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6章 突如、領地経営へ
選挙────開幕
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「さて…………と、これから皇女様の側近を決める選挙を執り行う。なお、この選挙は多数決ではなく、全会一致の形式を採る」
司会進行役の男────ホルツェがそう言った。ホルツェは、現皇女の側近だった男だ。全会一致の形をとるのは、選挙での不正を防ぐためだ。一人でも納得しない者がいれば、納得するまで話し合うのだ。
「では、早速だが、意見のあるものはいるか?」
「宜しいでしょうかな? ホルツェ伯爵」
そう言って挙手したのは、初老の男。体型はスリムで、何でもそつなくこなせそうな雰囲気さえ漂う。
「ユーム城伯、どうぞ」
「私は、ルミリア騎士伯がいいかと考えます」
「────その、根拠は?」
鋭い目でユームを見るホルツェ。
「ここ最近で力をつけてきておりますし、爵位を上げようかという話まで出ているとか。政治にも優れているとお聞きしていますので、皇女様の側近に一番ふさわしいかと」
「ふむ………他に意見のある者は?」
ホルツェが周りを見回しながら、そう尋ねる。
「少し発言、いいかね?」
挙手したのは、高慢な表情の男、ルーレッツ準男爵。
「私は、レリック子爵がいいかと思うのだ。根拠としては、状況に応じた適切な判断が巧みな点だ。実際、レリック子爵は、赤字に傾きかけた財政を、完全な黒字に回復させた実績がある」
ルーレッツ準男爵は、物怖じせずにそう言った。敬語を使わないあたり、この男の肝の座り方が知れる。
赤字に傾きかけた時点で、それはそれでどうかと思うが、この場でそれを突っ込む者はいなかった。
「他に意見のある者は?」
こうして、選挙────というよりかは話し合い────は進んでいくのだった。
◇◆◇◆◇
選挙を行っている最中の頃────。
「レ、レリック様、大変です!」
「どうした? そんなに慌てて」
一人の執事が執務室に入ってくるなり、そう言った。レリックは何事かと思い、尋ねる。
「これを見てください!」
執事は、入手して資料にまとめた情報をを見せる。
「ふーむ…………。私が脱税に粉飾決算、民に回すはずの金銭を一部横領した、と…………。ふん、でたらめにも程があるぞ」
「はい、そうなのですが────それが、号外で住民達に出回っているのです」
「そうか…………。この私を候補から落とすためにねぇ…………」
しかも、号外にある証拠の写真は、ご丁寧に文字まで偽装してあり、子爵印まで押してある。子爵印は本物だ。内部に流通者がいるのは、確実だ。
「まあ────大体検討はついているのだがな」
ぼそりと呟き、不敵に笑うレリック子爵。
「おい、ニウヴァ。例の物を用意しろ。ここで奴を、返り討ちにする」
「────例の物…………ああ、偽造した号外ですか。こちらも徹底的に対応していく訳ですね」
「そういうことだ。宜しく頼むぞ」
「はっ」
そう言うと、ニウヴァはその場を後にした。これも、作戦の一つだ。そこで聞いているのだろう? さあ、私の出世のいい手駒にでもなってくれ。
ニヤリ…………と不気味に笑う、レリックであった。
◇◆◇◆◇
コンコン
「ボーマン殿、宜しいか?」
木のドアを叩いてそう言うのは、ある一人の男。先程、レリック子爵とニウヴァの会話を盗み聞きしていた人物だ。
暫く待つと、カチャッとドアが開いた。中に入る男。中に入って、適当な席に座るなり、早速報告を始めた。
「────ほお。号外をばらまく────と見せかけて、実は裏で何かが動いていると」
「ああ。残念ながら、俺の『読心術』ではそこまでしか分からなかった」
「いや、そこまで分かれば十分だ。こっちも気づかれない程度に監視を増やせばいい。引き続き、宜しく頼むぞ────『T』」
「分かった」
