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第二章 自立
第14話 イベリア歴622年 イレーネ
しおりを挟む私は鍛冶屋の店先に突っ立って、一人の若い女性と睨み合っていた。
女は私をにらみ、怒り口調でこう言った。
「あなたねー、私のイバンとどういう関係なの?どーいう事なの、説明しなさいよ!」
「イバンは私の夫だ!互いに愛し合い、結ばれたんだ。これが答えだ。」
「なんでって、ウソつかないでよ。信じられない。ここ数日なんも変化なかったのに。今日店の前を通ったら、あんたが開店の準備してるし、イバンの部屋にも出入りしてるし……なんなのよ!」
「だから、私はイバンの妻だ。」
「キィー…なんてふてぶてしい!年増のドワーフなんだから、この泥棒ねこ!私がイバンの妻よ!」
「図々しい女だな。だいたい年増とはなんだ!そんなに年は変わらないじゃないか。お前十八くらいだろ?だいたい、イバンが結婚してないのは、ご近所さんもみんな知っているぞ。」
そこへ、何も知らないイバンが最悪のタイミングで走ってきた。
「ハァー…忘れ物取りに来た。……あれ?イレーネ、なんでこんな所に?……あっ、紹介するよ!妻のイザベルだ。仲よくしてくれって……え、なんで泣いてるの?」
「イバンのバカー!」
「えっ……あ、走っていった……」少し走って離れた所で、彼女は罵声を浴びせた。
「イバンのちん〇す野郎ー!」
「ちん〇す野郎ってなんだよ~。なんか怒らせることしたか?イザベル、なんかあった?」
イバンの言葉を聞きながら、私は数日前の出来事を思い返していた。
「あなた……イレーネのこと、だましたの?私を騙したの?」
「誓って、何もないよ。イレーネは幼馴染で、今まで恋人として過ごしたことも、結婚の話をしたこともない。だいいち、さっき会ったのは一か月ぶりだ。イレーネの家の食堂で親方とみんなで慰労会をした以来だから。」
「……分かった。信じる。疑ってゴメン!」
それにしても、イレーネか。亡くなった姉と同じ名前で、やりにくいな……。
▼△▼△▼△▼△
数日前、アントニオとマルタに相談した。一目惚れしたことを中心に、イバンの人柄は二人も認める善人だ。(二人から見たらイケメンではない)アントニオは、いずれ彼女も結婚して家庭を持つだろうと思っていて、ただ今回の件から「安心できる若者と結ばれてほしい」と言った。イバンは二人から見て安心できる人物なのか聞いたら――
「大丈夫だと思うが、年下だろ!よし、今度探りを入れてみる。」
そう言うと、マルタが口を挟んだ。
「あんた、ダメだよ~。イバン、あんたのこと怖がってるから。私が行くよ。こういうの好きだし得意だから、まかせなさい。」
「マルタ!やっぱり私が行くよ。」
「あ~ダメダメ。取っ掛かりは私に任せて。次はイザベルが話さないといけないからね!」
「……分かった。」
次の日、マルタが戻ってきて言った。
「感触良かったよ。あなた美人だからね。美人を笠に着てお高い人も多いけど、あなたはそういうのがないから。」と言われて、私は何年ぶりかに照れてしまった。
それから私は答えた。
「あの、あれから考えたんだ。私、鍛冶が得意だから、あそこの鍛冶屋で働きながら少しずつ仲良くなれたらと思った。」
マルタもアントニオも賛成してくれた。
話は進展し、二階の空き部屋に引っ越して本格的に鍛冶屋を始めた。炊事洗濯も当然する。イバンはあまり良い食生活をしていなかったから、食事は本当に美味しそうに食べてくれた。そして感謝された。お弁当を持たせ、朝と夜は家で食事をとり、外食がなくなった。
数日後の夕食後、お酒を飲みながら楽しい話をしていて、不意に見つめ合ったとき、私は抱きついてしまった……。
二人は同じ部屋で過ごすようになり、数日後、アントニオとマルタに結婚の報告をして現在に至る。そして数日後、イレーネの登場となるわけだ。
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