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回想 1 違和と怪物
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私がそれに気がついたのは、小学校四年生の時だ。
学校から帰って宿題を終えた私が、おにいちゃんとテレビゲームをしていた時だ。
それもおせんべいをかじりながら。
お行儀悪くおせんべいを咥えながらコントローラーを握るおにいちゃんと、連敗してムキになってコントローラーを握りしめる私と。
……今もって考えると、あの美貌でまんまるの醤油せんべいを咥えていたおにいちゃんはシュールに過ぎる。
とりあえず、あとはどっちか必殺技決めた方が勝てそう。
そんな時だったのだ。あまりにタイミングが悪すぎる。
いや、そもそもおにいちゃんに目をつけられたという時点で、私は運がないのかもしれないけど。
冷たい水を頭から被せられて、目が覚めたような感覚だった。
あるいは、ずうっと水中に潜っていて、酸欠で朦朧とした頭が水面から出て、新鮮な空気を吸ったような、そんな感覚だった。
ひんやりと鋭さのあるものが、頭のてっぺんからお腹の辺りまでくだり落ちるような、そんな衝撃に私は動けなかった。
動かせなかった。文字通り、指先一つ。
おにいちゃんは当然のように、私の操作キャラに必殺技をかまして勝ってから、凍った私に気がついた。
「みぃちゃん?」
咥えていた醤油せんべいをはなして、おにいちゃんは私の顔を覗き込む。
ぎくり、とかろうじてできていた呼吸すら止まる心地だった。
白皙の美貌。艶やかな青に潤む黒髪。
母さんにも、父さんにも、私にも似ていない。
それは当然だ。
だって、この隣りにいる男は私のおにいちゃんなんかじゃない。
――私に、おにいちゃんなんかいない。
それでも、確かにあれはおにいちゃんだと頭の中で何かが言う。
いや、待て、おにいちゃんの名前は? ――出てこない。
いやでもこれは私のおにいちゃんで、私におにいちゃんなんかいない。
「みぃちゃん」
ずっと聞いていると眠くなってくるような、絵本を読み聞かせするような、少し平坦で落ち着いた心地いい深みのある声。
固まる私の目をじっと見つめたまま、おにいちゃんは言った。
「気がついちゃった?」
学校から帰って宿題を終えた私が、おにいちゃんとテレビゲームをしていた時だ。
それもおせんべいをかじりながら。
お行儀悪くおせんべいを咥えながらコントローラーを握るおにいちゃんと、連敗してムキになってコントローラーを握りしめる私と。
……今もって考えると、あの美貌でまんまるの醤油せんべいを咥えていたおにいちゃんはシュールに過ぎる。
とりあえず、あとはどっちか必殺技決めた方が勝てそう。
そんな時だったのだ。あまりにタイミングが悪すぎる。
いや、そもそもおにいちゃんに目をつけられたという時点で、私は運がないのかもしれないけど。
冷たい水を頭から被せられて、目が覚めたような感覚だった。
あるいは、ずうっと水中に潜っていて、酸欠で朦朧とした頭が水面から出て、新鮮な空気を吸ったような、そんな感覚だった。
ひんやりと鋭さのあるものが、頭のてっぺんからお腹の辺りまでくだり落ちるような、そんな衝撃に私は動けなかった。
動かせなかった。文字通り、指先一つ。
おにいちゃんは当然のように、私の操作キャラに必殺技をかまして勝ってから、凍った私に気がついた。
「みぃちゃん?」
咥えていた醤油せんべいをはなして、おにいちゃんは私の顔を覗き込む。
ぎくり、とかろうじてできていた呼吸すら止まる心地だった。
白皙の美貌。艶やかな青に潤む黒髪。
母さんにも、父さんにも、私にも似ていない。
それは当然だ。
だって、この隣りにいる男は私のおにいちゃんなんかじゃない。
――私に、おにいちゃんなんかいない。
それでも、確かにあれはおにいちゃんだと頭の中で何かが言う。
いや、待て、おにいちゃんの名前は? ――出てこない。
いやでもこれは私のおにいちゃんで、私におにいちゃんなんかいない。
「みぃちゃん」
ずっと聞いていると眠くなってくるような、絵本を読み聞かせするような、少し平坦で落ち着いた心地いい深みのある声。
固まる私の目をじっと見つめたまま、おにいちゃんは言った。
「気がついちゃった?」
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