Tと呼ばれたその男はそう頷いた。これが、この男の本当の名前とでも言えよう。今まで使っている名前は、全て偽名だ。
陰謀渦巻く選挙が、今まさに本当の幕を開けようとしていた────。
司会進行役の男────ホルツェがそう言った。ホルツェは、現皇女の側近だった男だ。全会一致の形をとるのは、選挙での不正を防ぐためだ。一人でも納得しない者がいれば、納得するまで話し合うのだ。
「では、早速だが、意見のあるものはいるか?」
「宜しいでしょうかな? ホルツェ伯爵」
そう言って挙手したのは、初老の男。体型はスリムで、何でもそつなくこなせそうな雰囲気さえ漂う。
「ユーム城伯、どうぞ」
「私は、ルミリア騎士伯がいいかと考えます」
「────その、根拠は?」
鋭い目でユームを見るホルツェ。
「ここ最近で力をつけてきておりますし、爵位を上げようかという話まで出ているとか。政治にも優れているとお聞きしていますので、皇女様の側近に一番ふさわしいかと」
「ふむ………他に意見のある者は?」
ホルツェが周りを見回しながら、そう尋ねる。
「少し発言、いいかね?」
挙手したのは、高慢な表情の男、ルーレッツ準男爵。
「私は、レリック子爵がいいかと思うのだ。根拠としては、状況に応じた適切な判断が巧みな点だ。実際、レリック子爵は、赤字に傾きかけた財政を、完全な黒字に回復させた実績がある」
ルーレッツ準男爵は、物怖じせずにそう言った。敬語を使わないあたり、この男の肝の座り方が知れる。
赤字に傾きかけた時点で、それはそれでどうかと思うが、この場でそれを突っ込む者はいなかった。
「他に意見のある者は?」
こうして、選挙────というよりかは話し合い────は進んでいくのだった。
◇◆◇◆◇
選挙を行っている最中の頃────。
「レ、レリック様、大変です!」
「どうした? そんなに慌てて」
一人の執事が執務室に入ってくるなり、そう言った。レリックは何事かと思い、尋ねる。
「これを見てください!」
執事は、入手して資料にまとめた情報をを見せる。
「ふーむ…………。私が脱税に粉飾決算、民に回すはずの金銭を一部横領した、と…………。ふん、でたらめにも程があるぞ」
「はい、そうなのですが────それが、号外で住民達に出回っているのです」
「そうか…………。この私を候補から落とすためにねぇ…………」
しかも、号外にある証拠の写真は、ご丁寧に文字まで偽装してあり、子爵印まで押してある。子爵印は本物だ。内部に流通者がいるのは、確実だ。
「まあ────大体検討はついているのだがな」
ぼそりと呟き、不敵に笑うレリック子爵。
「おい、ニウヴァ。例の物を用意しろ。ここで奴を、返り討ちにする」
「────例の物…………ああ、偽造した号外ですか。こちらも徹底的に対応していく訳ですね」
「そういうことだ。宜しく頼むぞ」
「はっ」
そう言うと、ニウヴァはその場を後にした。これも、作戦の一つだ。そこで聞いているのだろう? さあ、私の出世のいい手駒にでもなってくれ。
ニヤリ…………と不気味に笑う、レリックであった。
◇◆◇◆◇
コンコン
「ボーマン殿、宜しいか?」
木のドアを叩いてそう言うのは、ある一人の男。先程、レリック子爵とニウヴァの会話を盗み聞きしていた人物だ。
暫く待つと、カチャッとドアが開いた。中に入る男。中に入って、適当な席に座るなり、早速報告を始めた。
「────ほお。号外をばらまく────と見せかけて、実は裏で何かが動いていると」
「ああ。残念ながら、俺の『読心術』ではそこまでしか分からなかった」
「いや、そこまで分かれば十分だ。こっちも気づかれない程度に監視を増やせばいい。引き続き、宜しく頼むぞ────『T』」
「分かった」
Tと呼ばれたその男はそう頷いた。これが、この男の本当の名前とでも言えよう。今まで使っている名前は、全て偽名だ。
陰謀渦巻く選挙が、今まさに本当の幕を開けようとしていた────。
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