適齢期を迎えてもスキルを得られなかった最弱冒険者の俺は追放をきっかけにスキル《完全支配》を手に入れる。これで俺は世界最強目指します！

追放

「おい、ゼイン。お前はどれだけ俺たちに迷惑を掛けたら気が済むんだ！！　いい加減に強くなれよ！！　この役立たずが！！」

　冒険者メンバーのリーダー的存在のアランが鬼のような形相で文句を言いつけてくる。

「雑魚モンスターでさえも倒せないお前の面倒を見る俺たちの気持ちを考えたことはあるのか？　ええっ！？　おい、答えてみろよ」

　どうしてこんな答えにくい質問をアランは投げかけてくるのだろう。最近になってこういった質問攻めが増えてきているような気がする。

　どうしてこんなにも悔しい気持ちになるのだろうか。悔しくて悔しくて悔しくて……。

　俺は15歳を迎えたにも関わらず、スキルを授からなかった。
　この世界ではみんな等しく15歳になるとスキルを授かるようになっているのだ。

　それにも関わらず、唯一俺だけにスキルが授からなかった。
　周りにいる友達は《剣士》や《魔法使い》、《商人》など色々なスキルを授かっていたのを覚えている。

　スキルを無事に授かったみんなは、俺の無様な様子を見て口々に嫌味を言ってきた。
　もちろん、なかには慰めてくれる友達もいたが、当時の俺にとっては些細なことだった。

　他人から嫌味を言われるとか、慰められるとか、そういう他人からの評価、目線は少しも気にならなかった、と思っている。

　とにかくその時の俺は絶望した。ただ、ただ絶望した。これからの人生をどう生きていけばいいのか分からなくなった。
　死を考えたこともあった。といっても本当に死のうとすると足がすくんで、なんだ口だけかって、ますます自分が惨めになった。

　そのような状態の俺を常に支えてくれたのは家族だった。甘い言葉は決して掛けずに、俺の将来のことを考えて色々と助言をしてくれた。　

　俺はそのときの家族に対しての恩は一生忘れないと思う。深い深い家族愛を感じた。

　そして俺は未来へ向けて歩みだすことを決意して、小さい頃から夢を共にしていた村の幼馴染たちと冒険者パーティーを正式に組み、都会に出ることにした。

　その幼馴染たちは、俺を含めて4人いる。

　ゼイン（俺）

　アラン（男）

　フィーネ（女）

　セリア（女）

　俺たちは小さい頃から常に行動を共にしていた。将来は一緒に冒険者パーティーを組んで世界最強のパーティーになるんだ！　と夢を語り合っていた。

　

　それなのに……


「俺が無能で役立たずだからみんなに迷惑をかけてしまった。すまない」

　俺は悔しさを何とか堪えて、謝罪の言葉を伝えた。

　昔はあれほど無邪気に夢を語り合った仲だったのに。

　冒険者パーティー結成当初は、スキルを授からなかった俺を、みんなは揶揄ったりなんかしなかった。お前にはお前のやれることがあるんじゃないか？　と前向きな言葉をかけてくれていた。


　なのに……


「おお、おお。よく分かってんじゃねーか。そうだよ、お前は無能で役立たずのクズオブザクズだ」


　
　何回も言わないでくれ……



「おい、こっち見ろよ。クズが！！」



　役立たずでクズなのは自分でもよく分かってるから……。これ以上、言わないでくれ……


「反省してるんだよな、ゼイン。だったら俺たちに迷惑をかけた責任を取ってもらおうじゃねーか。なあ、フィーネ！！　セリア！！」

「え、ええ……」

「…………」


　アランは趣味の悪い笑みを浮かべている。


「せ、責任って……」


「そんなの一つに決まってるじゃないか、わかんねーのかよ。お前は頭のほうも無能なわけか！！！！」


「…………」


　俺は何かとても嫌な予感を今、この瞬間に感じていいる。今後を大きく左右する出来事が、今まさに起きようとしている。そんな気がした。


「追放だ」


「えっ…………」


「リーダーが命じる。今すぐにこのパーティーから去れ！！　今すぐにだ！！」



　その日、俺は幼馴染たちとの夢がたくさん詰まった掛け替えのない冒険者パーティーから追放された。