弱い魔物なのに、それほどの金額になるとは良い魔物だ。
もっとたくさん買ってきてくれれば、この街で暮らす拠点とかも買えるかもしれない。
「……で、デレックさんって冒険者登録したことないんですよね?」
「はい」
「それで前はリンドル国にいた、と。リンドル国では何をされていたんですか?」
「扱い的には使用人に近いものですかね?」
「使用人、ですか……? なのに、戦闘もこれほど得意なんですか?」
「得意じゃないです……魔物との戦闘なんて久しぶりですから……」
俺はあくまでエレノアの稽古の手伝いをしていただけだからな。
といっても、俺では加減したエレノアについていくのが精々だったからなぁ。
大した事はないはずなんだけど、受付さんは驚きまくっている。
「とりあえず、あと三体ほどいますが、それも買い取ってくれますか?」
「しょ、少々お待ちを! ギルドリーダーに確認してきますから!」
「はい。お願いします」
受付が奥へと引っ込み、俺は魔物をアイテムボックスから取り出していく。
「……おい、なんだあの新人冒険者」
「おかしなことやってるぞ……っ。冒険者殺しのバウンティマウスをまさか、四体も狩っちまっているなんて……っ」
「尋常じゃねぇ……。あとで絡んでやろうかと思ったけど、やっぱり手出さないほうがいいな……」
周囲が何やら騒がしいが、気にしないほうがいいだろう。
やがて、受付が戻ってきて、一礼をしてきた。
「買い取らせていただきます。四体の合計で五十万ゴールド、です」
「あれ? ちょっと増えましたか?」
「あ、あまりにも状態が良かったので……」
「分かりました。それじゃあ、それで冒険者登録の費用も大丈夫ですよね?」
「もちろんです。早速試験のほうを受けていただきます。試験は明日、他の冒険者とともに行うことになりますが、よろしいでしょうか?」
「分かりました」
「それでは、明日。この場所に午前9時に来てください」
「分かりました。色々ありがとうございました」
俺は用意された五十万ゴールドをアイテムボックスにしまってから、ギルドを後にした。
とりあえず、思っていたよりも簡単にお金が手に入ってよかったな。
とはいえ、今回はたまたま運が良かっただけだろう。
でも、このお金があれば店舗などを買うこともできるかもしれない。
趣味のポーション作りがどこまで通用するか分からないが、ポーションを製造して販売していれば、安全にお金を稼げるはずだ。
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