『ライフで受けてライフで殴る』これぞ私の必勝法

こまるん

文字の大きさ
32 / 63

お泊まり

しおりを挟む
 


「……アンタのせいで、色々大騒ぎなんですけど?」

 ゲーム内で色々とやらかした、その日の夕方。
 私は手土産のクッキーをぶら下げて、奏の家にお邪魔していた。

 お母さんとお手伝いさんに挨拶をし、親友の部屋へ。
 出迎えてくれた彼女の第一声が、これだ。

「あーいやー……えへ」

「えへ  ちゃうわ!  全くもう、何をどうやったらあんなことになるんよ」

「……ノリと、勢い」

「ノリでこんなにガンガン行かれたら叶わんわほんま」

 勢いよくベッドに背中から飛び込んだ奏が、大の字になる。
 私も、なんとなくその隣に座った。

「なー深雪」

「ん、なに?」

「サービス開始してから、今まで何日経った?」

「え? うーん………………今日で、4日目?」

「そう、たったの4日や。未だ殆どのプレイヤーは一体もエリアボスなんか倒してへん。レベルも1桁や」

「そうなんだ?」

「そーいうもんや。まあ、私みたいにゲーム慣れしていて、かつ時間もそこそこ取れた輩はそうでもないけどな」

 つまりや、と奏は続ける。

「いきなりアナウンスでワールドクエストがどーこー言われても、別世界の出来事としか思えん人が大半。とーぜん大パニックっちゅーわけ」

「ほえー」

「ま、ユキのリスナー……視聴者の人たちがあちこちに情報飛ばしてくれたから、大体落ち着いたけどな。
 今は、如何にしてS4の街まで辿り着かせるかって話題になっとる。攻略も、より活発化するやろな」

「あー。いつもコメント投げてくれる人たち、そんな事までやってくれてたんだ。
 わたしも手伝ったほうが良いのかな」

「いや。そういう情報を集めたり発信したりしてる人は、やりたくてやってるだけやから任せといてええのよ。
 変に深雪がなにかするよりも早く情報は上がるし。
 それになによりその人らにとっても、ユキが気にせずガンガン暴れてくれた方が新鮮な情報がより入ってありがたいってわけ」

「ほー……なるほどねぇ。
 要するに、私は今まで通りって感じで?」

「結局そーいうことになるね。
 ま。クエストの本番までまだ大分あるやろ? どこまで強くなれるかはさておき、行きたいモンはみんなドゥーバにはいけると思うで」

「ああ、そうだね。詳細メールには二週間後って書いてたっけ」

 そう。突然のワールドクエスト開始というアナウンスだったけども、しばらくは準備期間みたいな扱いらしい。
 あちこちにゴブリンの出没が盛んになって、それを退治した量に合わせて二週間後の大侵攻がちょっと楽になるとかなんとか。

 主力はドゥーバに押し寄せてくるけど、アジーンの方にも幾らか攻めてくるから油断なきように……とメールは締めくくられていた。

「せやろ?だからまぁ、なんとかなると思う。
 ま、最悪2人で全部片付けちゃえばOKよ」

「あはは。いいね。それくらいの気持ちで頑張っとこうか。
 順調に、カナのサポートをできそうなスキルも増えているよ」

「え?  歩く災害凄女サマにサポートスキルとか、なんの冗談や?」

「あーー!! カナまでそんな呼ばわりする!! 魔王様のくせに!」

「はー。言ってはいけないことを言ったねぇ。この口か?」

 不意に起き上がり、飛びかかって来た奏に、勢いよく押し倒される。
 のしかかった上で両の頬をつまんできた手を、振り払った。

「ちょ、急に乗らないで、重いっ」

「かっちーーん。アンタ今、乙女に言ったら絶対許されないワード第一位を!」

「いや、だって、事実……っ! や、やめっ、あはははっ」

 ツンツンと脇腹をつつかれ、思わず身をよじった。
 くっ、奏、ズルすぎる。
 運動能力で勝ち目が無いのと、私がくすぐりに弱いのを分かった上で……!

 なんとか反撃に手を伸ばそうとするも、そのつど新しい攻撃が加えられ、手を引っ込めてしまう。
 結局、晩御飯に呼ばれるまで、奏にはずっと弄ばれ続けることになった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇



 晩御飯を食べた後は、奏のお母さんも交えた雑談。

 こないだの期末は少し成績が良くなって安心したとか、感謝しているとか、そんな感じの話と、あとはお母さんのお仕事のこと。
 若くしてデザイナーとして起業し、大成功を収めている彼女の話は、色々とためになるし面白い。

 最後に、最近、私までもがゲームにハマっちゃっているという話をすると、珍しいこともあるものだと笑われた。

 まだ内密ではあるけど、彼女の運営する会社とインクリがコラボする計画が持ち上がっているという話を聞いた時には、奏と揃って目を真ん丸にした。
 まぁ、それについてはまた今度触れることにしよう。

 お風呂に入った後は、さっきもはしゃいだベッドに二人並んで仰向けに寝転がる。
 このベッド、どういう意図か知らないけど無駄に大きい。三人が横になってもまだ余裕あるくらい。

「なーユキ」

「ん、なに?」

「今のレベルは?」

「んーと。クエスト報酬で一気に上がって……28だったかな」

「はー、ぶっ飛んどるなぁ。そろそろ五千超えたところか?」

「あ、どうだろ。実はまだ割り振ってないんだよね。
 でも、多分超えたと思うよ」

「ほー……。 じゃあ」

 そろそろか? と奏がこちらを向いた。
 暗がりの中、真っ直ぐな瞳が私に向けられている。

「…………そうだね。明日」

「……そっか」

 どちらとも無く目を閉じる。 
 居心地の良い空間。私はあっという間に眠りに落ちた。







しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!

幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23  女性向けホットランキング1位 2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位  ありがとうございます。 「うわ~ 私を捨てないでー!」 声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・ でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので 「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」 くらいにしか聞こえていないのね? と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~ 誰か拾って~ 私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。 将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。 塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。 私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・  ↑ここ冒頭 けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・ そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。 「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。 だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。 この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。 果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか? さあ! 物語が始まります。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

巻き込まれ召喚された賢者は追放メンツでパーティー組んで旅をする。

彩世幻夜
ファンタジー
2019年ファンタジー小説大賞 190位! 読者の皆様、ありがとうございました! 婚約破棄され家から追放された悪役令嬢が実は優秀な槍斧使いだったり。 実力不足と勇者パーティーを追放された魔物使いだったり。 鑑定で無職判定され村を追放された村人の少年が優秀な剣士だったり。 巻き込まれ召喚され捨てられたヒカルはそんな追放メンツとひょんな事からパーティー組み、チート街道まっしぐら。まずはお約束通りざまあを目指しましょう! ※4/30(火) 本編完結。 ※6/7(金) 外伝完結。 ※9/1(日)番外編 完結 小説大賞参加中

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

処理中です...