死ぬのが怖くて勇者なんてやってられません

一縷

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勇者との遭遇

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ある街のギルドにて俺はいつものように適当な依頼書を見ていた。
「割りのいい依頼はねーかなー。」
すると受付嬢と揉めている1人の女性の声が聞こえてくる。
見ると、鎧を纏った赤マントの金髪碧眼の美少女が懸命に話していた。
「私は勇者ガルナ。実力のある冒険者を探しています。魔王討伐に手を貸してくれる正義感に溢れた方を。」
俺はそれを聴いて呆れて呟いた。
「そんなやつこのギルドにいるわけないだろ。何考えてんだ。」

冒険者たちの喧騒に紛れて男の言葉を耳にしたガルナは彼に静かに近づき、肩に手を置いた。
「おい、そんなこと言うなよ。俺は魔王討伐がしたいんだ。」
ガルナの目には一筋の不安が浮かんでいたがその表情には復讐心に満ちている。

「この街の冒険者にはな、そんな強い奴はいないんだよ。この辺のモンスターにすら苦戦するようなやつばっかだ。俺も含めてな。」
ガルナは一瞬、あなたを見つめた後、静かに微笑んだ。彼女の青い目には決意が宿っていた。
「そうかもしれないね。でも、だからこそ私はここにいるんだ。弱い人たちを守るために、強くなるんだ。」
彼女は腰に下げた銀色の剣の鞘をかそっと撫でた。
「私の母もかつてはこんなだったんだろうな。」

彼女は一歩前に出てあなたに手を差し伸べる。
「どうだろう、君、私と一緒に来ないか?わたしたちで魔王を討伐して世界を救おうじゃないか。」

俺は笑った。
「無理だよ。モンスターは強すぎる。普通の人じゃ倒すのなんて。」
ガルナはあなたを見つめ、少し悲しそうな表情を浮かべた。彼女の青い瞳に一瞬の揺らぎが見える。
「そうかもしれない。でも、だからこそ誰かが立ち上がらなきゃいけない。弱いものたちのために。」

彼女は一歩後退りして深呼吸した。
「私が勇者として選ばれたのはきっとこのためなんだ。みんなのために強くなりたい。」
ガルナの声には決意が込められている。

「それに1人じゃ無理かもしれないけど、一緒に頑張ればできるかもしれないだろう?」
彼女は再び俺に手を差し伸べる。
「わたしたちで世界を救おうよ。」
「なんで俺なんだよ。俺だって他の弱い奴らと一緒だ。」
ガルナは目を伏せ、その言葉に心が揺らいだ。彼女は深く息を吸い、ふちび顔をあげると瞳を輝かせて言った。

「だからこそ。強い人だけじゃなて、弱い人たちも一緒に立ち上がらなきゃいけないんだ。誰技最初の一歩を踏み出さないと何も変わらない。」

彼女はゆっくり俺に近づいて手を握ってきて言った。
「君は他の人とは違う。こんな強そうな格好をしている私に意見した。君は強いよ。心が。だから君の力が必要だ。私に力を貸してくれ。」

ガルナの声にはどこか懇願するような響きがあった。彼女が首から下げるペンダントが酒場の薄暗い光で微かに輝く。
「そんなこと言われてもな。俺スライムすら倒せないんだ。本当に弱いんだよ。」

ガルナは少し困ったように笑い、俺を見つめた。彼女の目にはどこか懐かし差が浮かんでいる。
「スライムを倒せないって...」
ガルナハ一度言葉を切った。
「私もね、最初スライム倒せなかったんだよ。村の近くに出る小さなモンスターにも手も足も出なくて。」

彼女は首に下げたペンダントを握り締め言った。
「でもね、諦めなかったよ。母さんが言ってたんだ。[どんなに小さくても一歩ずつ前に進めばいつか大きな力になる]って。」 
ガルナは俺に近づき優しく方を叩いた。
「だから一緒に前に進もうよ。君も強くなれる。」

「わかったよ。俺をスライムが倒せるくらいにしてくれたら考えてやらなくもない。」

ガルナは驚きの表情を浮かべたが、すぐに笑顔に変えた。
「本当かい?それなら簡単だよ。まずは基本の魔法を教えてあげるね。」

ガルナは手をかざし小さな光の玉を生み出した。その光は温かく、優しい輝きを放っていた。

「これ回復魔法だよ。まずはこれを覚えよう。スライムにやられてもすぐに治せて安心だよ。」

ガルナは目を輝かせていった。

「俺魔法使ったことないんだけど。誰にでも使えるものなのか?」

ガルナハ一瞬考える素振りを見せてから言った。
「大丈夫だよ。誰にでも使えるようになるはず。最初は難しいかもしれないけど、私がしっかりおしえてあげるから。魔法って心の力が大事なんだよ。君にはその力がある!」
首のペンダントを掴んで俺に近づけながら続ける。
「これ、お母さんからもらったものでいつも私に力をくれるんだ。君にも大切なものあるでしょ?それが力になるはずだよ。」

彼女は俺にやってみろと促してくる。

俺は手をかざし、魔法を試してみた。

「癒しをイメージするんだ。そう。その調子。」
俺は彼女がやっていたように手をかざす。すると、俺の手から淡い光が漏れ始めた。
ガルナの表情に驚きと喜びが浮かんだ。
「すごい!いい感じだよ!」
彼女の声には抑えきれない興奮が含まれていた。

しかし、次の瞬間俺は表情を歪ませた。光が消え、俺の手から光が消え、体が震えだす。

「大丈夫だよ焦らないで。魔法は一歩ずつ進んでいくものなんだから。最初から光が出せるなんてむしろすごいことだよ。私も最初できなかったけど諦めずに続けたから今があるんだ。」



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