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ユキ、護送される
しおりを挟む視聴者の皆おはよう。ユキだよ。
ちょっと今とんでもないというか、理解したくないような状況が広がっているんだけども、聴いて頂けるだろうか。
◆◆◆◆◆◆◆◆
名前:グレゴール
職業:聖騎士
LV:100
◆◆◆◆◆◆◆◆
こちら、私の目の前に跪いている騎士さんのステータス。
物凄くお高そうな全身鎧(フルプレートアーマー)に身を包み、いかにも高貴なところに所属していそうな雰囲気を纏っている。
そんなやんごとなきお方が、なぜ、どうしてと思うだろう。
安心して欲しい。
私もだよ! ちくしょうめ!!
「え、えと、あの。貴方は?」
聖銀
「申し遅れました。私は、バギーニャ王国聖銀騎士団団長、グレゴール・トルストヤと申す者」
恐る恐る聴いてみたところ、やけに畏まった様子で答えが返ってきた。
声はどことなく女性的というか、ちょっと高めな感じなんだね。
「グレゴール、さん」
「グレゴールで構いません」
「え、いや、そういうわけにも」
「聖女たる貴女様なら当然のことでしょう」
「うえっ。いや、ほら、人違い……」
「ご謙遜を。あれだけの御業を成されていて」
「…………観てた?」
「はっ。しかと、この眼に」
思わずがっくりと項垂れる。
うー。誤魔化しは利かないっぽい。
「……グレゴールは、どうしてここへ?」
「久しく行われていなかった神の試練が起動したとの報告を受けましたので、その確認をと」
神の試練…………うん。心当たりしかないね。
あの変なクエストが、たしかそんな説明文だった気がする。
「神の試練、ですか」
「ええ。それも、神殿ですら与り知らぬという前代未聞のことが起こり、しかもそれが突破されたという訳ですから」
「……なる、ほど」
どうしてだろう。フルフェイスな兜のせいで顔は見えていないはずなのに、物凄く視線が痛い。
一体何をやらかした? って詰問されている気分だよ……
「聖女様は……「すみません。ユキ、です」 ユキ様は、異邦の者という認識で宜しいでしょうか?」
イホウノモノ
ちょっとまってまた知らない単語が出てきたんだけど。
聞き覚えがあるような気もするけど、出てこない。
「え、えーと…………」
『異邦者。プレイヤーたちの総称。逆にNPCのことは現地人って呼ぶ』
わぁっ!! コメントナイスすぎる!
そっかそっか、そりゃ聞き覚えあるはずだ。
「あ、はいっ! 一応、そう呼ばれる存在みたいです」
「なるほど。では、この後お時間は御座いますか?
異邦の者は、突然に元の世界に帰ることも多いと聞き及んでおります」
あー。ログアウトのことかな。そういう扱いになっているのね。
流石にゲーム上、現地の人たちにも理解がある訳だ。
一応時間を確認。
うん。まだ、お昼にもなっていない。
「大丈夫。問題ありません」
「それでは、少しだけご同行頂いても宜しいでしょうか。
勿論、異邦の方にあまり時間は取らせないようには致します」
一応問いかけの形ではあるけれど、これって断れるものなのかな?
いやまぁ、別に構わないんだけどさ。
頷いてみせると、彼はすっと立ち上がった。
「感謝します。先導致しますので、こちらへ。露払いは彼らがこなします」
彼ら……? あ。
グレゴールさんがインパクト強すぎてすっかり気づいていなかったけれど、少し離れたところに四人ほどの騎士さんが立っていた。
皆同じような鎧を着けているので、これも聖銀騎士団とやらなのだろう。
私が目を向けた瞬間、一斉に片膝を突いて頭を垂れる。
一矢乱れぬ、阿吽の呼吸がそこにあった。
見事としか言いようがない所作の後、彼らは微動だにしない。
……ああ、うん。なんとなくわかったよ。
「……お願いします」
ハッ! と威勢の良い返事と共に、彼らは立ち上がり前方へ向き直る。
私を中心とした半円状の陣形を形成して、このまま前に進むつもりらしい……ということがなんとなく見て取れた。
こっそり確認したレベルは、全員70を超えている。
いやまぁ、うすうす察してはいたけども!
