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66話:「次はどんな奴らが居るんだろうか」
しおりを挟む先程ラインハルトに言った通り、自分達の客室の戻る前に他の車両の様子を見て回る事にした。
特に問題はないだろうけど、一応護衛としてなってる訳だしな。
仕事はしておかなきゃならない。
客室の内窓から見ると、行儀良く座っている二人の少女の姿があった。
二人とも長い金髪で、ヘッドドレスを頭に付けているのが印象的だ。
「よう。何か問題は起きてないか?」
扉を開けながら声を掛けると、二人は同時にゆっくりとこちらを見た。
その顔を見て少し驚く。二人とも同じ顔で、同じ微笑みだ。
人形めいた美少女達は同じ仕草で首に指を当て、声を揃えて聞き返してくる。
「「大丈夫です。貴方様はどなたでしょうか?」」
「護衛の冒険者だよ。俺がライ、こっちがサウレとクレアだ」
「「まあ。よろしくお願いします」」
可愛らしく首を傾げて微笑むと、彼女達は同時に立ち上がってくすりと笑う。
「私はアリス」「私はイリス」
「家名は無くて」「親もいない」
「オウカ様に助けられた」「ただの双子でございます」
歌うように。演劇のように。
二人してスカートの端をつまみ上げると、上品な礼を返してくれた。
おう。息がぴったりだな。
ただまあ、うん。上手な方ではあるが、まだまだ。
「で、後ろのお前はなんて言うんだ?」
呆れて苦笑しながら、俺たちの背後で気配を消している三人目に声を掛けた。
言われて初めて気付いたのか、サウレが素早い動きで少女と俺の間に入る。
「あら。気が付かれていたのですね。気配は殺したはずですけれど」
「この二人の連携に違和感があったからな」
「それはどういう事でしょう?」
改めて振り返ると、やはり同じ顔。
金髪にヘッドドレスを乗せた少女が、無邪気な様子で微笑んでいた。
「二人の言葉の間の取り方が歪だったからな。あれは普段から三人で話している間の取り方だ」
冒険者のパーティでも、結成から何年も経つと仲間の動きに自然と合わせるようにたち振る舞うようになる。
この子達は生まれてからずっと一緒だったのだろう。その動きは三人で居ることが前提になっているように見えた。
「まあ凄い。ライ様は気の回る御方ですのね」
「気配には敏感でね。根が臆病だからな」
「あらあら。面白い御方」
くすくすと笑い声が輪唱する。
うーん。少しばかりホラーだな、これ。
「では改めて。私はエリスと申します。三つ子の三女でございます」
「よろしく。この挨拶、オウカにもやったんだろ?」
「はい」「それはもう」「素敵な悲鳴を上げてくれました」
「その光景が目に浮かぶな」
あいつ、お化けとか苦手だもんな。
三人とも人形めいた美少女だから余計に怖いし。
「ところでライ様」「一つだけお聞きしても」「よろしいですか?」
「おう、何だ?」
彼女達は揃いも揃って、子どもらしさの無い大人びた笑顔で。
ゆっくりと、首を傾げた。
「なぜ貴方様が」「偽名まで使って」「冒険者などを」
「「「やっておられるのですか?」」」
冷たく、温度の無いその言葉に。
「うるせぇ。ほっとけ」
腰に手を当てて、ドヤ顔の三つ子に笑い返してやった。
「……あの」「……もうちょっと」「……リアクションとか」
「ねぇよ」
「なんて言うか」「何故それを」「みたいな」
「いや、だってお前らの事知ってるし」
冒険者を始める前に、ギルドで聞いたことがあるのだ。
一度たりとも依頼を失敗した事の無い三つ子が居るとか何とか。
サウレに気付かれない程に熟練された気配の消し方。
一糸乱れぬ挙動と、異様に大人びた立ち振る舞い。
ここまで揃ってれば誰でも予想は着く。
「つまりお前らは元同業者だろ?」
「「「……ご明察です。恐れ入ります」」」
三人揃って芝居じみた動きで頭を下げる。
つまりはまあ、そういう事だ。
俺がこいつらの噂を聞いていたように、この三つ子も俺の話を聞いた事があるのだろう。
『死神』
俺の二つ名であり、捨て去った過去を。
「てか今はオウカ食堂で真面目にやってんだろ?」
「もちろんです」「オウカ様は」「私達の生きる意味です」
「重いわお前ら」
あ、いや。人の事言えなかったわ。
こっちには狂信者が居るし。
「あーでも、この話はオウカにするなよ」
「もちろんです」「あの方にはいつも」「笑顔であってほしい」
「「「その為に私達がいるのですから」」」
ニコリと笑う様は、しかし感情が欠落していて。
嫌になるほど見慣れてしまった、汚れ仕事を専門とした人間の表情だった。
あーあ。嫌になるな、本当。
こんな子どもが居なくなるように、オウカは頑張っていると言うのに。
それでもやはり、過去は変えられない訳だ。
……本当に、嫌な世界だ。
何とも言えずに腕を組んでいると、横からクイッと服を引っ張られた。
「あの、割り込んでごめん。ライ、ちょっと説明してほしいんだけど」
「あ、そうか。お前は知らないのか」
そう言えば話して無かったわ。
「んーとな。俺の二つ名の話なんだが」
「ライって二つ名持ちなの!?」
「一応な。『死神』って名付けられた」
「……ええぇっ!? あの伝説の暗殺者!? ライが!?」
「いや、マジで大層なことしてないからな?」
誰かが面白がって話を盛りまくった結果だし。
噂が勝手に歩き回ってるだけだもんな。迷惑な事に。
「うっわあ……でもちょっと納得したかも!」
「いや何にだよ」
「ライはどう考えても普通じゃないからね!」
「どこがだよ。至って凡人だぞ、俺は」
まだ勘違いしてんのかこいつ。
そろそろ分かっても良いと思うんだけどなー。
「ライと居ると、普通の町娘とか凡人とかって言葉の意味が分からなくなるね!」
「オウカに関しては同意する」
自称詐欺も良いところだしな、あいつ。
女王陛下が何言ってんだって話だし。
「とりあえず、何かあったら俺の名前を出していいから。無茶はするなよ?」
「心得ています」「ご心配」「ありがとうございます」
「おう。じゃあまた後でな」
三つ子に対して軽く手を振ると、ずっと警戒してくれていたサウレの頭に手を置いた。
「ありがとな。もう大丈夫だ」
「……ん。分かった」
すっと俺の服を握りしめ、ぐいぐいと頭を擦り付けて来る。
本当に猫みたいだな、こいつ。
要望通り撫でてやりながら、俺たちは次の客室に向かった。
さてさて。いきなり個性的な奴らと遭遇してしまった訳だが。
次はどんな奴らが居るんだろうか。
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