垣間見える月

辛羅

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垣間見える月

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 深夜に独り、気晴らしにと外を歩く。街灯の乏しい辺りは月明かりをやけに誇張する。
 もう希望なんて見えない。そう思っても、いつもまたどこかで見えてしまう。おそらくは明かりの灯るその雑然と建ち並んだ中で顔を覗かせてはまた隠れる月。
 「もう疲れた」
 歩くのをやめ、立ち止まって顔を上げる。その明かりは、まだ道は途絶えていないのではと執拗に思わせてくる。
 「もういいよ」
 心の中に攻め入ってくるその明かりを振り払おうとする。気が付けばまた歩を進めている。それも先程より速く。
 「全てを終わらせたい」
 本当に疲れたんだ、楽になりたいんだ。思うほどに何かがつっかえる。
 もともと走るのは苦手な性だった。自分の歩幅でゆっくり歩きたい。今でもそう思っている。しかし現実は思うように歩けない。
 「焦るな。先のことばかり考えすぎだ」
 つくづく自分に言い聞かせている。
 誰にでも夢はあるものだ。皆それに向かって歩いている。ときには走り、疲れたら休む。そしてまた歩き始める。
 しかし、その循環が上手くいかない人もいる。つまり、余裕が無いのだ。
 「何もできない」
 暗いため息がそんな言葉を紡ぐ。
 仕事も、友人も、家族も、何もかも。
 走り続けなければ生きられない。こういうのを社会不適応というのかもしれない。
 何処かに拠り所が欲しい。一つだけでいい、明かりの灯る居場所が。
 切に願いながら、それでもまた歩を止めてしまう。
 闇夜に浸かる心は明かりに善がり、夢への道を探る。
 自分には関係の無い、そんな在り来りな建物を掻い潜り、この身を照らす月。
 「また見えた」
 その明かりは一向に消えない。
 心に望む灯への道、おそらくはそう信じているからだろう。
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