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1章
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外は大荒れの天気。
空には黒い雲がたちこめ、大雨が降り注ぎ、突風が吹き荒ぶ。
そして時折鳴り響く雷。
こんな天気では当然窓を開けることはできない。エアコンをかけて部屋は涼しくされていた。
風紀委員たちは寮の1階にある食堂に集まって思い思いのことをしていた。
テーブルで麓はおとなしく読書、寮長はその隣で献立を考え、向かい側で霞と扇は事務仕事にいそしんでいる。
焔と光はソファに座ってスマホゲームの対戦に熱中していた。
残る2人のうち、風紀委員で最年少のサド少年は────こちらに背を向けて部屋の片隅で毛布にくるまっていた。この暑い時期に。
彼は決して、誰かに怒られたりハブられていじけているわけでもない。
と、その瞬間に閃光が部屋に入ってきて蒼は肩を大きく震え上がらせた。
そして一拍おいた後にゴロゴロ…とうなるような音が響き、蒼は肩をブルブルと震わせた。
「あばば…くわばらくわばら…」
普段クールでサドな彼の姿からは考えられない姿だ。泣きそうになりながらビビっている彼は、とあることがあって雷が苦手だった。
────くぉーるぁ蒼! 凪のことなんか相手にして変な意地張らないの!
────だって姉さん…。
────その"だって"をやめなさい。小さい子どもじゃないんだから、ちゃんとした理由を述べなさい。
────おーおー先公らしいこと言っちゃって。
────先公って言うのやめなさいバカ!
彼女がその日一番の怒鳴り声を上げたと同時に辺りに雷太鼓が響いた。地響きがするレベルにおののいた蒼は、その時にトラウマを刻まれた。自分が怒られたわけでもないのに。
でも彼女自身のことは好きだった。矛盾しているだろうが、彼女のことは姉のように慕っていた。
昔話を思い出し、感傷に浸って別の涙が流れそうになったら────後ろから爆笑する声ご聞こえた。
「マジウケる! サドのくせに弱点の雷が鳴るといつもこうだもんな!」
「僕でも怖くないのに…アオくんってば普段の冷静さが台無しだよー!」
焔と光は笑いすぎて目の端に涙が光っていた。
そんな2人のことを恨めしげに蒼は睨んでいる。しかし彼も目にうっすら涙を浮かべて目元が腫れぼったくなっているので迫力がない。むしろ可愛く見えるくらいだ。
蒼はフンッと鼻をならし、窓際で外の様子を見ている男のことを見た。
「ありえないですよあんた! どーしてそんな冷静に雷に1番近い所にいられるんですか!」
半ば叫ぶように言われた男は振り向き、稲妻と同じ金色の瞳を蒼のことを蔑むように細めた。
「別に雷なんて怖かねェよ。っつーかむしろありがたいと思え。雷が多い年は米がよく穫れるって昔から言うだろーが」
「そ…それは知ってますけど怖いものは怖いんです!」
「ふーん。おめーがまだまだガキだっつーことだな」
「ぐっ…」
凪が薄く笑うと蒼は頬を膨らませて彼らに背を向けた。
と、同時に今日1番の激しい稲妻が空を走り、光が部屋いっぱいに入りこみ────荒々しい雷太鼓の音が響くと同時に、蒼の叫び声が室内でこだました。
「ぎいぃぃやぁぁぁ!!」
富橋にある花巻山のふもとには、一つの学園が建っている。
通っているのは美男美女ばかり。
しかし、彼らはただの生徒ではない。
姿は人間と変わらないが、正体は万物から生まれた精霊だ。普通の人間には見えない学園で思い思いに過ごしている。
精霊の、精霊による、精霊のための学園『八百万学園』。創立者であり理事長である太陽の女神、アマテラスが経営している。
学園の敷地内には寮があり、精霊たちは全員そこで寝泊まりをしている。
その中にある一番小さな寮は風紀委員のための寮。
彼らは表向きはただの風紀委員だが、裏の顔は対天災対策のための組織天神地祇だ。そのトップを務める凪をはじめ、彼らは並みを外れた美貌の持ち主。さらに能力や力量は平均を遥かに上回る。
その中の紅一点の麓は特別強いというわけではないが、あらゆるものの傷を癒すことができるという能力を買われ、入学と同時に風紀委員に入ることになった。
麓が山を下りてからもう4ヶ月が経とうとしている8月中旬。季節は夏真っ盛りだ。
人間界だと夏休みは7月下旬から8月いっぱいだが、八百万学園では7・8月が夏休み。
その間に精霊たちは久しぶりに故郷へ帰ったり、人間界での夏のイベントを満喫したり、友人同士で遠出をしたりする。麓も数週間前に、久しぶりに故郷である花巻山へ帰った。
自分の住処である頂上のツリーハウスがひどく懐かしかった。
迎えてくれた獣たちと近況報告をし合い、束の間の憩いの一時を過ごした。
彼女と同じように、凪以外の風紀委員のメンバーも自分の故郷へ帰ったのはもう7月の話。
後にこの寮に過ごしているメンバーで凪の故郷へちょっとした旅行へ行くことになっている。
空には黒い雲がたちこめ、大雨が降り注ぎ、突風が吹き荒ぶ。
そして時折鳴り響く雷。
こんな天気では当然窓を開けることはできない。エアコンをかけて部屋は涼しくされていた。
風紀委員たちは寮の1階にある食堂に集まって思い思いのことをしていた。
テーブルで麓はおとなしく読書、寮長はその隣で献立を考え、向かい側で霞と扇は事務仕事にいそしんでいる。
焔と光はソファに座ってスマホゲームの対戦に熱中していた。
残る2人のうち、風紀委員で最年少のサド少年は────こちらに背を向けて部屋の片隅で毛布にくるまっていた。この暑い時期に。
彼は決して、誰かに怒られたりハブられていじけているわけでもない。
と、その瞬間に閃光が部屋に入ってきて蒼は肩を大きく震え上がらせた。
そして一拍おいた後にゴロゴロ…とうなるような音が響き、蒼は肩をブルブルと震わせた。
「あばば…くわばらくわばら…」
普段クールでサドな彼の姿からは考えられない姿だ。泣きそうになりながらビビっている彼は、とあることがあって雷が苦手だった。
────くぉーるぁ蒼! 凪のことなんか相手にして変な意地張らないの!
