合法魔法幼女 本気狩☆愛理 ~ラブリンと読んだやつは病気です~

しらたま。

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幕間 2

労働条件を確認した上で変身しましょう

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幕間 1

「シロ……少し痩せた?」

 邂逅からすでに2週間、万条愛理はいまだ魔法少女になっていない。

「……ふふ、誰のせいだと思ってるのにゃ」

 陰のある雰囲気で返されるが、

「貴方たちの雇用契約に穴が多すぎるのが問題でしょ?」

「面目ないにゃ……」

 ここまではここ数日毎度のやり取りになっている。と言うよりも、シロもようやく反論しないと言うことを学習してきたらしい。

 魔法少女になる事に関してはある程度前向きになってはいるが、ボランティアでやるわけにもいかない。何せ、暴走しているとはいえ人を殴る仕事だ。それなりにリスクが付きまとうのは当たり前であり、対価が発生するのは必然だ。

 もし、無報酬で働かせているようなことが発覚したら、魔法少女間で労働組合を組織して徹底的に戦おうかとも考えていたのだが、芸能事務所を運営して売れっ子アイドルも輩出しているだけあってそこまでブラックではないらしい。

 しかし、危険手当など、手当面があまりにも薄すぎた。また、魔法のステッキによる所持者の追跡など、組織として個人情報の管理ができていない所も多い。と言う訳で、縁が切れたらこれまでかという感覚で、問題点を片っ端から指摘し、本部に持ち帰らせて対応を迫っているわけだ。

 人間を道具扱いする組織なら、根こそぎ潰して代用組織の編成まで考える必要があるかと思ったが、今のところ無知なだけでそこまで酷い組織ではないかと言う気がしている。

 実際、改善案を出した部分は確実に改善と検討内容について返答が出ているからだ。因みに、いちいち持ち帰らせているのは、シロに回答を求めても無駄だからだ。

「これが、前回要望があった部分の修正案にゃ……」

「ありがとう。…………へぇ」

 渡された封筒を開けて内容を確認するが、文面を読んでも確実に状況は良くなっている感覚がある。社労士でも雇って相談を始めたのだろうか?

「じゃあ、後でしっかり読んで、問題があったら指摘させて貰うわ」

「…………………お手柔らかに頼むにゃ」

「嫌よ。自分が働く場所で手を抜きたくないもの」

「…………」

 半ば魂が抜けた表情で虚空を見つめ始めるシロをみて、そろそろ危ないかなぁと思い始める。感情を持っている生き物は、ある程度モチベーションを保つための自己肯定感が必要だ。話が進んでいる感覚がなければ、投げ出したくもなるものだ。

「一つ聞いていい? 仮にだけど、魔法少女になった私はどんな姿になるの?」

 例えば、仕事に対する興味を見せるなども重要なポイントである。

「にゃ? うーん、詳細は変身してみないとわからない所もあるにゃ」

「そうなの?」

 てっきり衣装のデザインも含めて詳細まで決まっているのかと思った。と言うよりも、衣装には自分で着替えてくれと言われない点にはホッとする。

「実際に変身してみるかにゃ?」

「……それで、また色々データ登録されたりしないでしょうね?」

「大丈夫にゃ。初回変身から2週間以内であれば全データがリセット可能になってるにゃ」

 まるでクーリングオフのような制度である。このあたりの情報も後で資料として請求しようと固く誓う。

「まぁ、いいわ。私も魔法とやらに興味があるし。どうやって変身するの?」

「魔法のステッキを持って、変身するって念じればOKにゃ」

 これは大変以外である。

「……呪文唱えたりはしなくていいの?」

「緊急時に長ったらしく呪文唱えてたら危ないにゃ」

 確かにその通りだ。とりあえず納得して、シロが取りだした釘バットをうけとる。

(えーと、とりあえず……変身!)

 あっているかはともかく、試してみることにする。心の中で叫んだ瞬間視界が光で包まれ……まぶしさに目を閉じる。

 再び目を開けた時に感じたのは違和感だった。

「あれ?」

 明らかに目線が下がっている。それと、メガネが無い。

「おー似合うにゃ似合うにゃ」

 言われても自分の姿がわからない。自分の身体を見下ろすと、白を基調にした衣装に包まれた自分の身体は、色々な部分が非常につつましい物になっていた。

 慌てて部屋にあった鏡で自分の姿を確認する。白を基調にあちこちにフリルとレースがついたワンピースに、星型の飾り。ブーツに手袋、そして変わらぬままの釘バット。

 魔法少女になったはずの自分は、同控えめに見ても小学校高学年から中学生程度、下手するともう少し年齢が下の幼女になっていた。

「な…………」

 絶句する愛理にシロが告げる。

「あ、昔、暴力団の事務所に魔法少女が殴り込んだ際に、身長低く設定しないと危ないって話が出て、それからなるべく外見を幼くしようって言う話が……」

「魔法少女を暴力団と戦わせるな!」

 久々に釘バットでフルスイングをした。そして、シロが目覚める頃には愛理が変身した際の記憶も消えていた。
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