Eternal Dear1

堂宮ツキ乃

文字の大きさ
8 / 22
2章

しおりを挟む
「なんっか見慣れないものには動物相手みたく心を開いてくれないみたいだし? 頑なに敬語が崩れないし? いや~こんなに扱い難しそうなコ、初めてだわ」

「風紀委員を見て動揺しない女の子とか滅多にいないのにね」

「でも簡単に堕とせる女の子よりさ、やっぱ凛としているのも良くね? 最近のコはほとんどアレだから。フツーに何人もの男と関わるじゃん。彼氏がいても」

「全くだ。古き良き日本の女性像はどこに行ってしまったんだろう。麓ちゃんみたいな女の子は絶対に堕としがいがあるね」

「だよな! そっちの方が燃える…萌える? モンがあるってのな! 嘆かわしいもんだ最近の軽い女子は…」

「…俺としてはおめーらの頭の方がよっぽど嘆かわしいわ」

 年寄りくささが混じっている霞と扇の女子談義を、凪はばっさりと言葉の刃で斬り捨てた。

  この2人はいつもそう。女の話ですぐに盛り上がる。

  話に一切ノってこなかった凪を、霞と扇はつまんなさそうに横目で見、ひそひそと話し始めた。

「あの男は相変わらず女に気をとられるってことがないわよね。自分は数多の女の心をとらえておきながら」

「遊びを知らないでよく500年も生きながらえているわね。私だったら無理よ。即死よ」

「聞こえてんぞ。おめーらみたいなヤツら、女遊びし過ぎてそのうち殺されっぞ」

 凪は呆れながらソファの上で足を組み直した。なおも話を続けようとする二人にイラッとしつつ、咳払いをした。

「あーとりあえず! 例の男装娘に対してこっちが既に女だって知っていることはくれぐれも言わないように! 間違えてもおめーら、"ちゃん"は付けんな。いいな?」

「はーい凪君しつもーん」

「言ってみろ」

きみって呼ぶのはいいですか!?」

「ンなモン自分で判断しやがれ」

 凪は横を向いて吐き捨て、また足を組み直して天井を見上げた。

(あいつも"山"そのものか…)



 実は凪は、アマテラスから事前に麓のことを頼まれていた。彼女がどんな精霊なのかも教えられている。

 食事も衣服も立ち居振舞いも────全てが和だと。

 人間とも精霊とも関わったことがないからどうすればいいのか分からない、内気な娘。

────なんで俺にそんなこと話してんスか。

────おぬしが麓に外の事、学園の事を教えてやっておくれ。わしは精霊の長じゃからの。あの娘だけを特別扱いするワケにはいかぬ。

────だからって俺? 焔とかの方がいいと思うけど。面倒見いいし、霞と扇と違って手ェ出すようなヤツじゃあるめーし。

────いーや。おぬしが適任じゃ。優しいだけじゃ麓のためにならぬ。時には厳しさも必要じゃろう。…度が過ぎてはいかんが。

────…チッ。なんで俺がひよっこ娘のお守りなんざしなきゃならねェんだ…。

────文句は受け付けぬぞ。これは命令ではない。個人的な頼みじゃ。これなら文句は無かろう?

  それだけ一方的に言い残していった女性、アマテラス。いたずらっぽい笑みを浮かべて"お願い事"だと話していた。

(内気…ねェ)

 麓の迎えで花巻山へ行き、話した時に見せたあの笑顔はなんだったのだろう。

 凪には、心から笑っているように見えた。

 麓のことを古くから知るアマテラスと獣たちにしか分からないのだろうか────箱入り娘ならぬ山入り娘の真の姿を。

(あーあ。仕事が増えたな…)

 凪はソファの上で呑気に欠伸をし、頭の後ろで腕を組んだ。

 春休みが半分過ぎた3月の中旬。

 外は寒いが窓に射し込む太陽の光は暖かい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【続編】ダイヤの指輪─先生と私の歩む未来─

七転び八起き
恋愛
◇こちらの作品は以下の作品の続編です。 「ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─」https://www.alphapolis.co.jp/novel/306629704/557024090 ◇あらすじ 主人公の水島白乃(みずしましの)と、婚約者の夏雄先生のその後の物語です。 まだちゃんとした夫婦になってない二人はどうなるのか。 そして、先生の従弟の遼が出会った不思議な女の子、篠山あやめ。彼女は遼にどう影響を与えるのか。 それぞれの未来が動き出す。 ◇前作のあらすじ◇ 主人公の水島白乃(みずしましの)は、高校三年生の時の担任の夏雄先生に恋をした。 卒業して再会した夏雄は別人のようだった。 夏雄の歪んだ愛、執着に翻弄される中、白乃はさらに夏雄に惹かれいく。 様々な困難を乗り越え、二人は結ばれた。

悪魔な義理弟《ボディーガード》~ヤンキー校最凶犬男子の独占欲が強過ぎる~

Kore
恋愛
「余計なこと考えさせないくらい愛せば、男として見てくれる?」そう囁く義弟の愛は重くて、危険で、究極に甘い。 ———勉強が大の苦手であり、巷で有名なヤンキー高校しか入れなかった宇佐美莉子。そんな義理姉のボディーガードになるため、後追いで入学してきた偏差値70以上の義理弟、宇佐美櫂理。しかし、ボディーガードどころか、櫂理があまりにも最強過ぎて、誰も莉子に近寄ることが出来ず。まるで極妻的存在で扱われる中、今日も義理弟の重い愛が炸裂する。———

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

#秒恋9 初めてのキスは、甘い別れと、確かな希望

ReN
恋愛
春休みが明け、それぞれに、新しい生活に足を踏み入れた悠里と剛士。 学校に向かう悠里の目の前に、1つ年下の幼なじみ アキラが現れる。 小学校時代に引っ越した彼だったが、高校受験をし、近隣の北高校に入学したのだ。 戻ってきたアキラの目的はもちろん、悠里と再会することだった。 悠里とアキラが再会し、仲良く話している とき、運悪く、剛士と拓真が鉢合わせ。 「俺には関係ない」 緊張感漂う空気の中、剛士の言い放った冷たい言葉。 絶望感に包まれる悠里に対し、拓真は剛士に激怒。 拗れていく友情をよそに、アキラは剛士をライバルと認識し、暴走していく―― 悠里から離れていく、剛士の本心は? アキラから猛烈なアピールを受ける悠里は、何を思う? いまは、傍にいられない。 でも本当は、気持ちは、変わらない。 いつか――迎えに来てくれる? 約束は、お互いを縛りつけてしまうから、口にはできない。 それでも、好きでいたい。 いつか、を信じて。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

能天気な私は今日も愛される

具なっしー
恋愛
日本でJKライフを謳歌していた凪紗は遅刻しそうになって全力疾走してたらトラックとバコーン衝突して死んじゃったー。そんで、神様とお話しして、目が覚めたら男女比50:1の世界に転生してたー!この世界では女性は宝物のように扱われ猿のようにやりたい放題の女性ばっかり!?そんな中、凪紗ことポピーは日本の常識があるから、天使だ!天使だ!と溺愛されている。この世界と日本のギャップに苦しみながらも、楽観的で能天気な性格で周りに心配される女の子のおはなし。 はじめて小説を書くので誤字とか色々拙いところが多いと思いますが優しく見てくれたら嬉しいです。自分で読みたいのをかいてみます。残酷な描写とかシリアスが苦手なのでかかないです。定番な展開が続きます。飽き性なので褒めてくれたら続くと思いますよろしくお願いします。 ※表紙はAI画像です

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

処理中です...