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第1章 新しい世界と出会い
第36話 訓練所、再び
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アルさんに[下級ポーション(良)]を飲んでもらった次の日、僕はシルフと一緒に訓練所に向かっていた。
戦い方の相談と、ボスについての情報収集が出来ればいいなって。
「こんにちはー」
「ん? おお、お前さんはあの時の子か。元気してたか?」
「はい、おかげさまで。訓練の時はお世話になりました」
以前と同じように訓練所の門のところに立っていたおじさんが、声をかけた僕に気付いてくれる。
その間にも訓練所に入っていく人はいたけれど、誰も話しかけたりはしないみたいだった。
「それでどうだ。少しは使えるようになったか?」
「それが……採取自体はできるようになったんですけど、戦闘に関しては全然で」
僕は死んだことは伝えず、鹿との戦い……そのあらましを伝えていく。
聞きながらおじさんは、どこか納得したような顔を見せ、指で額を覆った。
「あー確かに、あの戦い方は大きい魔物に対しては向いてないからなぁ……」
「玉兎程度だったらなんとかなるんですが、鹿だとそもそものリーチが」
「そうだな……。分かっているかもしれないが、渡された道具だけが採取道具ってわけじゃないからな? 例えば、最初に教えた鎌は草を刈り取る道具だが、木を伐採するときは別の道具を使うだろう?」
「……他にも色々使えるってことですね?」
「そういうことだ。<戦闘採取術>は採取道具にしか効果は発揮されないが、逆に言えば採取道具であれば何でも使えるという利点でもある。だからこそ、いろんなところに視野を広げてみればいい。詰まった時は立ち止まるのも手だぞ」
そう言って、おじさんはニカッと笑みを見せる。
たぶんおじさんは、わざと正解を言わないようにしてるんだろう……それはきっと、おばちゃんだってそうだ。
すでに知っている2人からなら、言ってしまえば簡単なことなんだろうと思う。
けれど、自力でそこに辿りつけるように背中を押してくれている――期待して応援してくれているんだ。
今も、[下級ポーション(良)]の時も。
「わかりました! ありがとうございます」
「ああ、頑張ってくれ」
そう言っておじさんは僕の頭をぽんぽんと軽く叩く。
その手が完全に離れていったタイミングを見計らって、僕はもうひとつの用件を切り出した。
「あとおじさんに聞きたいことがもうひとつあるんですけど」
「ん?」
「草原に見たことのない魔物がいるってお話、知りませんか?」
一番最初に訊きに来たのが訓練所なのは、戦いに関しての事もあったけれど、おじさんが兵士さんだってことも関係している。
魔物に関してのことなら、街の住民よりも詳しい可能性が高いと思ったからだ。
「ああ、聞いた気がするな。ただ、俺はそこまで詳しく知らないんだ」
「そうなんですね。誰か詳しそうな方はご存じないですか?」
「そうだな……ジェルビンの爺さんなら知ってると思う。この街のまとめ役をやってた爺さんだからな」
「ふむ」
ジェルビンさん、か。
(アキ様。仮にジェルビン様が知らなくても、まとめ役をやられていた方なら、さらに他の方の紹介を受けることも出来るかもしれません)
(それもそうだね。ならひとまず会いに行ってみようか)
「おじさん。そのジェルビンさんに会おうと思ったらどうすればいいですか?」
「ああ、街の東側の農耕用区画、そこに住んでるぞ。今は役職も息子に譲ってのんきに隠居生活をしてるはずだし、会ってくれるだろう。目印は……緑色の屋根にクワが刺さってるからそれだな」
「クワ……? クワって、あの鍬?」
僕は思わず畑を耕すような仕草をおじさんに見せる。
すると少し笑いながらおじさんはこう言った。
「そうそう、その鍬だ」
「……いや、おかしいですよね!? なんで鍬が屋根に刺さってるんですか!?」
「そう言われてもな……おかげで目印になってるからなぁ」
気にはなるが、もう慣れた、と言わんばかりに頭を掻くおじさんに、僕は全身の力が抜ける。
なんだか納得はいかないけれど、わかりやすい目印になってるならいいか……。
他にも人となりなんかを軽く教えてもらい、僕は兵士のおじさんと別れて街の東側へと足を向ける。
だんだんと人が少なくなってくると、シルフが何か思いついたように僕の名前を呼んだ。
(アキ様)
(ん?)
(農耕用の区画に住まれている方でしたら、作物を育てていらっしゃるかもしれませんよ)
(ふむ。だったら何か素材についても教えてもらえるかもね? ボスの情報目的だったけど、そっちの情報ももらえるなら一石二鳥だ)
(毒などのお薬は、まったく情報がないですからね)
(本にはそこまで詳しく載ってないからね……)
インベントリから取り出した本をパラパラと捲る。
分かってるのはポルマッシュに毒があるってことくらいかなぁ……。
(ま、いざとなったら水や蜜に溶かしてみたり、粉末にしてみたり……かな?)
