上 下
8 / 12

第8話 デレック視点

しおりを挟む

「それって凄いんですか?」

 ガギマルア国の魔物事情には詳しくない。
 そもそも、リンドル国ではあまり冒険者というのは流行っていなかった。

 リンドル国はまったく迷宮というものが存在しなかったからな。
 冒険者がいるのは主に地方だ。俺も幼いころは田舎で暮らしていたが、冒険者に憧れたことはなかったので、冒険者の内情などは知らなかった。

 受付は驚いたようにこちらを見てきた。

「と、当然ですよ! 滅茶苦茶倒すの大変なんですから!」

 ってことは、たまたま運が良かったのかもしれないな。

「……はぁ、なるほど。とりあえず、それで登録料には足りますかね?」
「よ、余裕ですよ……ていうか、こんなきれいな状態のバウンティマウス中々見られないですよ。これなら、十万ゴールドくらいにはなるかもしれません!」
「なるほど。それって結構な金額、ですかね?」

 弱い魔物なのに、それほどの金額になるとは良い魔物だ。
 もっとたくさん買ってきてくれれば、この街で暮らす拠点とかも買えるかもしれない。

「……で、デレックさんって冒険者登録したことないんですよね?」
「はい」
「それで前はリンドル国にいた、と。リンドル国では何をされていたんですか?」
「扱い的には使用人に近いものですかね?」
「使用人、ですか……? なのに、戦闘もこれほど得意なんですか?」
「得意じゃないです……魔物との戦闘なんて久しぶりですから……」

 俺はあくまでエレノアの稽古の手伝いをしていただけだからな。
 といっても、俺では加減したエレノアについていくのが精々だったからなぁ。
 大した事はないはずなんだけど、受付さんは驚きまくっている。

「とりあえず、あと三体ほどいますが、それも買い取ってくれますか?」
「しょ、少々お待ちを! ギルドリーダーに確認してきますから!」
「はい。お願いします」
 
 受付が奥へと引っ込み、俺は魔物をアイテムボックスから取り出していく。

「……おい、なんだあの新人冒険者」
「おかしなことやってるぞ……っ。冒険者殺しのバウンティマウスをまさか、四体も狩っちまっているなんて……っ」
「尋常じゃねぇ……。あとで絡んでやろうかと思ったけど、やっぱり手出さないほうがいいな……」

 周囲が何やら騒がしいが、気にしないほうがいいだろう。
 やがて、受付が戻ってきて、一礼をしてきた。

「買い取らせていただきます。四体の合計で五十万ゴールド、です」
「あれ? ちょっと増えましたか?」
「あ、あまりにも状態が良かったので……」
「分かりました。それじゃあ、それで冒険者登録の費用も大丈夫ですよね?」
「もちろんです。早速試験のほうを受けていただきます。試験は明日、他の冒険者とともに行うことになりますが、よろしいでしょうか?」
「分かりました」
「それでは、明日。この場所に午前9時に来てください」
「分かりました。色々ありがとうございました」

 俺は用意された五十万ゴールドをアイテムボックスにしまってから、ギルドを後にした。
 とりあえず、思っていたよりも簡単にお金が手に入ってよかったな。

 とはいえ、今回はたまたま運が良かっただけだろう。
 でも、このお金があれば店舗などを買うこともできるかもしれない。

 趣味のポーション作りがどこまで通用するか分からないが、ポーションを製造して販売していれば、安全にお金を稼げるはずだ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

王妃となったアンゼリカ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:171,153pt お気に入り:7,831

【完結】私がいなくなれば、あなたにも わかるでしょう

nao
恋愛 / 完結 24h.ポイント:15,511pt お気に入り:937

転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,004pt お気に入り:23,945

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:2,971

乙女ゲーム関連 短編集

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,640pt お気に入り:155

処理中です...