白夢の忘れられた神様。

sasara

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10日目 昔むかしの真実とたった一つの気持ち

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昔々、まだ神様が人と仲が良かった時、神様は、人達を愛し、守ってた時代。
神様は、人と話すことができないことが苦しくて寂しくて仕方なかったの。
だから、人の中に神様と会話ができる力を与えたの。でもその力は、神様にとって、
痛みを伴う行為だったから、たくさんの人には、与えられなくて神様は、その時
肌が白いってだけで、村になじめない女の子に力を与えたの。その子は、毎日姿の見えない
神様に会いに来ては、自分を傷つける人たちを恨むことなく仲良くなりたいと願ってたの。
だから、神様は、その子に力を与えた。そうすれば、その女の子を救ってあげれると思ったから。
そして、その女の子を幸せにしたいと思ったから。

力を得た女の子は、村の人達から神の使徒として大切にされるようになった。
神様は、その子を通して、村人と会話して、幸せだった。
でもある時、その女の子が、もう女の子じゃなくなってることに気が付いた。
背が伸びて、肌と対照的に綺麗な黒い長い髪の女性であることに気づいてしまったの。
神様にとっては、ついこの間の出来事でも人間には、長い時間で、その子が、いずれ
死んでしまうことに神様は怖くなったの。その頃その子は、村人の男性と愛し合ってた。
力を与えられる前から、その男性は、その子のたった一人の味方だったから恋人同士になるのは、
必然だった。でもそれを知る前に神様は、失う恐怖に耐えられなくなって、女の子を永遠の魂にして
しまったの。そうすれば永遠に離れず、失わずに済むと思ったから。女の子は、本当に神様を大切に
思っていたし、恋人のことも報告しようとしていたの。神様に出会えたから、幸せを知れたと
そう伝える前にそんなことが起きてしまったから、女の子は、魂のまま怒り続けた。
その怒りと悲しみを知った神様は、女の子に、自分の気持ちを伝えることなく、ただ
見守り続けたけど、何百年たっても泣き止まない彼女を見て、神様は、嫌われることしたの。
そうすれば、彼女は、自分を忘れないでいてくれる。涙が枯れてしまわないよう。
長い時間とともに神様は、力が弱くなっていた。

そして、彼女に生まれ変わるための試練を与えた。難しい試練。
その試練の監視役として彼女が愛していた男性を黒い影として送った。
試練を乗り越えれば彼女と彼を出会えるようにするために神様は、最後に力を使ったから
今は、誰かを救うことも誰かと会話することも触れ合うことも出来ないままずっと
彼女を見守ってるんだって。

おしまい。

これはね、私のおばあちゃんがよく私に話してくれた昔ばなしなの。
小さい頃は、神様が怖いと思ったの。でもね、今は、神様の気持ちが少しだけわかるの。
神様は、ずっと一人で、そんな時にひとりぼっちの女の子に出会って、その子を好きになって
女の子に力を与えたけど。神様は、その女の子に力を与えた代償として、痛みを受け続けた。
それでも、幸せだったんだと思う。痛みが和らいでしまうくらいに、愛してたんだと思う。
そんな愛する人が自分とは、時間の流れが違うなんて、きっと苦しいよ、
してしまったことは、確かによくないことだけど、そんなに誰かに愛されるのは、愛することができるのは、
すごく素敵だなって、私は、思う。

ねぇ、ハク
大丈夫。私は、大丈夫だから、ハクがしたいようにしていいんだよ。
ハクは、ハクだよ。私は、ハクに出会えたから生きてるの。
だから、あとは、ハクに任せるね。種、どうするか。ハクの命なんだから。

そう言ってキイナは、眠ってしまった。
黒い影、神の使徒の女の子。それは、まぎれもなく実話だと確認しなくても
分かった。神は、今どれだけのどこからの後悔を背負って見守っているのだろう。

それでも、私は。

キイナ、どうして、種のこと知ってるの?
キイナ、ごめんね。私は、やっぱりキイナと離れたくない。
だから、決めたよ。キイナ、私は、キイナのことが大好きだよ。
これから先、どんな人とキイナが出会って、どんなことがあっても私は、
ずっとキイナを見てるからね。

キイナのおでこに自分のおでこをくっつける。

キイナの目から涙が流れる、そこにハクの涙が合わさって頬を伝いシーツに吸い込まれていった。

目の前には、光の魂は無く、黒い影だけだ。

今も彼女を愛してるの?

彼女は、今でもとても綺麗で、美しく愛おしい存在だ。

いつもとは、全然違う口調で、影は答えた。
どうして、彼女に自分だと告げないの?

彼女は、神への怒りだけで今を保っている。きっと私のことを神の真実を知ってしまえば、
彼女は、自らの魂を壊してしまうだろう。そうなれば本当に永遠に無になってしまう。
神の、呪いは、もう解けている。
ハク、。すまない。今までずっと嘘をついていた。
君を作ったのは、彼女の怒りだ。彼女の怒り以外の感情を彼女自身が作り出した。
それが、君だ。君が消えた時、彼女は、生まれ変わることができる。
だから、私は、君に使命を与え種を作った。種を植えれば君は、神と同じ見守るだけの存在に
変わってしまうだろう。それでも私は、彼女を開放してやりたい。

影の目は、赤かった。
神の神にしかわからない愛。影の何百年と続く愛。

私は、あれを母親だと思ったこともないし、神もお前のこともどうでもいい。
キイナが助かるなら、キイナのそばにいることができるなら何でもいい。


そう言って、ハクは、走り出した。小さい光の方へ
小さな光がだんだんと大きくなる。魂のもとへとたどり着いた。

なぁ、もう終わりにしよう。一つだけ教えてほしい。

ずっと何百年と聞けなかったことがあった。聞いてしまったら、本当に
自分の存在が何者でもないと思い知らされてしまうから。

なぁ、私の名前を知っているか?

すると魂は、強く光りだしその問いに答えた。

オマエの名前は、・・・。

それを聞いたハクは、魂に噛みついた。魂は、自身で、壊してしまえば永遠になるのなら、
魂の一部である、ハクなら、壊せるとハクは、気付いたからだ。

私は、キイナを愛してる。この気持ちは、オマエノじゃない。私のものだ。
私はキイナを見守りたいからこれを選んだんだ。だから、私のコトヲワスレロ、、

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