『ライフで受けてライフで殴る』これぞ私の必勝法

こまるん

文字の大きさ
37 / 63

咆哮

しおりを挟む



 さてさて。ドゥーバ東門を抜けた私たちは、どんどんと奥へ進む。
 手前のエリアに居るのは、群れているとはいえ弱めのゴブリンたち。 私たちなら一撃で容易に討伐することができる。

「どっちが行く?」

「んー。私がやるー」

 了解。と答えたカナが、二歩下がる。
 ふふ。後ろに控える姿もカッコイイ。

「それじゃー、張り切って行きますよぉ」

 充填をしながら、一歩前に出る。
 7秒ほどチャージをして……発射!

「ひゅー。 さすがの威力」

「凄いでしょ。しっかり攻撃もできるようになってきたんだよ」

「すごいって言うか、その火力で異次元の耐久力もあるって。
 もはやどうやれば勝てんのって感じや」

「ふむ。 でも? 本音は?」

「んー。カウンターの隙も無く燃やし尽くせる自信あるな」

「あはは。だよね。まだまだ足りないかー」

『は??』
『なんなのこの会話』
『世界が違いすぎる』
『ユキ攻略法[最大HPを越えるダメージを一気に与える]』
『それはそうだがw』
『いやでも可能って知れただけでも(』
『魔王様マジ魔王様』

 私も強くなっているつもりではあったけれど、カナはその上を行く。
 親友の隣に並び立つには、どれ位の成長速度が必要なんだろうか。

 そんなことを考えながらも、目に付くゴブリンの群れを片っ端から薙ぎ払っていく。
 レベルは上がらないものの、けっこう奥の方まで来たんじゃないだろうか。
 密度が増えてきたので、交互に敵を屠り始めた。

「……ほんと、聖女って、なんやろな」

『わかる』
『それな』
『最前線で壁になる』
『前でビーム撃つ』
『殴ると天罰が来る』
『魔法は使えない』
『うーんw』

 思わずと言った様子でカナが呟くと、にわかにコメント欄が活気づいた。
 聖女とはなにか。うーん。

「で、でもさ。傷付くこともいとわず、味方に被害が出るのを抑えに行ってるんだよ。聖女っぽくない?」

『傷付くことも厭わず(自傷)』
『被害を抑える(予め敵を潰す)』
『積極的防衛がすぎる』
『自分の命削ってやってる事が最前線でのビームなんだよな』
『うーんこれは凄女』

「まー、まさにコンセプト通りにLifeで殴ってるわな。受ける機会は激減してる気がするけど」

 腕を組んだ姿勢で、うんうんと頷くカナ。

 失敬な。相手が強い時は、ちゃんと受けてもいるもん!

「あ、ところで凄女サマ」

「どことなく聖女の言い方に含みがあったの私は聞き逃さなかったよ?
  絶対ちがう字で書くほうで呼んだでしょ今」

 じとーっとカナを睨む。
 親友は、からからと笑うだけだった。

「はっはっは。 それで、新しいスキルとやらは使ってみたん?」

「まだ! 回数制限あるから二の足踏んでた」

「あー。制限あると、妙に使いづらい気持ちはわかるかもなぁ」

「そうそう。つい温存し続けちゃうの」

 数の限られるアイテムを残し過ぎて結局使わないの、あるあるだと思うんだ。
 逆に、カナはそう言いつつもすっぱり割り切ってガンガン使っちゃうタイプだったかな。

「えーっとそれじゃあ、次の機会で使ってみるね?」

「お、りょーかいや」

 えーっと。どんなスキルだったかな。一度確認しておこうか。


 ◆◆◆◆◆◆◆◆
 技能:王者の咆哮
 効果:自身の咆哮に、どちらかの特殊な効果を付与する。
     ①敵性存在に対し、高確率の威圧、恐慌と低確率の即死を与える。対象との距離が離れるほど効果は減少し、また対象が自身より低レベルであるほど効果は著しく上昇する。格上には効果が無い。
     ②不可視の衝撃波を放つ。威力は自身の最大HPの5%。防御貫通効果を持つが、与ダメージ上昇の効果を受けない

