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一、

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「あの、こういうのに参加するの初めてで。ちゃんとお話しできるかわからないんですけど」

「大丈夫ですよ。スピーカーへのご応募ありがとうございます」

 僕はこうして、毎月第二火曜日の深夜、音声SNS上で実話怪談会を開いている。
 オーナーである僕は、あくまで聞き手。話してもらうのは一般参加のスピーカーだ。

 ただ、怪談と言っても、内容がつまらないケースや、いたずらの場合もあるので、スピーカーは事前申請制。オンラインフォームから自分が体験した怪談の概要を送ってもらい、その中から面白そうな投稿者をピックアップしている。内容は、オーソドックスな幽霊ものから、人怖系まで様々。要は面白い怖い話であればなんでもあり。

「幽玄さんみたいな、著名な怪談師の方にお話しするほどの話でもないかもしれないんですが」

「いえいえ、送っていただいたお話し、とても面白そうで。読んだ瞬間、即採用することに決めたんです。早速お話ししてください」

 彼女の名前は、「さやか」さん。もちろん偽名である。

「あの実は今、住んでいる町がどこか気持ち悪い、というか、怖いんです––––」
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