────だって姉さん…。
────その"だって"をやめなさい。小さい子どもじゃないんだから、ちゃんとした理由を述べなさい。
────おーおー先公らしいこと言っちゃって。
────先公って言うのやめなさいバカ!
彼女がその日一番の怒鳴り声を上げたと同時に辺りに雷太鼓が響いた。地響きがするレベルにおののいた蒼は、その時にトラウマを刻まれた。自分が怒られたわけでもないのに。
でも彼女自身のことは好きだった。矛盾しているだろうが、彼女のことは姉のように慕っていた。
昔話を思い出し、感傷に浸って別の涙が流れそうになったら────後ろから爆笑する声ご聞こえた。
「マジウケる! サドのくせに弱点の雷が鳴るといつもこうだもんな!」
「僕でも怖くないのに…アオくんってば普段の冷静さが台無しだよー!」
焔と光は笑いすぎて目の端に涙が光っていた。
そんな2人のことを恨めしげに蒼は睨んでいる。しかし彼も目にうっすら涙を浮かべて目元が腫れぼったくなっているので迫力がない。むしろ可愛く見えるくらいだ。
蒼はフンッと鼻をならし、窓際で外の様子を見ている男のことを見た。
「ありえないですよあんた! どーしてそんな冷静に雷に1番近い所にいられるんですか!」
半ば叫ぶように言われた男は振り向き、稲妻と同じ金色の瞳を蒼のことを蔑むように細めた。
「別に雷なんて怖かねェよ。っつーかむしろありがたいと思え。雷が多い年は米がよく穫れるって昔から言うだろーが」
「そ…それは知ってますけど怖いものは怖いんです!」
「ふーん。おめーがまだまだガキだっつーことだな」
「ぐっ…」
凪が薄く笑うと蒼は頬を膨らませて彼らに背を向けた。
と、同時に今日1番の激しい稲妻が空を走り、光が部屋いっぱいに入りこみ────荒々しい雷太鼓の音が響くと同時に、蒼の叫び声が室内でこだました。
「ぎいぃぃやぁぁぁ!!」
富橋にある花巻山のふもとには、一つの学園が建っている。
通っているのは美男美女ばかり。
しかし、彼らはただの生徒ではない。
姿は人間と変わらないが、正体は万物から生まれた精霊だ。普通の人間には見えない学園で思い思いに過ごしている。
精霊の、精霊による、精霊のための学園『八百万学園』。創立者であり理事長である太陽の女神、アマテラスが経営している。
学園の敷地内には寮があり、精霊たちは全員そこで寝泊まりをしている。
その中にある一番小さな寮は風紀委員のための寮。
彼らは表向きはただの風紀委員だが、裏の顔は対天災対策のための組織天神地祇だ。そのトップを務める凪をはじめ、彼らは並みを外れた美貌の持ち主。さらに能力や力量は平均を遥かに上回る。
その中の紅一点の麓は特別強いというわけではないが、あらゆるものの傷を癒すことができるという能力を買われ、入学と同時に風紀委員に入ることになった。
麓が山を下りてからもう4ヶ月が経とうとしている8月中旬。季節は夏真っ盛りだ。
人間界だと夏休みは7月下旬から8月いっぱいだが、八百万学園では7・8月が夏休み。
その間に精霊たちは久しぶりに故郷へ帰ったり、人間界での夏のイベントを満喫したり、友人同士で遠出をしたりする。麓も数週間前に、久しぶりに故郷である花巻山へ帰った。
自分の住処である頂上のツリーハウスがひどく懐かしかった。
迎えてくれた獣たちと近況報告をし合い、束の間の憩いの一時を過ごした。
彼女と同じように、凪以外の風紀委員のメンバーも自分の故郷へ帰ったのはもう7月の話。
後にこの寮に過ごしているメンバーで凪の故郷へちょっとした旅行へ行くことになっている。
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