戦国鍛冶屋のスローライフ!?

山田村

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第一章 鹿島

第三話 明応二年、身内

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 四歳のある日、姉に手を引かれて父の兄、藤兵衛伯父の家へと向かった。

 伯父はこの地区の村長を務めている。姉は俺を従え、鎌や鍬といった修理の品々を届けに、伯父伯母に丁寧に挨拶を済ませた。納品を終えると、姉は伯母に褒められ、得意げに胸を張って有頂天だ。

 俺も軽く挨拶を済ませると、ふと奥の方から視線を感じた。覗き見ると、母親らしき女性と二人の童がいた。軽くお辞儀をして伯母を見ると、伯母は優しく言った。

「卜部様方のご子息、常賢様と朝孝様(後に卜伝と称される方ね)。お武家様だから、無礼のないようにしなさいよ!」

 要するに、父の姉が武家に嫁ぎ、その娘が卜部家に嫁いでいた。そして今、その二人の童が母の実家であるここに連れて来られているのだ。日本の戸籍制度でいうところの「従姉妹」にあたる。歴史オタクである俺は、心の中で管理官に深く感謝した。

 塚原卜伝が、まさか身内「だ!」思わず「だ!」と声に出てしまった。

 これは挨拶をして、顔を繋いでおくべきだろう!

「どうも、佐田村の鍛冶屋、矢五郎の次男、直道です」

 俺は、後に従姉妹だと判明する女性に挨拶をした。

「矢五郎おじさんのところの直道ちゃんね!」

 彼女の話によると、父の鍛冶屋では出来の良い刀や槍を定期的に納めており、しかも格安だという。武器は消耗品なので、使えなくなったものは回収してリサイクルしているらしい。回収した金属を再利用するため、身内価格で格安提供しているのだそうだ。

 朝孝(卜伝)はまだ四歳。剣聖の覇気など微塵もなく、ただの可愛らしい童だ。

 俺が常賢と朝孝兄弟に「大人になったら名刀を献上する」と啖呵を切ると……従姉妹の女性は泣きながら大笑いしていた。

「直道ちゃん! その時はよろしくね!」

 まあ、好印象を与えられたということで、良しとしよう。ちなみに、その従姉妹は香(かおり)という名前だった。

 卜伝遭遇イベントから数カ月が過ぎた。姉が簡単な読み書きの手習いをしている時、邪魔にならないよう横に座り、俺も手習いのふりをして時間を過ごす。

 簡単な読み書き習得のアリバイ工作をしつつ、日々を過ごす。人はちょっとしたミスをして、ぼろを出してしまうものだ。俺のような前世の記憶や、知識のインストールは危険すぎる。何事も保険が重要だ。鍛冶屋の次男で、まだ幼児の俺に、後ろ盾などいるはずもない。

 この地区は鹿島だが、弱小国だ。後に佐竹や千葉に、さらに小田氏に切り取られる土地。今はひっそりと過ごすことが一番だ。とにかく関東は荒れ狂っており、両上杉や公方親子といった欲の塊がひしめき合い、泥沼のような権力争いを繰り広げている。歴史の資料で知る関東の権力者たちは、重税で領民を苦しめ、戦を繰り返しては衰退していった。

 前世の政治家も命は取られないが、上層部の権力争いの中で、末端の者は虫けらと同じ扱いだった。そこは今も昔も変わらない。利権で全てが動いている。敗戦から国民は大人しく耐えるように洗脳され、この時代のようには一揆もできない。せめて選挙で、と思ってもマスコミの洗脳で六割以上の国民が眠っている。公約を一つも実行せずに次の選挙で当選するなど、国民が目覚めていればあり得ないことだ。

 この時代は、自分の欲のままに人殺しが横行し、それに加担する家臣、戦では農兵の乱捕りが生活費になる無法地帯である。最終的に北条家が関東の覇権を取るので、小田原征伐で秀吉が来る頃には俺は百一歳なので、とっくに死んでいるだろうが、それまでは小田原が安全かと思った。しかし、朝孝(卜伝)と出会ってしまった以上、十六歳で武者修行について行き、織田家や徳川家といった選択肢も検討する価値はあるかもしれない……要検討だ。

 武将として生きるつもりはないから、権力者のおもちゃになってたらい回しにされるのは……いや、いやダメだ! 戦に関わってしまえば、スローライフが遠のく。前者の道を選べば、社畜決定だ!

 まあ、最後は神頼み、だろうな! 神様(管理官)からの干渉があり、ありがたい情報も授かったのだから。

「神様が夢枕でお告げを……」と、はぐらかす。真実なのだから、きっと説得力はあるはずだ。
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