「では、参ります」
グレゴールさんは、私のほんの少し前を歩くつもりらしい。
一切振り向いていないのに、私と付かず離れずの距離を保っている。
『強制送還で草』
『今の気分をお聞かせください』
『虜囚じゃん』
『お前はやり過ぎたんだよ』
『聖女、捕虜になる』
『装備の差が……』
『村娘を取り囲む騎士団になってるw』
救いを求めて観たコメント欄が、1ミリも救ってくれなかった件について。
私が拾おうが拾うまいが関係なく、あんたら容赦ないのね!!
まあでも、確かに装備の格差は酷い。騎士団の方々が凄いってのもあるけども、私未だに初期装備だもんね……
聖銀騎士団の方々に先導されながら、南へ南へと歩いて行く。
しばらく進むと、巨大な城壁が見えてきた。
高さ10メートルはありそうな石の壁が視界いっぱいに広がり、思わず圧倒される。
「うわぁ…………」
「バギーニャ王国聖都、ドゥーバです。最前線都市アジーン……ユキ様たち異邦人が舞い降りた地……とバギーニャ南部を結ぶ、非常に大事な都市でもあります」
「なるほど……ん。最前線、なんですか? あそこ」
「ええ。詳しい話は後ほど。一先ずは神殿へと御案内いたします」
「わかりました」
うん。なんというか、あれだ。
そーいうものだと思えば、案外普通に対応できちゃうかもしれない。
威圧感さえ感じさせる門を通り抜けると、城内へ。
あ、城門に関しては完全に顔パスだった。
門番の方々がすっごい萎縮していたように見えたけど、やっぱりグレゴールさんはとんでもないお方なんだろう。
馬車が何台も通れそうな大通りをしばらく歩いていると、全面が白く塗り固められた巨大な建造物が目に飛び込んできた。
ひと目で察する。あれが、神殿だろう。
そのさらに奥には城のようなものが遠目に見えているが、今回は行かない……というか正直な話、一生いきたくない。
いやだって、お城だよ? 王族みたいなのもいるんでしょ。絶対やだよ。
え? 神殿は良いのかって? ハッ。言わせんなばっかやろー!
そもそも、この集団自体が嫌すぎる。
物凄く頼もしいのはそのとおりだし、なんならこの人達が来なければ死に戻ってただろうことも認める。
けど、それはそれ、これはこれ。 一人にでも剣を向けられた瞬間 即ゲームオーバーな状況で、緊張しないはずがない。
それに、多分この騎士団の人たちのせいなんだろうけど。
道行く人にまで畏怖の目を向けられるとともに、あれ?あの中心にいる村娘はナニモンなんだ。
みたいな視線がガンッガン飛んでくるんだよね! きついったらありゃしない。
私は見世物じゃないんだーーー!!
直接的な奇異の目をほうぼうから向けられ続けるのは、いくら配信に慣れてきたとはいえ流石に心に来るものがある。
新しい街に興奮醒めやらぬ様子のコメント欄を眺めるのが、唯一の心の安寧。
おいそこの『ドM凄女の行脚w』とかコメントしたやつ、絶対許さないからな。
私はドMでも凄惨でもないし、別にこれは目的があって歩き回っているわけではないの。
寧ろ拘束されているの!
『凄女の押送だったかな』
「あんた絶対カナに焼かせるからね」
「ユキ様?」
「ああっ! いえ、なんでもないんです」
「そうでしょうか。何かありましたらなんなりとお申し付けを」
……危ない。うっかり殺意の波動に目覚めるところだったわ。
うっかり漏れ出た声が聞こえたのだろう。訝しげに振り向いた騎士様を、全力の愛想笑いでごまかす。
納得したかはわからないけど、とりあえずは追及されなかったので良しとしよう。
そうこうしているうちに神殿に入り、奥の一室に通された。
グレゴールさんは一時退出なさって、部屋に残されたのは私一人。
あまりにも広く、そしてお高そうな調度品に囲まれた部屋。それが今の扱いを物語っているような気がした。
何かあれば、扉の前に待機している騎士さんを介して伝えれば良い。
そして、『元いた世界に還る』ときも連絡を残してほしいとのこと。
まあそりゃそうだよね。急にログアウトされちゃったら、こっちの人にとっては消えたも同然なんだから。
さて、と。 これからどうなっちゃうのかねぇ……!
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