(ポーションと同じやり方を試してみて、ですね)
(でもそのためには数が必要だからね。自生してるところを見つけないと)
そんなことを話しながら歩いていけば、景色から建物がほとんどなくなり、閑散とした場所に到着した。
さて、目印の緑色の屋根は――
「……ホントに刺さってる」
見まわした僕の視界に飛び込んできたのは、緑色の屋根に……しっかりと突き刺さった鍬だった。
戦い方の相談と、ボスについての情報収集が出来ればいいなって。
「こんにちはー」
「ん? おお、お前さんはあの時の子か。元気してたか?」
「はい、おかげさまで。訓練の時はお世話になりました」
以前と同じように訓練所の門のところに立っていたおじさんが、声をかけた僕に気付いてくれる。
その間にも訓練所に入っていく人はいたけれど、誰も話しかけたりはしないみたいだった。
「それでどうだ。少しは使えるようになったか?」
「それが……採取自体はできるようになったんですけど、戦闘に関しては全然で」
僕は死んだことは伝えず、鹿との戦い……そのあらましを伝えていく。
聞きながらおじさんは、どこか納得したような顔を見せ、指で額を覆った。
「あー確かに、あの戦い方は大きい魔物に対しては向いてないからなぁ……」
「玉兎程度だったらなんとかなるんですが、鹿だとそもそものリーチが」
「そうだな……。分かっているかもしれないが、渡された道具だけが採取道具ってわけじゃないからな? 例えば、最初に教えた鎌は草を刈り取る道具だが、木を伐採するときは別の道具を使うだろう?」
「……他にも色々使えるってことですね?」
「そういうことだ。<戦闘採取術>は採取道具にしか効果は発揮されないが、逆に言えば採取道具であれば何でも使えるという利点でもある。だからこそ、いろんなところに視野を広げてみればいい。詰まった時は立ち止まるのも手だぞ」
そう言って、おじさんはニカッと笑みを見せる。
たぶんおじさんは、わざと正解を言わないようにしてるんだろう……それはきっと、おばちゃんだってそうだ。
すでに知っている2人からなら、言ってしまえば簡単なことなんだろうと思う。
けれど、自力でそこに辿りつけるように背中を押してくれている――期待して応援してくれているんだ。
今も、[下級ポーション(良)]の時も。
「わかりました! ありがとうございます」
「ああ、頑張ってくれ」
そう言っておじさんは僕の頭をぽんぽんと軽く叩く。
その手が完全に離れていったタイミングを見計らって、僕はもうひとつの用件を切り出した。
「あとおじさんに聞きたいことがもうひとつあるんですけど」
「ん?」
「草原に見たことのない魔物がいるってお話、知りませんか?」
一番最初に訊きに来たのが訓練所なのは、戦いに関しての事もあったけれど、おじさんが兵士さんだってことも関係している。
魔物に関してのことなら、街の住民よりも詳しい可能性が高いと思ったからだ。
「ああ、聞いた気がするな。ただ、俺はそこまで詳しく知らないんだ」
「そうなんですね。誰か詳しそうな方はご存じないですか?」
「そうだな……ジェルビンの爺さんなら知ってると思う。この街のまとめ役をやってた爺さんだからな」
「ふむ」
ジェルビンさん、か。
(アキ様。仮にジェルビン様が知らなくても、まとめ役をやられていた方なら、さらに他の方の紹介を受けることも出来るかもしれません)
(それもそうだね。ならひとまず会いに行ってみようか)
「おじさん。そのジェルビンさんに会おうと思ったらどうすればいいですか?」
「ああ、街の東側の農耕用区画、そこに住んでるぞ。今は役職も息子に譲ってのんきに隠居生活をしてるはずだし、会ってくれるだろう。目印は……緑色の屋根にクワが刺さってるからそれだな」
「クワ……? クワって、あの鍬?」
僕は思わず畑を耕すような仕草をおじさんに見せる。
すると少し笑いながらおじさんはこう言った。
「そうそう、その鍬だ」
「……いや、おかしいですよね!? なんで鍬が屋根に刺さってるんですか!?」
「そう言われてもな……おかげで目印になってるからなぁ」
気にはなるが、もう慣れた、と言わんばかりに頭を掻くおじさんに、僕は全身の力が抜ける。
なんだか納得はいかないけれど、わかりやすい目印になってるならいいか……。
他にも人となりなんかを軽く教えてもらい、僕は兵士のおじさんと別れて街の東側へと足を向ける。
だんだんと人が少なくなってくると、シルフが何か思いついたように僕の名前を呼んだ。
(アキ様)
(ん?)
(農耕用の区画に住まれている方でしたら、作物を育てていらっしゃるかもしれませんよ)
(ふむ。だったら何か素材についても教えてもらえるかもね? ボスの情報目的だったけど、そっちの情報ももらえるなら一石二鳥だ)
(毒などのお薬は、まったく情報がないですからね)
(本にはそこまで詳しく載ってないからね……)
インベントリから取り出した本をパラパラと捲る。
分かってるのはポルマッシュに毒があるってことくらいかなぁ……。
(ま、いざとなったら水や蜜に溶かしてみたり、粉末にしてみたり……かな?)
(ポーションと同じやり方を試してみて、ですね)
(でもそのためには数が必要だからね。自生してるところを見つけないと)
そんなことを話しながら歩いていけば、景色から建物がほとんどなくなり、閑散とした場所に到着した。
さて、目印の緑色の屋根は――
「……ホントに刺さってる」
見まわした僕の視界に飛び込んできたのは、緑色の屋根に……しっかりと突き刺さった鍬だった。
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