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2章
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「なんっか見慣れないものには動物相手みたく心を開いてくれないみたいだし? 頑なに敬語が崩れないし? いや~こんなに扱い難しそうなコ、初めてだわ」
「風紀委員を見て動揺しない女の子とか滅多にいないのにね」
「でも簡単に堕とせる女の子よりさ、やっぱ凛としているのも良くね? 最近のコはほとんどアレだから。フツーに何人もの男と関わるじゃん。彼氏がいても」
「全くだ。古き良き日本の女性像はどこに行ってしまったんだろう。麓ちゃんみたいな武家の娘って感じの女の子は絶対に堕としがいがあるね」
「だよな! そっちの方が燃える…萌える? モンがあるってのな! 嘆かわしいもんだ最近の軽い女子は…」
「…俺としてはおめーらの頭の方がよっぽど嘆かわしいわ」
年寄りくささが混じっている霞と扇の女子談義を、凪はばっさりと言葉の刃で斬り捨てた。
この2人はいつもそう。女の話ですぐに盛り上がる。
話に一切ノってこなかった凪を、霞と扇はつまんなさそうに横目で見、ひそひそと話し始めた。
「あの男は相変わらず女に気をとられるってことがないわよね。自分は数多の女の心をとらえておきながら」
「遊びを知らないでよく500年も生きながらえているわね。私だったら無理よ。即死よ」
「聞こえてんぞオネェトーク。おめーらみたいなヤツら、女遊びし過ぎてそのうち殺されっぞ」
凪は呆れながらソファの上で足を組み直した。なおも話を続けようとする二人にイラッとしつつ、咳払いをした。
「あーとりあえず! 例の男装娘に対してこっちが既に女だって知っていることはくれぐれも言わないように! 間違えてもおめーら、"ちゃん"は付けんな。いいな?」
「はーい凪君しつもーん」
「言ってみろ」
「君って呼ぶのはいいですか!?」
「ンなモン自分で判断しやがれ」
凪は横を向いて吐き捨て、また足を組み直して天井を見上げた。
(あいつも"山"そのものか…)
実は凪は、アマテラスから事前に麓のことを頼まれていた。彼女がどんな精霊なのかも教えられている。
食事も衣服も立ち居振舞いも────全てが和だと。
人間とも精霊とも関わったことがないからどうすればいいのか分からない、内気な娘。
────なんで俺にそんなこと話してんスか。
────おぬしが麓に外の事、学園の事を教えてやっておくれ。わしは精霊の長じゃからの。あの娘だけを特別扱いするワケにはいかぬ。
────だからって俺? 焔とかの方がいいと思うけど。面倒見いいし、霞と扇と違って手ェ出すようなヤツじゃあるめーし。
────いーや。おぬしが適任じゃ。優しいだけじゃ麓のためにならぬ。時には厳しさも必要じゃろう。…度が過ぎてはいかんが。
────…チッ。なんで俺がひよっこ娘のお守りなんざしなきゃならねェんだ…。
────文句は受け付けぬぞ。これは命令ではない。個人的な頼みじゃ。これなら文句は無かろう?
それだけ一方的に言い残していった女性、アマテラス。いたずらっぽい笑みを浮かべて"お願い事"だと話していた。
(内気…ねェ)
麓の迎えで花巻山へ行き、話した時に見せたあの笑顔はなんだったのだろう。
凪には、心から笑っているように見えた。
麓のことを古くから知るアマテラスと獣たちにしか分からないのだろうか────箱入り娘ならぬ山入り娘の真の姿を。
(あーあ。仕事が増えたな…)
凪はソファの上で呑気に欠伸をし、頭の後ろで腕を組んだ。
春休みが半分過ぎた3月の中旬。
外は寒いが窓に射し込む太陽の光は暖かい。
「風紀委員を見て動揺しない女の子とか滅多にいないのにね」
「でも簡単に堕とせる女の子よりさ、やっぱ凛としているのも良くね? 最近のコはほとんどアレだから。フツーに何人もの男と関わるじゃん。彼氏がいても」
「全くだ。古き良き日本の女性像はどこに行ってしまったんだろう。麓ちゃんみたいな武家の娘って感じの女の子は絶対に堕としがいがあるね」
「だよな! そっちの方が燃える…萌える? モンがあるってのな! 嘆かわしいもんだ最近の軽い女子は…」
「…俺としてはおめーらの頭の方がよっぽど嘆かわしいわ」
年寄りくささが混じっている霞と扇の女子談義を、凪はばっさりと言葉の刃で斬り捨てた。
この2人はいつもそう。女の話ですぐに盛り上がる。
話に一切ノってこなかった凪を、霞と扇はつまんなさそうに横目で見、ひそひそと話し始めた。
「あの男は相変わらず女に気をとられるってことがないわよね。自分は数多の女の心をとらえておきながら」
「遊びを知らないでよく500年も生きながらえているわね。私だったら無理よ。即死よ」
「聞こえてんぞオネェトーク。おめーらみたいなヤツら、女遊びし過ぎてそのうち殺されっぞ」
凪は呆れながらソファの上で足を組み直した。なおも話を続けようとする二人にイラッとしつつ、咳払いをした。
「あーとりあえず! 例の男装娘に対してこっちが既に女だって知っていることはくれぐれも言わないように! 間違えてもおめーら、"ちゃん"は付けんな。いいな?」
「はーい凪君しつもーん」
「言ってみろ」
「君って呼ぶのはいいですか!?」
「ンなモン自分で判断しやがれ」
凪は横を向いて吐き捨て、また足を組み直して天井を見上げた。
(あいつも"山"そのものか…)
実は凪は、アマテラスから事前に麓のことを頼まれていた。彼女がどんな精霊なのかも教えられている。
食事も衣服も立ち居振舞いも────全てが和だと。
人間とも精霊とも関わったことがないからどうすればいいのか分からない、内気な娘。
────なんで俺にそんなこと話してんスか。
────おぬしが麓に外の事、学園の事を教えてやっておくれ。わしは精霊の長じゃからの。あの娘だけを特別扱いするワケにはいかぬ。
────だからって俺? 焔とかの方がいいと思うけど。面倒見いいし、霞と扇と違って手ェ出すようなヤツじゃあるめーし。
────いーや。おぬしが適任じゃ。優しいだけじゃ麓のためにならぬ。時には厳しさも必要じゃろう。…度が過ぎてはいかんが。
────…チッ。なんで俺がひよっこ娘のお守りなんざしなきゃならねェんだ…。
────文句は受け付けぬぞ。これは命令ではない。個人的な頼みじゃ。これなら文句は無かろう?
それだけ一方的に言い残していった女性、アマテラス。いたずらっぽい笑みを浮かべて"お願い事"だと話していた。
(内気…ねェ)
麓の迎えで花巻山へ行き、話した時に見せたあの笑顔はなんだったのだろう。
凪には、心から笑っているように見えた。
麓のことを古くから知るアマテラスと獣たちにしか分からないのだろうか────箱入り娘ならぬ山入り娘の真の姿を。
(あーあ。仕事が増えたな…)
凪はソファの上で呑気に欠伸をし、頭の後ろで腕を組んだ。
春休みが半分過ぎた3月の中旬。
外は寒いが窓に射し込む太陽の光は暖かい。
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