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第4章 王さま修行 / 教会編
第50話 夜が明けていく
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そして、決戦前夜。
(エミレラが王様、ねぇ)
1人で夜の静けさに包まれた城を歩きながら、イトカはぼんやりと昔を思い出していた。キレウィがエミレラにプロポーズしたときのことだ。
「エミレラ、結婚しよう」
このときのキレウィは両腕に管を刺され、病室のベッドに寝かされている状態だった。しかもエミレラと2人きりではなく、お見舞いにきたボンド、イトカ、リグロも同席していた。ムードもくそもない。
これに対しエミレラは、少し目を見開いたあと微笑んで言った。
「あなたが元気になったらね」
キレウィは目を細めた。
「きみ、このぼくのプロポーズを断るつもりかい?」
「断ってないわ。あなた次第よ」
既にかなり病が進行しており、もう回復の見込みがないことはキレウィもエミレラもわかっていた。わかっていても、エミレラは諦めたくなかったのだ。
プロポーズをされたというのに、まるで冷静でいつも通り。そんなエミレラが愛しくて、キレウィはふっと笑った。
このときの彼の切ない笑顔を、イトカは一生忘れないだろう。恐らく、エミレラも。
(……あのときすぐに結婚しておけば、間に合ったかもしれないのに)
それからひと月もしないうちに、キレウィはこの世を去った。
キレウィとエミレラの婚約は公的なものでも何でもない。単なる口約束だ。それでも仲睦まじい様子は国民も知っていたし、噂にもなっていた。
王に飢えている教徒たちにとっては、婚約が口約束だろうが証明するものがなかろうがどうでも良い。利用できればそれで良いのだろう。
(でも、もうおしまいにしよう)
イトカは小さく笑った。
あの日から止まったままの時計を動かすときが、前へ進むときが来たのだ。
「あっ、メイじゃん!」
「げっ」
そこで、同じように夜の城を散歩していたメイを見つけた。メイが明らかに嫌そうな顔をする。
「なになに、メイも緊張しちゃってるの?」
「そんなわけないでしょ。ただの気分」
「ふーん?」
イトカはニヤニヤと笑いながらもメイのことを心配していた。彼に無理を言って、ある仕事を頼んでしまったからだ。明日もかなり大きな役割を任せている。
「頼んでたやつはどう? できた?」
「当たり前。ボクが仕事の期限を破ったことある?」
「ないね。さすが」
いつからこんな頼もしくなったのだろう。イトカが体を預けられる相手は、もうリグロだけではないのだ。それが嬉しくて、イトカは思わず笑顔になった。
「なにニヤニヤしてるの、気持ち悪い」
「酷っ!」
冷たく言いながらも、メイも少し微笑んでいる。
「ま、安心しなよ。ボクがなんとかするから」
確かな自信を含んだその眼差しに、イトカも色々な感情を噛み締めながら頷いた。
夜が明けていく。
ティナは、結局自分の犯した罪を晴に告白できないままだった。それがずっと心のどこかをちくちくと刺激していて、苛立ちが募るばかりだ。
何も間違ったことはしていないと確信している。ティナにとって1番大切なのは晴を守ることであり、晴は王だからこそ大切なのだ。
それならなぜ、言い出せずにいるのだろう。
晴を傷つけてしまうのが怖いのだ。
自分の感情にすら興味を持ってこなかったティナは、その恐怖すら自覚できていなかった。自分がどう感じ何を思うかなど、今までの人生で何の意味も持たなかったからだ。判断基準は王。個人の気持ちは関係ない。
どこか晴れない心のまま、眠れなかった乾いた目に朝日が差す。外へ出る前に、握った拳の感触を確かめた。
いよいよ作戦実行である。
(エミレラが王様、ねぇ)
1人で夜の静けさに包まれた城を歩きながら、イトカはぼんやりと昔を思い出していた。キレウィがエミレラにプロポーズしたときのことだ。
「エミレラ、結婚しよう」
このときのキレウィは両腕に管を刺され、病室のベッドに寝かされている状態だった。しかもエミレラと2人きりではなく、お見舞いにきたボンド、イトカ、リグロも同席していた。ムードもくそもない。
これに対しエミレラは、少し目を見開いたあと微笑んで言った。
「あなたが元気になったらね」
キレウィは目を細めた。
「きみ、このぼくのプロポーズを断るつもりかい?」
「断ってないわ。あなた次第よ」
既にかなり病が進行しており、もう回復の見込みがないことはキレウィもエミレラもわかっていた。わかっていても、エミレラは諦めたくなかったのだ。
プロポーズをされたというのに、まるで冷静でいつも通り。そんなエミレラが愛しくて、キレウィはふっと笑った。
このときの彼の切ない笑顔を、イトカは一生忘れないだろう。恐らく、エミレラも。
(……あのときすぐに結婚しておけば、間に合ったかもしれないのに)
それからひと月もしないうちに、キレウィはこの世を去った。
キレウィとエミレラの婚約は公的なものでも何でもない。単なる口約束だ。それでも仲睦まじい様子は国民も知っていたし、噂にもなっていた。
王に飢えている教徒たちにとっては、婚約が口約束だろうが証明するものがなかろうがどうでも良い。利用できればそれで良いのだろう。
(でも、もうおしまいにしよう)
イトカは小さく笑った。
あの日から止まったままの時計を動かすときが、前へ進むときが来たのだ。
「あっ、メイじゃん!」
「げっ」
そこで、同じように夜の城を散歩していたメイを見つけた。メイが明らかに嫌そうな顔をする。
「なになに、メイも緊張しちゃってるの?」
「そんなわけないでしょ。ただの気分」
「ふーん?」
イトカはニヤニヤと笑いながらもメイのことを心配していた。彼に無理を言って、ある仕事を頼んでしまったからだ。明日もかなり大きな役割を任せている。
「頼んでたやつはどう? できた?」
「当たり前。ボクが仕事の期限を破ったことある?」
「ないね。さすが」
いつからこんな頼もしくなったのだろう。イトカが体を預けられる相手は、もうリグロだけではないのだ。それが嬉しくて、イトカは思わず笑顔になった。
「なにニヤニヤしてるの、気持ち悪い」
「酷っ!」
冷たく言いながらも、メイも少し微笑んでいる。
「ま、安心しなよ。ボクがなんとかするから」
確かな自信を含んだその眼差しに、イトカも色々な感情を噛み締めながら頷いた。
夜が明けていく。
ティナは、結局自分の犯した罪を晴に告白できないままだった。それがずっと心のどこかをちくちくと刺激していて、苛立ちが募るばかりだ。
何も間違ったことはしていないと確信している。ティナにとって1番大切なのは晴を守ることであり、晴は王だからこそ大切なのだ。
それならなぜ、言い出せずにいるのだろう。
晴を傷つけてしまうのが怖いのだ。
自分の感情にすら興味を持ってこなかったティナは、その恐怖すら自覚できていなかった。自分がどう感じ何を思うかなど、今までの人生で何の意味も持たなかったからだ。判断基準は王。個人の気持ちは関係ない。
どこか晴れない心のまま、眠れなかった乾いた目に朝日が差す。外へ出る前に、握った拳の感触を確かめた。
いよいよ作戦実行である。
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