合法魔法幼女 本気狩☆愛理 ～ラブリンと読んだやつは病気です～

幕間

ヒロインは生真面目です

　万条愛理まんじょうあいりは都立大学に通う１年生だ。長身に整った顔立ち、無造作にまとめた長い髪。恵まれたスタイルを意識するでもなく、常にブラウスにパンツルックと言う動きやすい服装を好んでいる。スカートはいまいち苦手なのであまり履く気にならない。

　常にメガネ姿なのは視力が悪いからだ。極端に視力が悪い訳ではないが、世の中がクリアに見えないのはストレスがたまる。

　苦手なのは人に媚びること。かと言って冷徹な訳ではなく、人の面倒はしっかり見る方だし、責任もしっかり果たす。効率よく生きることを旨としているが、人間が感情で動く生き物であり、非合理な社会を形成していることも理解していた。

　端的に言えば、知能の発達が早すぎて、その精神はかなり成熟していた。同年代の男女と比べても、上の年代と比べても落ち着きがあり過ぎるのだ。

（久々に、むきになってしまったわ……）

　先ほどの謎の生き物との邂逅を思い出し、自分の未熟さを恥じる。今度会ったときは謝罪の一つもしなければならないかもしれない。自分はそんなに短気だったかと過去の記憶を引き出してみるが、あれほど腹が立った記憶と言うのは小学生以来である。

　愛理は理不尽な事が嫌いだ。父が警察官で、母が弁護士と言う家庭柄か、法律関係の話もさんざん聞かされて育ってきた。ただ、同時に、理不尽だと不満を述べるだけでは物事が解決しないのは学習済みだ。

　その背景と、課題を分析し適切に対処する必要がある。しかし……

（魔法少女なんて何の冗談かしら？）

　愛理は身長が高いのがコンプレックスだ。中学時代にヒールを履けば170センチは余裕で超える状態だったため、可愛らしさを売りにするのは早々に諦めた。幸い成長期は早めに終わったものの、身長が大きすぎるし、年齢も高すぎる気がする。

　まぁ、あれだけ派手に飛ばしたのだから二度と魔法少女の勧誘に出会うことも無いだろうが。そもそも、魔法少女として活動することにどんな意味があるかもわからない。

　社会的な背景が読めない事を考えれば、思考を巡らせるだけ無駄だろう。

　気持ちを切り替えて、帰ってから何の本を読もう考えながら、いつもの帰り道を歩き出した。