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第二部 第一章 アマガエルの傘
決意
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「どうして……行かなきゃいけないのに」
つるさわ駅のホームの雑踏の中、一人の男がうずくまっている。
「どうしたんですか? 顔が真っ青ですよ」
近くにいた駅員が気づき、声をかけたが、彼は首を横に振るばかりで、会話が成り立たない。両手で自分の体を抱えるようにして小さくなる男は、ベンチに誘導され、呼吸を整える。
「電車に乗らないといけないのに、足がどうしても踏み出せないんです。どうしても……」
ようやくその一言を絞り出せば、ぼたぼたと涙を流し始める。駅員に家に帰るように説得され、結局彼は改札を出た。
前後不覚の状態のまま、男は自宅のアパートに戻ってきていた。
「もうだめだ。もう……もう……」
唇を噛み締め、瞼をぎゅっと閉じる。
彼の頭には、地元の両親や友人の顔が浮かんでいた。
都会で頑張ると言ったのに。期待してもらったのに。
就職して一年ちょっとでこんな状態になってしまうなんて。
情けなくて、でも苦しくて。現実から逃げたくて。
彼は、ついに決意を固めてしまった。
つるさわ駅のホームの雑踏の中、一人の男がうずくまっている。
「どうしたんですか? 顔が真っ青ですよ」
近くにいた駅員が気づき、声をかけたが、彼は首を横に振るばかりで、会話が成り立たない。両手で自分の体を抱えるようにして小さくなる男は、ベンチに誘導され、呼吸を整える。
「電車に乗らないといけないのに、足がどうしても踏み出せないんです。どうしても……」
ようやくその一言を絞り出せば、ぼたぼたと涙を流し始める。駅員に家に帰るように説得され、結局彼は改札を出た。
前後不覚の状態のまま、男は自宅のアパートに戻ってきていた。
「もうだめだ。もう……もう……」
唇を噛み締め、瞼をぎゅっと閉じる。
彼の頭には、地元の両親や友人の顔が浮かんでいた。
都会で頑張ると言ったのに。期待してもらったのに。
就職して一年ちょっとでこんな状態になってしまうなんて。
情けなくて、でも苦しくて。現実から逃げたくて。
彼は、ついに決意を固めてしまった。
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