神様が消えた世界

メリー

文字の大きさ
上 下
13 / 33
月の章〜過去編〜

第8話 目覚めた力

しおりを挟む

残酷描写あり。作者は主人公をいじめ抜くのが好きなようです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私達は5人の敵を倒した後、無我夢中で走り他の敵を倒していった、その頃にはもう敵を斬る感触に慣れ躊躇いもほとんどなくなった。

いつの間にか前線に飛び出していた私達は団長と副団長の近くまで来ていた。

「なっ!君達どうしてここに!!」

副団長が私達に気づき、敵を斬りながらも驚きの声をあげた。

「お手伝いに来ました。私も華も団長と副団長の助けになるため、生きて帰るためにここまできました。」

「団長、副団長ここまできたからには私も月も覚悟は出来ています。」

私達は夢中で戦っていたから気づかなかったが、鬼神の如く戦う様は知らず知らずのうちに味方全体の士気を高め、混乱は治まりつつあった。さらに魔道具は1回限りしか使用出来ないということが分かり、下がっていた前線を徐々にまたあげていった。

「お前達の覚悟は充分分かった。後衛に戻らずこのまま前衛で敵を殲滅しろ。絶対に死ぬなよ。」

「僕達はこのまま前線を押し上げるよ。君達2人は残党の処理をお願いね!」

「「了解しました。」」

団長と副団長は私達にそう告げると物凄い勢いで走り出した。
敵を鮮やかに斬り捨てる姿に見惚れそうになるが、首を振ってその気持ちを捨てて私達も団長達が斬り損なった残党達を処理しながら戦場を駆け巡った。

そうして敵側の指揮をとっていたと思われる人物を団長と副団長が捉えてこの戦いは私達、騎士団が勝利を掴んだと思われた。

「敵側のリーダーを捉えた。この戦いは我々の勝利だ!」

「みんなよく頑張ったね~!これで安心して帰れるよ!」

団長と副団長がそう騎士達に伝える中唐突に大きな笑い声が聞こえた。

「ヒヒッヒヒヒヒッヒャーハッハッハッハ」

男が出せるとは思えないほどの甲高い笑い声に不快な気持ちになりつつその声を発する敵側のリーダーに目を向けた。

「何がおかしい。」

団長も相当不快に思ったのか眉間に皺を寄せて敵を睨みつけている。

「残念だったなぁ~団長さんよぉ~!!この戦いはまだ終わっちゃいねぇ!!」

「どういうことだ?」

「こういうことだよ!!」

その瞬間目の前が真っ白になった。

「危ない月!!」

「…えっ?」

次に見た光景はもはや地獄絵図だった。

地形は爆発の影響で変わり果て周りの騎士達は見る影もないほどの状態だ。

どうやら団長と副団長はギリギリ避けていたらしく命には別状はなさそうだが、それでも意識を保つので精一杯な様子だ。

「うぅ、月…大丈夫?」

「は、華!!」

私がいた場所は爆発の被害が少なかった。しかし爆発の影響で飛んできた破片が私達の方に無数に飛んで来たらしく華は私を庇ったせいでその殆どを華が受けていた。

「華!!どっどうして?!なんで私を庇ったりなんかしたの!!」

「ごめんね月…月に当たると思ったら体が勝手に動いちゃった…。」

華の背中に突き刺さった破片から溢れ出てくる血液…私はその血がこれ以上出ないように必死になって抑えた。

「ヒャーハッハッハッハ!!!ざまぁみろこれが俺の力だ!!」

自分の仲間も爆発に巻き込んで狂い笑う男の声も聞こえず私は華をかき抱いた。

「…ル…ナ…ごめんね…私帰れそうにないや…」

「ちょっと待って華!!駄目一緒に帰るって約束したじゃない!!」

「うん。そ…だよ…ね…先生に…おこられちゃう…かなぁ…」

そう言って苦しそうに笑う華。

「そうだよ!だからまだ目を閉じちゃ駄目!」

治療薬もない戦場のど真ん中でどうすることも出来ずただ自分の手で止血しようとする私に華は弱々しい目で私を見つめる。

「月…ル~ナ…そんな顔しないでよ…私、月と出会えて本当によかった…だから泣かないで…笑ってよ…最後に月の笑顔を見せて……」

「笑ったら華死なない?」

私はそんな馬鹿な事を聞いてしまった。

「うん。だから月の笑顔見せて…?」

私は無理やり口角をあげて涙が止まらない中笑顔を華に見せた。

「あはは…凄い不格好な笑顔…。でもありがとう月…さいごに…一つだけ…おねがい…。私のかわりに…わたしの…分まで…いき…て。」

強い光を宿した目でそう告げた華はとても自然な笑顔でゆっくりと目を閉じた。

「うそ…は…な…?目開けて…目を開けてよ!!」

大声で叫び声をあげた私に森を爆発させた男が近づいてきた。

「ヒヒッ可哀想になぁ~君を庇ったりしたせいで君の大事なお友達が死んじゃって。ヒヒッ直ぐに君も後を追わせて上げるよ。」

「…?私のせい…で…?華は私のせいで死んだの…?」

心が壊れていくようなそんな音が聞こえた気がした。目の前が真っ黒に染まって、体の奥底が酷く熱くなった。

私は、また私の大切な人を守れなかった。あれだけ強くなれたと思えたのに。また…

その後の事はよく覚えていない。

ただ、気づいた時には時雨しぐれ様の腕に抱えられていて、当たり1面が更地になっていた。

敵も、味方もいなくて奥をよく見れば木々まばらにある程度。
しかし私の頭はよく働かず何故そうなっているのか考えるまもなく眠りに落ちた。


「いや~危なかったな…まさかここまで魔力を暴走させるとは思わなかった…歴代最高かもな。まぁ味方は殺さなかったのはこの子の性格故なのかな…?」

「時雨様、帰還の準備が整いました。」

「あぁ、ありがとう。後の処理はよろしく頼むよ澪。」

「かしこまりました。」

「あぁ後、記憶は私と月、それにあいつも残しておいて。」

「かしこまりました。」


しおりを挟む

処理中です...