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土地神様は徳を積む
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ある小さな街に、その街を見守る土地の神様がおりました。
土地神様は街の真ん中にある神社に住んでおり、毎日のように人の願いに耳を傾け、そして細やかながらも少しだけ叶えてあげる事を繰り返しています。
神様は、人の願いを聞き感謝される事、存在を信じてもらう事、手を合わしてくれる事で人々から【徳】をもらう事ができます。
そして、その【徳】を少しだけ使い、人々の願いを叶える事が出来るのです。
【徳】とは神様の力であり、命でもあります。
ある日の事でした。
神社は、行事などなければ人があまり来ません。それはいつもの事だから土地神様も気にはしていません、ですが最近気になることが出来ました。
毎日同じ時間に来る一人の女性です。年齢は50代から60代前位でしょう。土地神様も新参者ではありますがすでに100年はこの地に住んでおり、人を見れば大体分かります。
しかし顔は見た気がするのですが、その女性の声だけは聞こえませんでした。
お祈りに来る人は、殆どがこの周辺の方々です。ですが時折声の聞こえない方が居られるのです。それは、土地神様の護っている場所の外から来た場合です。
土地神様の力は【徳】により決められております。ですので護る場所以外の声は、その住まわれている場所の土地神様しか聞こえません。
ですので、気になった女性が毎日お祈りをしていても、声が聞こえないのは護る場所以外から来てるからでしょう。
これは参ったなと思いましたが、声を掛ける事が出来ないので見守る事にしました。でも、幾日も幾日も通う女性を見て2ヶ月が立った時でした、不意に何処に住んでいるか気になり帰り道を確認しました所、丁度土地神様の影響が届かないギリギリの場所に家がありました。
『これは本当に参りましたね・・・』
そう言葉にした時でした。隣街に住む土地神様が傍に来て話しかけてきました。
『隣の土地神様どうされました?』
『こんにちは土地神様。実はそこに住まわれている女性なのですが、もう2ヶ月以上毎日私の神社の方へお参りに来るのです。ですが声を聞くことが出来ないので、途方に暮れていた所です。顔を見た事はあるのですが、一向に思い出せないのです』
『なるほど・・・その女性ですが、小さな童の頃にそちらの土地に住まわれていた事があるようです。初めて越して来た時に、道に迷い神社で途方に暮れている時に貴方がお力を御貸ししたようですね。ですがそちらにお参りに行き、お話をされると私にも声が聞こえません』
『思い出しました!あの幼子だったのですね!でしたら尚更なにか良い方法は御座いませんでしょうか?』
ふむ。そう考える隣の土地神様は、手のひらをポンと叩きこう言いました。
『でしたら、その女性の土地だけをお譲り致しましょう!勿論少しの【徳】を頂ければですが』
土地神様は考える間も無く答えます。
『なるほど!そんな事が出来るのですね!それならば是非ともお願い致します!』
土地神様はそう言いますと【徳】の入ったがま口の財布を開きます。そこに入った黄金色の徳を必要分渡し、女性の土地を譲り受ける事が出来ました。
『ですが、お気をつけ下さい。私達土地の神は【徳】無しでは生きられません、見た所それ以上【徳】を失いますとあなた自身も失ってしまいますよ』
『そうですね、ご忠告を頂き誠に有難う御座います。では、早速神社に戻り明日を待つと致します』
そう言いお辞儀をした土地神様は、神社に戻り明日を楽しみに待ちました。
次の日になり、女性が来る時間ですが中々来ず首を長くしておりました。その日の夕方になり女性はやって参りました。
「神様神様、私は子供の頃に助けて頂いたこの土地に住むものです。長年他の土地に出ておりましたが、娘が子を宿しそれを機会にこちらへ戻って来る事となりました。しかし原因不明の病にかかり、明日手術をするそうです・・娘もお腹の子も危ない状況だと、今日お医者様より言われました。神様!何卒、何卒!私の娘とお腹の子をお救い下さい!我が身を捧げても娘とお腹の子を助けたいのです!」
ようやく話が聞こえました。そして土地神様は考え、次の日の朝になっても考えていました。
土地神様が護る街の病院に、その女性はいました。椅子に座り、手を合わせ祈り続けています。土地神様は、その手術というのが行われている部屋に入ります。そして直ぐに分かりました、女性の娘もお腹の子も助からないだろうという事に。
土地神様は若い神様です、隣の土地神様であれば違う答えがあったのかもしれません。しかし土地神様はがま口の財布を開き【徳】を取り出しました。だけど女性の娘すら助ける程の【徳】がありませんでした。
『それでも私は救いたいのです、貴方の娘さんを』
そう言うと、土地神様は自身を【徳】変え女性の娘を救いました。そして体が光の粒へと変わろうとしていました。そう、土地神様は【徳】が無いと生きてはいけないのです。それを知りつつも自身を【徳】に変え人を救う事に後悔はありません。
消えようとするその時に、目の前に神様が現れました。土地神様よりも上の位の神様です。
『土地の神よ、おぬしは【徳】を失い消える』
『はい、神様。でも後悔はありません』
『お前は、神としては良とは言えん・・・が人としてならば良であろうな・・・最後にお前の望みは無いか?』
『でしたら、最後にその女性のお腹にいる子をお救い下さい』
『あい分かった』
神様はそう言い残すと、ふっと消えてしまいました。そして土地神様も光の粒となり消えました。
手術室のランプが消え、扉が開きます。その中から運ばれてくる女性の娘。
「先生!娘は!娘とお腹の子は!」
「お母さん、大丈夫ですよ。お二人とも無事です」
女性は膝をつき涙を流します。
