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3-2 肝試しと大掃除 side B
5 祓戸大神
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「『古事記』の伊邪那岐の黄泉下りは直さん、わかります?」
「まあ、それは一応……アレでしょ、死んだ奥さんの伊邪那美を追いかけて黄泉まで行ったはいいけど、うっかり伊邪那美の事見ちゃって追っかけられるやつ」
信号が青に変わったので、直人が車を発進させる。
「じゃあ、その後は?」
弘の言葉に、直人はその後ぉ? と困惑混じりの声を上げている。
後部座席の織歌には、ルームミラーに映る眉間にしわを寄せた直人の顔が見えた。
「まあ、オジサンも伊達に紀美くんに付き合ってるわけじゃないからなあ……アレだよね、岩を挟んでの問答」
「じゃあその後は?」
矢継ぎ早の質問に、弘が楽して説明しようとしているのを織歌は察する。
ショートカット地点を探っているのだ。
「えっ……天照と月読と須佐之男が生まれる?」
「おー、飛んだ飛んだ。やっぱ知名度的には三貴子の誕生にいきますよね」
直さんがここまで知ってたらどうしようかと思った、と弘が呟く。
「……オジサンは三貴子を読み下しで諳んじた弘ちゃんにびっくりだよ」
くるくるとハンドルを回しながら直人がそう言う。
カーブを曲がる遠心力に合わせて、織歌の身体は右側に揺れた。
「問答後、伊邪那岐は、黄泉のせいで穢れたから、と水に浸かって、あらゆる穢れを洗い落とします。まあ簡単に言って禊です、禊」
がさごそ、と弘がどうやらウエストポーチの中を探っているようだ。
「三貴子、天照と月読と須佐之男の三柱が生まれるのはその禊の最後です」
「あー、その言い方、それより前に生まれた神様もいるって事? そこに答えがあるわけ?」
「直さん、先生の数少ない友人なだけはありますね。察しが大変よろしい」
目当てのものを見つけたらしい弘の手元から、ぴりぴりぴり、と何かを開ける音がする。
「禊の中でまず生まれたのは、伊邪那岐が脱ぎ捨てた道具や衣服、装飾品から生まれた十二柱の神。杖の衝立船戸神、帯の道之長乳歯神、荷物の袋の時量師神、脱ぎ捨てた衣の和豆良比能宇斯能神、袴の道俣神、冠の飽咋之宇斯能神、左手の三つの手纏、つまりは今のブレスレットから生まれた、奥疎神、奥津那芸佐毘古神、奥津甲斐弁羅神、右手の三つの手纏の辺疎神、辺津那芸佐毘古神、辺津甲斐弁羅神までの十二柱……とはいえ、今回は重要ではないです」
何か取り出したらしい弘がシートベルトを締めた身をよじって、後部座席の織歌に握り拳を差し出してくる。
織歌がその下で両手でお椀を作るようにすると、弘が緩めた拳から、ころりと包装された飴が転げ落ちた。
その扁平な楕円のシルエットは、どうやらバターキャンディのようだ。
「あ、弘ちゃん、ありがとうございます」
織歌がそう言うと、弘は軽く手を上げるジェスチャーを返してきた。
「直さんもいります?」
「んー、オジサンは別にいいや。それより、重要じゃないってところで終わったんだけど」
直人にそう言われても、弘はまずマイペースに自分の分の飴を取り出してぺりぺりと包装を剥くと口に放り込んだ。
「まあ、それは一応……アレでしょ、死んだ奥さんの伊邪那美を追いかけて黄泉まで行ったはいいけど、うっかり伊邪那美の事見ちゃって追っかけられるやつ」
信号が青に変わったので、直人が車を発進させる。
「じゃあ、その後は?」
弘の言葉に、直人はその後ぉ? と困惑混じりの声を上げている。
後部座席の織歌には、ルームミラーに映る眉間にしわを寄せた直人の顔が見えた。
「まあ、オジサンも伊達に紀美くんに付き合ってるわけじゃないからなあ……アレだよね、岩を挟んでの問答」
「じゃあその後は?」
矢継ぎ早の質問に、弘が楽して説明しようとしているのを織歌は察する。
ショートカット地点を探っているのだ。
「えっ……天照と月読と須佐之男が生まれる?」
「おー、飛んだ飛んだ。やっぱ知名度的には三貴子の誕生にいきますよね」
直さんがここまで知ってたらどうしようかと思った、と弘が呟く。
「……オジサンは三貴子を読み下しで諳んじた弘ちゃんにびっくりだよ」
くるくるとハンドルを回しながら直人がそう言う。
カーブを曲がる遠心力に合わせて、織歌の身体は右側に揺れた。
「問答後、伊邪那岐は、黄泉のせいで穢れたから、と水に浸かって、あらゆる穢れを洗い落とします。まあ簡単に言って禊です、禊」
がさごそ、と弘がどうやらウエストポーチの中を探っているようだ。
「三貴子、天照と月読と須佐之男の三柱が生まれるのはその禊の最後です」
「あー、その言い方、それより前に生まれた神様もいるって事? そこに答えがあるわけ?」
「直さん、先生の数少ない友人なだけはありますね。察しが大変よろしい」
目当てのものを見つけたらしい弘の手元から、ぴりぴりぴり、と何かを開ける音がする。
「禊の中でまず生まれたのは、伊邪那岐が脱ぎ捨てた道具や衣服、装飾品から生まれた十二柱の神。杖の衝立船戸神、帯の道之長乳歯神、荷物の袋の時量師神、脱ぎ捨てた衣の和豆良比能宇斯能神、袴の道俣神、冠の飽咋之宇斯能神、左手の三つの手纏、つまりは今のブレスレットから生まれた、奥疎神、奥津那芸佐毘古神、奥津甲斐弁羅神、右手の三つの手纏の辺疎神、辺津那芸佐毘古神、辺津甲斐弁羅神までの十二柱……とはいえ、今回は重要ではないです」
何か取り出したらしい弘がシートベルトを締めた身をよじって、後部座席の織歌に握り拳を差し出してくる。
織歌がその下で両手でお椀を作るようにすると、弘が緩めた拳から、ころりと包装された飴が転げ落ちた。
その扁平な楕円のシルエットは、どうやらバターキャンディのようだ。
「あ、弘ちゃん、ありがとうございます」
織歌がそう言うと、弘は軽く手を上げるジェスチャーを返してきた。
「直さんもいります?」
「んー、オジサンは別にいいや。それより、重要じゃないってところで終わったんだけど」
直人にそう言われても、弘はまずマイペースに自分の分の飴を取り出してぺりぺりと包装を剥くと口に放り込んだ。
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