[使用回数5/5]※AM0時にリセット
 ◆◆◆◆◆◆◆◆


 [王者の咆哮] 。要するにアレだよね。ぶもーー!って鳴いてたやつ。
 やけに恐怖感を煽ってくると思ったら、そういうスキルだった訳だ。

 叫んだ瞬間に吹き飛ばされる時とそうでない時があったのも、この効果を見るとなるほどって感じがする。

『[速報]凄女サマ、遂にデバフまで覚える』
『硬い奴にデバフ持たせてはいけないとあれほど……!』
『歩く厄災度合いが進化してて草なんだよな』
『これダメージの方も結構えぐない?』
『貫通400ダメージ』
『後衛吹っ飛ぶんですがそれは』
『凄女サマに持たせたらアカンスキルだった』
『腐るスキルもあれば化けるスキルもあって面白いなぁw』
『わかるw』

 コメントにもあった通り、私はやたらと腐るスキルと化けるスキルの差が激しい。
 極振りの影響なのはわかるんだけどね……!

「あ、そこになかなか強そうなんおるで」

 カナが指を指す先には、ゴブリンの群れ。
 ゴブリンウォーリアを中心として、ゴブリンファイターとゴブリンたちが周囲を固めている。
 こちらに気付いた彼らは、ゆっくりと歩み始めた。

「ほんとだ。えーっと。デバフ? 威圧とか与える方を撃ってみるね」

「おっけー。焼き払うのは任せてや」

 にっと笑ってグッドサイン。
 えへへ。頼もしいね。

「えーっと……どうやって使うんだっけ」

 今更だけど、このゲームにおける技能の発動方法は簡単。
 『発動の意思を持って』『技能名を発しながら』『対応する動きをする』の三拍子。
 ただ、このスキルは特殊で、発動に技能名が要らない。その代わりにしっかりと咆哮しないといけないらしい…………咆哮?

 待った。 咆哮ってどんな感じだ。
 うおわーーー!って叫べば良いのか。

 思い出されるのは、実際に使っていたキングボアの姿。
 貫禄ある姿から放たれる咆哮は、正に野獣の王といっても過言ではなかった。

 流石にぶもーはアレだけど、イメージはそんな感じか。
 野生味を意識。呑み込んでやるくらいの気概を持って……!

「すぅー……。 [がおーー!!!]」

 大きく息を吸って、目を瞑るほどに全力で咆哮。
 思わず握り込んでいた拳を解きながら、瞼を開く。

 バッチリと効果は発動したらしい。
 完全に動きが止まったゴブリンたち。そこに一瞬遅れて、天まで昇るほどの火炎が上がった。

「やったね!大成功……!」

 喜びをあらわに、振り返る。
 どこか笑いをこらえている様子のカナに、あれ? と首を傾げた。

「……ふ、ふふっ。 ユキ、無自覚?」

「え、なにが?」

「い、いや、『がおー』って」

「……ッ!!」

 へ、変なことを意識しすぎたらしい。
 ついに決壊したらしいカナが、大笑いを始める。

 顔が一気に熱くなった。

 その後しばらくコメントでも弄られ続けたのは、もはや言うまでもないだろう…………




しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!

幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23  女性向けホットランキング1位 2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位  ありがとうございます。 「うわ~ 私を捨てないでー!」 声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・ でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので 「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」 くらいにしか聞こえていないのね? と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~ 誰か拾って~ 私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。 将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。 塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。 私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・  ↑ここ冒頭 けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・ そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。 「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。 だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。 この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。 果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか? さあ! 物語が始まります。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

巻き込まれ召喚された賢者は追放メンツでパーティー組んで旅をする。

彩世幻夜
ファンタジー
2019年ファンタジー小説大賞 190位! 読者の皆様、ありがとうございました! 婚約破棄され家から追放された悪役令嬢が実は優秀な槍斧使いだったり。 実力不足と勇者パーティーを追放された魔物使いだったり。 鑑定で無職判定され村を追放された村人の少年が優秀な剣士だったり。 巻き込まれ召喚され捨てられたヒカルはそんな追放メンツとひょんな事からパーティー組み、チート街道まっしぐら。まずはお約束通りざまあを目指しましょう! ※4/30(火) 本編完結。 ※6/7(金) 外伝完結。 ※9/1(日)番外編 完結 小説大賞参加中

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

処理中です...