「神様!ありがとう!ありがとう!」
そう言う女性を見下ろす様に、光の粒は空へと昇り消えていきました。
土地神様は街の真ん中にある神社に住んでおり、毎日のように人の願いに耳を傾け、そして細やかながらも少しだけ叶えてあげる事を繰り返しています。
神様は、人の願いを聞き感謝される事、存在を信じてもらう事、手を合わしてくれる事で人々から【徳】をもらう事ができます。
そして、その【徳】を少しだけ使い、人々の願いを叶える事が出来るのです。
【徳】とは神様の力であり、命でもあります。
ある日の事でした。
神社は、行事などなければ人があまり来ません。それはいつもの事だから土地神様も気にはしていません、ですが最近気になることが出来ました。
毎日同じ時間に来る一人の女性です。年齢は50代から60代前位でしょう。土地神様も新参者ではありますがすでに100年はこの地に住んでおり、人を見れば大体分かります。
しかし顔は見た気がするのですが、その女性の声だけは聞こえませんでした。
お祈りに来る人は、殆どがこの周辺の方々です。ですが時折声の聞こえない方が居られるのです。それは、土地神様の護っている場所の外から来た場合です。
土地神様の力は【徳】により決められております。ですので護る場所以外の声は、その住まわれている場所の土地神様しか聞こえません。
ですので、気になった女性が毎日お祈りをしていても、声が聞こえないのは護る場所以外から来てるからでしょう。
これは参ったなと思いましたが、声を掛ける事が出来ないので見守る事にしました。でも、幾日も幾日も通う女性を見て2ヶ月が立った時でした、不意に何処に住んでいるか気になり帰り道を確認しました所、丁度土地神様の影響が届かないギリギリの場所に家がありました。
『これは本当に参りましたね・・・』
そう言葉にした時でした。隣街に住む土地神様が傍に来て話しかけてきました。
『隣の土地神様どうされました?』
『こんにちは土地神様。実はそこに住まわれている女性なのですが、もう2ヶ月以上毎日私の神社の方へお参りに来るのです。ですが声を聞くことが出来ないので、途方に暮れていた所です。顔を見た事はあるのですが、一向に思い出せないのです』
『なるほど・・・その女性ですが、小さな童の頃にそちらの土地に住まわれていた事があるようです。初めて越して来た時に、道に迷い神社で途方に暮れている時に貴方がお力を御貸ししたようですね。ですがそちらにお参りに行き、お話をされると私にも声が聞こえません』
『思い出しました!あの幼子だったのですね!でしたら尚更なにか良い方法は御座いませんでしょうか?』
ふむ。そう考える隣の土地神様は、手のひらをポンと叩きこう言いました。
『でしたら、その女性の土地だけをお譲り致しましょう!勿論少しの【徳】を頂ければですが』
土地神様は考える間も無く答えます。
『なるほど!そんな事が出来るのですね!それならば是非ともお願い致します!』
土地神様はそう言いますと【徳】の入ったがま口の財布を開きます。そこに入った黄金色の徳を必要分渡し、女性の土地を譲り受ける事が出来ました。
『ですが、お気をつけ下さい。私達土地の神は【徳】無しでは生きられません、見た所それ以上【徳】を失いますとあなた自身も失ってしまいますよ』
『そうですね、ご忠告を頂き誠に有難う御座います。では、早速神社に戻り明日を待つと致します』
そう言いお辞儀をした土地神様は、神社に戻り明日を楽しみに待ちました。
次の日になり、女性が来る時間ですが中々来ず首を長くしておりました。その日の夕方になり女性はやって参りました。
「神様神様、私は子供の頃に助けて頂いたこの土地に住むものです。長年他の土地に出ておりましたが、娘が子を宿しそれを機会にこちらへ戻って来る事となりました。しかし原因不明の病にかかり、明日手術をするそうです・・娘もお腹の子も危ない状況だと、今日お医者様より言われました。神様!何卒、何卒!私の娘とお腹の子をお救い下さい!我が身を捧げても娘とお腹の子を助けたいのです!」
ようやく話が聞こえました。そして土地神様は考え、次の日の朝になっても考えていました。
土地神様が護る街の病院に、その女性はいました。椅子に座り、手を合わせ祈り続けています。土地神様は、その手術というのが行われている部屋に入ります。そして直ぐに分かりました、女性の娘もお腹の子も助からないだろうという事に。
土地神様は若い神様です、隣の土地神様であれば違う答えがあったのかもしれません。しかし土地神様はがま口の財布を開き【徳】を取り出しました。だけど女性の娘すら助ける程の【徳】がありませんでした。
『それでも私は救いたいのです、貴方の娘さんを』
そう言うと、土地神様は自身を【徳】変え女性の娘を救いました。そして体が光の粒へと変わろうとしていました。そう、土地神様は【徳】が無いと生きてはいけないのです。それを知りつつも自身を【徳】に変え人を救う事に後悔はありません。
消えようとするその時に、目の前に神様が現れました。土地神様よりも上の位の神様です。
『土地の神よ、おぬしは【徳】を失い消える』
『はい、神様。でも後悔はありません』
『お前は、神としては良とは言えん・・・が人としてならば良であろうな・・・最後にお前の望みは無いか?』
『でしたら、最後にその女性のお腹にいる子をお救い下さい』
『あい分かった』
神様はそう言い残すと、ふっと消えてしまいました。そして土地神様も光の粒となり消えました。
手術室のランプが消え、扉が開きます。その中から運ばれてくる女性の娘。
「先生!娘は!娘とお腹の子は!」
「お母さん、大丈夫ですよ。お二人とも無事です」
女性は膝をつき涙を流します。
「神様!ありがとう!ありがとう!」
そう言う女性を見下ろす様に、光の粒は空へと昇り消えていきました。
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