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第一章 鹿島
第六話 明応六年、臨時収入
しおりを挟む朝孝(卜伝)に結果を聞いてみたら、先日の怪我人騒ぎが効いたのだろう。
「そんな物があるのなら、試す価値があるな!」
というので、塚原家に試作品を持って試してもらった。
(矢五郎、かなり前から構想して制作していたな! 息子が手の怪我をしないように考えたのだろうな)
そんな目で俺を見ながら、塚原様は「その竹刀で小手を打ってみろ」と言い、弟子に打たせる。小手に竹刀を当てても痛みはあるが、骨が折れることはない。これからの修練の様子を想像してか、塚原様は空を見上げ、なにやら考え込んでいるようだった。
「これは、売ってくれるのか?」
その問いに、俺は答える。
「竹刀は十二文(約千二百円)、小手は百二十文(約一万二千円)くらいの価格想定で、今回は特別価格です。後には練習用の面や胴、垂れ、脛当も作ります」
一か月後、二セットを道場に納入した。使用者の反応は高評価で、甲冑に比べ軽く、動きやすい。そして、木刀と違い、当てる練習ができることが何より実践に役立つと喜ばれた。
前世の防具なのだから、当然の結果だ。
練習で門弟が大怪我や死人を出さないのだから、木刀での練習より激しく安全に練習ができ、まさにいいこと尽くし、というわけだ。
「十セット以上注文で、五貫(単価五百文)でどうですか?(単品なら六百文です)」
そう営業をしておいた。
数日後、二十セットの注文を受けたので、親父に材料の調達をお願いした。数日後には扱いやすい材料が揃い、毎回朝練の後に良質の材質で作業効率が上がり、日に一セットを完成させるペースで制作できた。二か月後、無事納品できた。
今回は二割の儲けだ。親孝行のつもりで、親父に全て渡した。一か月弱で二貫という臨時収入に、親父はご機嫌だ。仕入れ以外、無労働だったしな!
ただし、機嫌のいい親父をお袋が臨時収入の使い道について懇々と問い詰め、結局全て回収され、我が家のいつもの法則が発動していた。
ふてくされた親父を横目で見て……「平和な我が家だな~」と心の中で呟き、その日は就寝した。
ちなみに、俺が全て制作していることを道場の連中は知らない。将来の注文に備えて、自分以外が作れるように詳しく説明書と図面を作り直した。
防具は見本在庫も必要だから、コツコツと作ることにした。竹刀は消耗品なので、修繕用も必要だ。だから在庫は多めに用意する予定で、竹を大量に仕入れて乾燥させている。竹刀はもう一人の剣聖、上泉信綱が袋竹刀の考案者として伝わっているが、前世とは形が違うから「ゴメン!許してください」。
多分、「あなたもこの存在を知って使うことになると思うよ!」
母は、兄の結婚資金や姉の嫁入り資金について話をしていた。兄は別として、姉の嫁入りはまだ先だろうと思っていたが、最近、近所のお宅で十歳の嫁をもらった、という話があったから、現実的なのかもしれない。前世では犯罪だし、その記憶があるから、どうも調子が狂う。せめて成長期が終わる頃に子供を授かるようにした方が、母子共に良いと思う。
それに関連して、医療が「ヤバイ」、危険な民間医療がたくさんある。簡単に作れる薬は今のうちに作ってレシピを書き止めておこう。材料を集めて薬箱も用意しよう。
漢方薬の材料はたくさん生えている。毎日集めればできる量も多くなるし、朝孝(卜伝)のところや卜部家の香さんや藤兵衛おじさんなどに届けてもいい。あとは格安で売ればいい。効き目は前世と同じだから、間違いなしだ。
生きるための保険は必要だ。
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