合法魔法幼女 本気狩☆愛理 ~ラブリンと読んだやつは病気です~

しらたま。

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1章

上司ですがひよこでプロデューサーです

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1-4

「部下が大変失礼いたしました!」

 今までの経緯を話したところ、ひよこに平身低頭されることになった。むしろ土下座と言っていいかもしれないが、何せひよこだ。真剣さとは裏腹に思わず心が和んでしまう。

「では、改めてお名前をうかがってよろしいかしら?」

「はい。わたくし、小鳥遊たかなしと申します」

 羽根を使ってお腹の羽毛を探ると名刺が出てきた。思わず正座して受け取ってしまう。名刺に書かれていたのは国民的アイドルグループが所属する芸能事務所名と小鳥遊ぴよと言う名前、そして……

「プロデューサー?」

「はい。主に裏方ですが、芸能関連の仕事をしています」

「芸能事務所と魔法少女に何かつながりがあるの?」

「はい。実はあるのです」

 ぴよさんは神妙にうなずく。神妙にしていても愛らしい。

「万条さんをスカウトさせていただいたのは魔法少女になっていただきたいからです。その点はシロからも説明があったかと思います」

「説明と言うか、一方的に迫られただけだけどね」

 思い切り視線で突き刺す。シロは先輩から直々のお叱りの言葉もいただいて、冷や汗を流しながら固まっていた。そのまましばらく会話に加わらないでほしい。

「魔法少女には二つの役割があります。一つは魔法の源となるエネルギーを集める事。この魔法のエネルギーと言うのが人間の感情と密接に関係しておりまして、我々が芸能活動をバックアップしている理由でもあるのです」

「へぇ……じゃあ、魔法少女自身が魔法を使うためのエネルギーを集めているっていうの?」

「はい。我々はエゴと呼んでいますが、人間のプラスやマイナスの感情エネルギーの放出が、魔法を生み出す源となっています」

「……ひょっとして、魔法少女自身がアイドル活動やっているの?」

「その通りです」

 まさか、魔法少女とアイドルが一緒になるとは思いもよらなかった。となると、たまにテレビで見る女性タレントにも魔法少女が混じっていると言うことだろうか。

「もう一つの役割と言うのは?」

 ポイントはそこだ。そこがわからなければ釘バットを渡される意味がわからない。

「もう一つの役割は、大きすぎるエゴの力で暴走した人間を鎮めることです。エゴは魔法の源となるだけでなく、人間に様々な影響を与えています。もちろんプラスの影響もあるのですが、まれに極端にマイナスの影響を与える場合があるのです」

 ぴよさんの声に深刻な色がにじむ。

「万条さんにお願いしたかったのは、極端なエゴの影響を受けた人を助ける仕事なのです」

「助けるって……釘バットで?」

「魔法のステッキでです」

 そこはぶれないらしい。

「疑問なんだけど、悪影響があるならエゴを集めること自体をやめられないの? リスクがあるんでしょ?」

「そこにジレンマがございまして」

 ぴよさんがため息をついて目を細めた。見た目的にはうとうとしているようにしか見えない。

「先ほども申しました通り、エゴは人間に良い影響も与えています。わたくし達はコンサートやライブなどで、人の心を解き放ち、観客からエゴを放出して貰います。エゴが放出されると、周辺地域の住民も性格が明るく、前向きになり、消費活動が活発になる事がわかっているのです」

「エゴの放出が地域経済に影響を与えるているの?」

「その通りです。コンサートやイベント、テレビ番組などで社会を明るくすることは人間のエゴの放出に繋がりますが、そのプラスの影響で消費が促され経済効果発生することがわかっているのです」

 まさか、魔法少女の活動と経済効果が結びつくとは思わなかった。唖然としている間にもぴよさんの説明は続く。

「もちろん、わたくし共としてもマイナスの要因が出ることは避けたいと考えており、リスクの検証も行っています。しかしながら、約50年間の統計で、積極的なエゴの放出を促すかどうかで日本全体の消費が年間2%前後変わることがわかっているのです」

「2%って……GDP伸びるか伸びないかに関係していないかしら?」

「その通りです」

 つまり、魔法少女のアイドル活動が日本の景気に深刻な影響を与えると言うデータが存在するのだ。活動が鈍れば景気の後退から大量のリストラが引き起こされ、経済再建が難しくなる可能性も出てくる。しかも統計まで使って、しっかり分析しているとは思わなかった。

「デメリットも存在しますが、誤差の範囲です。いまわれわれが活動をしなければ日本経済が取り返しのつかないダメージを受けてしまう可能性もあるのです」

 魔法少女になって、日本経済を救ってくれなんて話はいまだかつて聞いたことが無い。というより、事態を放置すれば将来的に自分の雇用が危うくなる可能性もあると言うことだ。

「それは……確かに不味いわね」

 あくまで話が本当なら、という前提はつくが意外に深刻な話だった。
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