大恋愛のもとに恋する青年

辛羅

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大恋愛のもとに恋する青年

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 彼は一人、寒い中タバコを吸っていたが、耐えきれず暖を求め店内へ入った――

「いらっしゃいませー」
 艶やかな黒髪に端正な顔立ち、更には可愛らしさ匂わす香水を漂わせた小柄な女の子に、心踊らせる。
 好みだ……心の中で呟く。近づきたいと咄嗟に考えひねり出した言葉は、
「寒すぎて指、動かないや」
 事実。先ほどまで外気を諸に被りながらタバコを吸って冷えきった指先は、小銭すら上手く掴めない。
 良くも悪くも飾り気のない言葉にその女の子は、
「ふふっ」
 反応してくれただけでも嬉しく感じるのがこの僕であった。
 御歳二十歳。文字にすれば一瞬年寄り風に聞こえるが、まだ若年。
 しかし童貞だと言うと皆、口を揃えて
 「まだなの?」
 それがこの世の常であるらしい。
 「今まで機会がなかった訳では無いんだけど、好きな人としたいんだよね」
 真実だと胸を張る心の上に
「恥ず……。」
を着せられ惨めな偽りの姿で終わるのはいつもの事。
 「僕、彼女いないんだよね。」
 「え?本当に?」
 その後、純愛を信じて止まない僕はまた可愛い子に恋をした。真っ直ぐに見つめるその目の奥には、どこか寂しげなものを感じた。例えるならば、つい最近誰かにフラれたかのようなものであった。
 「大丈夫、僕は一つのものを大切にする性格だからさ。」
 その子は俯く。
 流れのなか、女の子は屋根のもとで暖をとった。
 その子は口を開くことも無く、黙ったままだった。
 「ご飯でも食べる?」
 そう言って軽く料理を振舞う。夢中になって食べるその姿は本当に愛らしかった。
 自分の部屋に他を入れるのは初めてのことだった。小さな身体にご飯を勢いよく入れるその姿を見て、命の限りこの女の子を大事にしよう、そう心の中で誓った。
 
 穏やかな朝陽に照らされ目が覚める。隣で身を寄せて眠るその子に、
「おはよう」
起こしてしまわないように、そっと抜け出しコンビニへと向かう。
 「いらっしゃいませー」
 僕はササミを差し出した。
 「あの……お料理されるんですか?」
 「えぇ、まぁ……軽くですけどね。」 
 「私、付き合ってた人と別れることになったんですけど、よかったら――」
  「僕、大切な人ができたんです。人って言うか、子が……ごめんなさい。」
 「――?」
 そう、僕には人生で初めての女の子ができた。綺麗な茶色い毛に真ん丸い目、加えては愛おしいと思わせるほどに短い足。
 「そういえば――」
 昨日、コンビニより帰路に着こうとしていた時拾った子犬にまだ名前をつけていなかった。
 「――お名前、お聞きしてもいいですか?」
 「えっ……紗奈って言います。」
 「紗奈、さ…ササ!」
 「?」
 「あの子、ササミが大好きなんです。ササって名前にしますっ!」
 「またのお越しお待ちしております。」
 
 ――冷たく放たれた言葉とは裏腹に、彼の心は温もりに満ちていた。
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
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