JK戴冠

ちゃんの

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第2章 出会い

第13話 最強と、その師匠と

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 王都は彩り豊かな街だ。城に向かってまっすぐ伸びる商店街にずらりと露店が並び、人が多く行き交って賑わっている。

「晴、私から離れるなよ」
「うん」
「私が後ろからついていきます」

 すれ違う人の荷物や肩とぶつかるほどの混雑具合だ。あちこちで元気な声が飛び交い、荷車の走る音や食べ物のにおいがしている。晴は前を歩くティナに一生懸命着いていった。

(よそ見したらすぐはぐれちゃいそう……)

 ティナの白いお団子を追いかけて必死に歩いていると、突然背後から晴の首に腕が回された。

「動くな」
「!?」
「晴!?」

 異変に気づいたティナが振り返る。晴は腕を回されたまま動くことができず、青ざめて固まっていた。

 すると、腕の主はグッと締めるような仕草をして「ぐぇー」というわざとらしい声をあげてから、パッと腕を離した。

「あーあ、今のでこの子殺されてたよ。もっと気をつけなきゃだめでしょ、ティナ?」
「……なんだ、お前か」

 ティナが相手の顔を見るなり肩の力を抜いて、ぼそっとつぶやいた。

(びっくりした…………)

 晴を襲うふりをしたのは金髪の若い男だった。痛くはなかったがとても怖かったので、晴は首をさすりながらティナのそばに逃げた。

 彼は宝石のように碧い目を持っていた。サラサラの金髪が耳元でふんわりと膨らんで首元まで伸びている。

 男は咎めるように言った。

「その子がやられたら何の意味もないんだからね。ま、俺が来たからにはもう安心だけど」

 そして、自信に満ち溢れた表情でウインクをする。

「イトカ様、こんなところで何を……!?」

 晴が襲撃されたかと思い顔面蒼白だったセオシュが、イトカだとわかった途端に興奮して頬を紅潮させている。目まぐるしい表情の変化だ。イトカはにっこりと笑顔で答えた。

「そろそろ君たちが戻ってくる頃だと思ったからね。ちょうど町での仕事もあったし、一緒に城まで行こうと思って」

 そしてイトカは晴に向き直り、その美しい顔で笑いかけた。

「初めまして、俺はイトカ。ひとまず……城で働く君の従者だと思ってくれればいいよ」
「大丈夫です晴、この人は怪しい人じゃありません。ティナの師匠です」

 セオシュが目を輝かせながら教えてくれた。

「そ、そうなんだ……」

 晴はなんとなく身構えてしまった。イトカはどこか怪しげな雰囲気で、底知れない振る舞いである。ロユンと近しい部分もあるが、また違った危険さを感じさせた。

 ティナは良い意味でも悪い意味でも正直だ。感情がすぐに顔に出る。だがイトカの感情は全く読み取れなかった。ティナの師匠ということは、怪力のティナよりさらに強いということになるのだろうか。

「ティナの師匠にしては、かなり若いように見えるね?」

 セオシュにこっそり聞くつもりで晴が囁くと、聞こえていたティナが鼻を鳴らした。

「ふん、若いのは見た目だけだ。見てくれに騙されるなよ。こいつはもう60手前だ」
「60!!?」
「酷いなあ、なんだよその言い方はー。俺が老いぼれみたいじゃん」

 晴の驚きようを内心面白がりつつ、イトカが大袈裟に肩をすくめた。

(どう見たって20代半ばくらいだよね。30代には見えないし、まして60手前なんてありえない……)

 晴はとても信じられず、イトカの顔面をまじまじと見てしまった。

「普通に声をかけてくれれば良かっただろ。ヒヤヒヤさせるなよ」
「それじゃつまんないでしょ。ほら、道の途中で立ち止まってちゃ迷惑だし、行くよ」

 拗ねるティナを軽くあしらいながらイトカが先頭になり、4人は賑やかな通りを進み始めた。

 王都は、『小さな町』より衛生面もよく、整っているように見える。興味を惹かれる屋台や出店がいくつかあったが、晴はグッと我慢してイトカにしっかりついて行った。

 やがて、大きな一本の橋が見えてきた。その奥に聳え立つ大きな城は湖の中央に建てられていて、その橋を渡って城に進むのだ。

「城に繋がる橋はこの一本だけなんです。なので、橋の入り口で厳しい検問があります。まあ……イトカ様がいれば無用ですが」

 セオシュがまるで自分のことのように自慢げに話した。
 本当にその通りで、厳しく質問攻めにされて止められている人もいながら、4人はその横を素通りすることができた。

(私なんて明らかに怪しいだろうに。それでも1発で通せるこのイトカって人、何者……?)

 ただの従者なわけがない。ますます謎が深まるイトカについて深く考える間もなく、晴たちはついに城の入り口までやってきた。石造りの古風な城で、その点も革民党とは異なる。

 検問と橋の途中と、さらに門の前にも兵士がたくさんいた。彼らが身につけている軍服は白がベースになっている。晴は緊張しつつも、海外の城に入るなんて初めてなのでわくわくしていた。こんな状況でなければ、あちこち走り回って全力で観光を楽しみたいところだ。

 門をくぐると、城の中は別世界だった。

「わぁ……」

 天井は見上げるほどに高く、大きなシャンデリアが全体を照らしていた。その真下には美しい噴水があり、心地良い水音を立てている。

 床全体に敷かれたカーペットは歩き心地が良く、金の刺繍が入っていた。壁には絵画やタペストリーがたくさん飾られ、高級感のある音楽まで流れている。映画でしか見たことのないような、まさに理想のお城であった。

(すごい……)

 一瞬すべてを忘れられるほどの美しい空間だった。晴は立ち止まってぼうっと見入ってしまい、後ろからセオシュに小突かれた。

「ほら、イトカ様とティナがどんどん先に行っちゃってますよ。あとで城の中はいくらでも見られますから、今は行きましょ」
「ほんとだ、ごめん」

 2人は足早に進み、イトカとティナを追った。
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