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07 サタン

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 俺はしばらくのあいだ、呆然と柚葉の無惨で惨めな裸体を見ていることしかできなかった。柚葉の股の下にはたっぷりの水溜まりがあり、それは俺の足元にまできていた。

「あああ……あああああ」

 柚葉はときおり、恍惚とした表情で気の抜けた声を出す。それはまるで天国にいるかのような、快感に溺れているかのような声だった。

「もっと、もっと。してぇ……わたしをめちゃくちゃに」

 柚葉にはもうすでに俺のことなんて映っていなかった。目と鼻の先に彼氏がいるというのに、何も反応しない。

 快感を求め続ける動物だ。今の柚葉にはまさにその言葉がぴったりだった。

「柚葉……お前はどうしてこんな目に遭ってしまうんだ?」
「ああああ……もっともっと」

 問いかけても、柚葉は快楽を求め続けるだけ。

「誰にされたんだ?」
「ふふふふっっっっふふふっふっっ」

 不気味な笑い声をあげる柚葉。

「………………」

 俺はそんな柚葉を見て心に決める。

(絶対に犯人を見つけ出して、そいつをめちゃくちゃにしてやる。足腰がガクガク震えて、立てなくなるまで……。絶対に絶対に絶対に……許さねぇ)

 俺は柚葉の恍惚とした表情を目に焼き付けてから、勢いよく立ち上がって玄関を後にした。
 おそらく犯人はまだ近くにいるはずだ。俺が柚葉と別れてコンビニで朝ごはんを買って帰ってくるまで15分くらいしか経っていない。

 犯人はこの町のなかにいる。それだけは間違いないはずだ。

「どこにいる……サタン」

 俺がそう呟いた瞬間だった。




ブッブッ




 深夜に聞いたときと全く同じバイブレーションの音が耳に入った。


「まさかっっ」


 俺は急いでスマホを取り出し、メッセージを確認する。そこには……


:次は君の番だよ


 サタンからのメッセージが言葉少なに送られてきていた。


 俺がそのメッセージを確認した刹那。


『キィィィィィィィィィィ!!!!!』


 黒い大きな車の影が俺のすぐ隣でブレーキ音を豪快に鳴らしながら急停止した。


「なっっっ」


 俺が事態を把握できずに驚いていると、車のなかから黒いマスクをした複数の人間が勢いよく出てきて俺を拘束した。


「おいっっっ。何をするっっ」
「…………」
「…………」


 返答はない。俺はガッチリと拘束されてしまう。そして……

 
 車のなかからもう一人の人間が降りてくる。その人間はマスクをしておらず、顔をはっきりと確認することができた。

 女性だった。長髪で黒髪。背は高くてスタイルは抜群。大きくなりすぎた胸が嫌でも目に入ってくる。

「やっと会えたね……」
「だ、誰だ!!! どうしてこんなことをする!!!」

 俺が大声を出して暴れると……

「もう~、やっと再開できたっていうのに。そんなに大声出したらダメでしょ!」

 彼女はトントンとリズムよく俺のもとに駆け寄ってくると。

「後でたっぷり可愛がってあげるから、いまはね……」


 そう言って白い布を俺の口元に強引に押し付けてきた。

「な、何をする!! はな、はにゃ……せぇ…………」

 
 こうして俺は意識を失った。


「ふふふ寝顔もそっくりあの時のまま」
「はい、そうですね。全く変わっていません」
「ああ~可愛い可愛い可愛い」
「今すぐ犯したい気分です」
「もう~あなたたち~。彼はみんなのものなんだから~。あ、そうそう。あの柚葉って女の子も連れてきてちょうだい。今日からあの子も……ね」


 俺が意識を失った後、は俺と柚葉を車に乗せて、どこかわからないところへ連れて行くのだった。
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