57 / 59
第四章 信長
第五十七話 天正十七年、小田原征伐
しおりを挟む俺も百歳を超え、もはや化け物だ。百を境に少し縮んだが、頭と体がしっかり動くので、もう少し世の中を見てから、「おさらば」できそうだ。モニター越しに各戦況を去年から把握していたが、北条海軍は無論、無敵である。
核融合動力の海軍戦艦を小田原沖に配備した。空母「早雲」を中心に護衛艦を四隻配備し、領内海域に入れる軍船は皆無だった。小・中型艦は消え去り、大型艦は航行不能となり、大将と側近を確保した。
山のでかい空母に連行された彼らは、自分たちの大型船が小舟だと自覚し、戦力差を実感する。先行き不安から武者震いが止まらない面々を、空母「早雲」で北米帰りの信長たちが迎えたのだった。
信雄は驚愕して土下座をし、泣き始め震えだした。
「すまぬ。連絡を入れず。お前の行動は理解している。許せ!」
「父上~、うぉ~~~~……」
「これから、お前は世の中のこと、日ノ本のことを学び、明日を支える人材になれ」
高崎を拠点としていた真田親子は、小諸周辺を占拠して戦闘をしていた。ゲリラ戦や野戦を含め、大将の前田利家を捕らえ本部へ連行。秀吉軍は大将不在により追加攻撃に耐えられず、撤退解散した。
信長は面白い事が大好きで、三河の豊橋から前進できない秀吉に対して使者を送った。秀吉は、使者の顔を見て腰を抜かした。
「殿より言伝だ、これを。……殿は、命は取らぬ。迎えの車に乗り会いに来い」
勝家の言葉と文の花押を見て、秀吉は顔を青くした。
間もなく騒がしい音が段々と近づき、オスプレーの姿が見えてきた。秀吉たちは、この世のものと思えない鉄の塊に恐怖を覚え、動揺する。その様を、日焼けで浅黒い勝家が勝ち誇るような笑みを浮かべ、こちらへと機内に案内され乗り込む。約三十分、秀吉たちは無言で空母「早雲」へ到着した。
オスプレーが着陸し、甲板エレベーターで船内に降下する。タラップから降りると、前方には死んだはずの氏康(石原莞爾)と信長、信忠。その後ろには信雄、利家、そして二百の海兵が整列して迎えた。
「統一ご苦労。謀り事のことは、問わない。奥州仕置を年内に完成させよ。その後、今後の予定を話す。終わったら小田原に来い。」
その日、秀吉は十歳年をとり、六十代の見た目に変貌した。豊橋に秀吉を戻し、北条海軍で常陸の大津まで送り、奥州に送り出した。
氏康(石原莞爾)と信長は、幻庵(高橋是清)のいる京で合流し、公家と今後の流れを決める会合に向かった。二条昭実を中心に摂家との会合だった。当然、近衛前久も参加しており、信長や北条の面々を見て青い顔で震える近衛家の者たちとは対照的に、二条一派のロビー活動は完了しており、朗らかに談笑していた。
これからの日ノ本の新しい制度と資料を渡し、説明をしていく。二条昭実より帝の了解も得て、前世日本の皇室の制度と権威、そして江戸への遷都について、立憲君主制・議会制国家の体制を簡単に説明し、摂家を含む宮内庁の職務の説明をした。
全て陛下を守るために作られた資料に、近衛家の驚愕と落胆をよそに説明は続けられた。内容的には完璧に近い資料だったため、私利私欲の者には厳しい提案だろう。
会議が終わり、五摂家の皆さんを中心に会議参加者と豪華会食が催された。秀吉が今どんな立場で何をしているかを巨大スクリーンに、昨日の奥州でのドローンで撮影された映像を流して説明した。
秀吉軍が伊達家へ向かう映像と、伊達家が慌てて秀吉軍に向かう映像が説明された。この伊達家の動向が、間もなく日ノ本が一つになり、新政府として機能する前触れであると説明されたのだ。最新の技術に驚愕する皆を見ながら、変わる現実を実感しているようだった。
公家の皆さんも、安全で安定した生活をし、公僕として帝に仕える本来の状態を維持することは、公私ともに望ましい姿だと思う。宮様はハワイがお気に入りで、統一後に帰ると言い、楽園でまったりしている。その事を伝えると、元お仕えの者から、安堵と、「私もまたお仕えしたい」という声も上がった。二条様には伝えていましたが、織田家の事情から機密事項でしたからね。
翌月、秀吉が小田原に着き、奥州の報告にやってきた。近代化された都市を見て有能な彼は、現実に対する順応力は極めて高い。自分の立ち位置を理解し、信長に対しては、仕えていた時と同じ態度で接した。新政府はかつての権威などはなくなり、新体制へと移行する。
秀吉は順応し学習を選び、自分の手にしたもの全てを手放した。
21
あなたにおすすめの小説
異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~
たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。
たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。
薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。
仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。
剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。
ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
死んだ土を最強の畑に変える「土壌神の恵み」〜元農家、異世界の食糧難を救い、やがて伝説の開拓領主になる〜
黒崎隼人
ファンタジー
土を愛し、土に愛された男、アロン。
日本の農家として過労死した彼は、不作と飢饉に喘ぐ異世界の貧しい村の少年として転生する。
そこは、栄養を失い、死に絶えた土が広がる絶望の土地だった。
だが、アロンには前世の知識と、土の状態を見抜き活性化させる異能『土壌神の恵み』があった!
「この死んだ土地を、世界で一番豊かな畑に変えてみせる」
一本のスコップと規格外の農業スキルで、アロンは大地を蘇らせていく。
生み出されるのは、異世界人がかつて味わったことのない絶品野菜と料理の数々。
飢えた村人を救い、病弱な公爵令嬢を元気にし、やがてその評判は国をも動かすことに――。
食で人々を繋ぎ、戦わずして国を救う。
最強の農家による、痛快異世界農業ファンタジー、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる