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約束と運命の鎖
01
しおりを挟むイチゴジャム……
いれたてのコーヒーにこんがり焼けた食パン。
ハムエッグにヨーグルト……
われながら、今日も完璧だ。
一日が始まる!
「ああ、そういえば民人君」
「ん? なに、大助」
一口目を食べようとしたとき、向かいに座る親友に止められた。
「千菜さんが民人君に用があるって」
「え、千菜様が僕に?」
「今日の昼に来いってさ」
いつもの朝食、のはずが。
そいつに、突然そんなことを言われた。
「僕……なんか、したかな」
千菜様といえば、先々月に即位したこの星の王だ。
その前からこいつ――大助からの繋がりで何度か会ったことがある。
顔の整った、僕とそんなに年齢も変わらない25、6歳ほどの青年。
適当な人で少々いい加減なところもあるが、ちゃんとリーダーとしての威圧感というか、そんなものが滲み出ている人だ。
少なくとも、僕単体に話が来るはずがなかった。
「話があるのはあんただけだけど、一応俺も付いて来いって。大丈夫。すっかりあの人のお気に入りだから、民人君は」
きっと悪い話じゃないさ、心配するな。
そう笑って僕をなだめた。
「まあ……なるようになる、よね」
妙に嫌な予感がするのは変わらないけれど、こいつがいるなら安心かな、なんて思ってしまった。
僕が大助と出会ったのは四年前。
わけあって、彼の家……今は保護者という肩書きで中央の下宿先に居候させてもらっている。
彼は河闇家――いわゆる有名貴族の長男。
彼は長男でありながら家を継ぐことにあまり乗り気では無く、来年には弟の圭介君が成人とともに当主になるそうだ。
「そんなもんだって。な、前向きに考えなきゃ」
「……うん、そうだね」
それから急いで支度をして、向かう先は――
中央の、さらにど真ん中にそびえ立つ煌びやかな建物。
――いわゆる、城。
「大助……ほんとに変じゃないかな、これ」
"いざというとき"の為に用意しておいたスーツ。
慣れないものを着ているせいか、背中に嫌な汗をかく。
「大丈夫だって、似合ってる似合ってる」
そういう大助は、普段から来ている制服。
「いいよね、大助は制服でこればいいもん」
「大学になっても制服があるのって、こういうところで便利だよなあ」
けらけらと笑いながら、城の門へと歩いていった。
間近で見るそれは、装飾も本当に細かくて、前に立っているだけで自分が場違いなのではないかと不安になってしまう。
「うわあ……何度見てもすごいね」
「後で見ればいいから。さっさと行くよ民人君」
「あ……ちょっと!」
警備員など気にもせず正門から堂々と入っていく大助。
門ではどんなことをいわれるかと思いきや、
警備員は僕らに会釈をしていそいそと引き下がる。
「……これが顔パスか」
どうやら、本当にとんでもない親友をもってしまったみたいだ。
「ん? 民人君、何か言った?」
「あ、いや……なんでも」
「朝倉、大助、よく来てくれたな」
途中からは使用人と合流し、案内してもらった。
城の奥の、奥の、そのまた奥に、王の私室があった。
目の前に座る青年……池沢千菜陛下は、満足そうに笑いながらその低い声で仰る。
「あ……えっと」
僕がどうしたらいいかわからなくてあたふたしていると、
「千菜様、再びお会いできて光栄です」
大助がそう返した。
こちらをみて呆れたような顔をする。
「まあ、そんなにかしこまらなくてもいいさ。今日は二人に……友としてちょっとした頼み事があるんだ。そのために私室に呼んだ」
よかった……嫌な予感は外れたようだ。
でも、頼み事って……
「よろこんでお引き受けします。……ところで、何をですか?」
僕が訊ねると、彼は一度目を閉じてから、僕に向かって言った。
「俺の妹を連れてきて欲しい、この地、中央に」
「……え?」
思わず、すっとんきょうな声をあげてしまった。
なにか、とても重要な何かを聞いてしまった気がする。
千菜様といえば、ご兄弟はいないはずだ……。
「俺が13歳の時、自分が次の王だと告げられ、一人、中央に連れてこられた。それからも何度か手紙で連絡を取っていた。母親……父親も、俺が連れてこられてからすぐに事故で死んだ。以来、彼女……杏奈は、南西部にある施設にいるそうだ」
「南西部……」
そうだったのか、彼も随分、辛い人生を送ってきたんだ。
「大助には、連絡係を頼みたい。いいよな?」
「了解っ」
まかせとけ、と言わんばかりに威勢の良い返事をする。
「でも千菜様、どうして僕に?」
「……お前になら、安心して杏奈を任せられる」
どういうことか、よく分からなかった。
僕なんかに頼らなくても、優秀な部下はたくさんいるはずなのに。
僕よりも仲のいい大助に頼めばいいのに。
でも、彼は真っ直ぐに僕を見つめていたんだ。
「……了解しました、千菜様」
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