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05 暴走する性癖

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「あれれ……亮太君、遅いなぁ……どうしたんだろう」

 太陽もすでに地平線の向こう側へと沈み、徐々に夜の暗闇が街を包み込もうとしているとき。
 屋上に一人で取り残されている哀れな一人のか弱き少女、いや、美少女がいた。

 名を水瀬雫という。

「もう一時間くらい経つのに……おかしいなぁ」

 彼女は亮太、すなわち、この物語の主人公である鈴木亮太のことをずっと待っている。
 きっと、彼は私のことを迎えに来ると、かたくなに信じて疑っていないご様子。

 どうやら、彼女は亮太のことを狂おしいほどまでに愛しているようだった。
 そうでなければ、こんな夕方の屋上で一時間も待ったりしない。

「も、もしかしてっ!!!! 亮太君は私のことを……」


 どうやら、彼女はなにかに気が付いたご様子。


「私のことを置いていった……?? 亮太君はもう帰ってしまった……??」


 遅い。遅すぎる、その事実にたどり着くまでが。

 圧倒的遅さ!!!!


「え……うそっ……、亮太君が私のこと……置いていった……」


 二度同じことを口にする。その声はどこか興奮の混じった色っぽい声をしていた。

 まさか……


「これって、放置プレイ?? 焦らしてるの?? 亮太君は私のこと焦らしてるの??」

 彼女は気が狂ったように叫ぶ。
 それはある意味で愛の叫びに近いものだった。
 
 狂った愛。
 歪な愛。

 放課後の教室で角オナをしていた彼女という変人の一遍を垣間見ることができた、そんな夕方だった……


「いいわ、いいわっ!!!! 亮太君んんんんんっ」


 彼女はすでに暗くなった屋上で、一人、また何かを始めているようだった。

 暗くてよく見えないが、おそらくは……そういうことだろう。
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