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9章 祝福

ついに

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 ヴァナフルトが消えた。速い。厄介なことこの上ない。


「『守る』!」


 レクスは自分から離れたところに障壁を展開。そうすることで、レクス達に伝わる衝撃を減らそうという算段だ。


 すると─────ヴァナフルトの動きが少し乱れた気がした。だが、障壁はかわされてしまった。


「そっか……………こういう使い方もできるのか」


 ただ文字通り『守る』だけでなく、相手を妨害するという使い方。もしかすると、他のスキルも同じように別の用途で使えるかもしれない─────


 そんなことを考えていると─────ヴァナフルトが再び動き出す。聖剣が分裂したので、恐らく『分裂剣』だろう────なんてのんきに考えている余裕などないのだが。


「『麻痺の呪縛・極』!」


 ヴァナフルトの動きが少しでも止められればベストである。ついでに『毒の呪縛・極』もヴァナフルトにかけておく。果たして、ヴァナフルトの動きは──────


「……………止まってない」


 効いていなかった。ヴァナフルトのスキルに状態以上無効系統のスキルなんてなかったはずだ。




ドゴオォォォォォ──────!!





「くっ……………!」


 ヴァナフルトはどうやらレクスを狙っているらしい。レクスは大きく後ろに跳躍してそれを避けた。聖剣の近くにいれば、その衝撃を受けかねないからだ。


「……………っていうか、いくら攻撃力が高くてもこんな壊れ方するかな…………?」


 ダンジョンの床の壊れ方が異常なのだ。聖剣触れたところ一帯が盛り上がるように壊れている。それも、結構広範囲で。




◇『破砕剣』はパッシブスキルです。記し忘れてました。てへっ♪




「………………軽」


 なんともステータスらしい? 口調。少しは申し訳なさそうにして欲しいものである。まあ、教えてもらったところで今さら役に立たないのだが。




◇役に立たないなんてひどいです!




「……………………」


 レクスはステータスの表示を無視した。それどころじゃないし、わりとやばいのだ。構ってあげる余裕なんてない。ステータスがしょんぼりしているような気がしたが、きっと気のせいだ。


「みんな、いくよ!!」


 レクスの言葉にみんなはそれぞれ力強く頷く。ヴァナフルトの動きは依然として止まらない。それどころか、加速すらしている気がする。だが、問題ない。


「『視界遮断デッドアウト』!!」


 黒属性魔法、『視界遮断デッドアウト』。その名の通り、黒い霧がヴァナフルトの目の辺りに纏わりつく。素早く移動するヴァナフルトに纏わり続ける。


「……………『豪咆オウゴー・ツロウ』」


 エレナが無詠唱で魔法を発動。大きく地を揺らすような衝撃が生み出され、動きが少々鈍ったヴァナフルトに直撃。見事に鎧にヒビが入り───────ペキイイィィィン! と割れた。


「『八連撃』!」


「しっちゃん、スラちゃん!」


「『黒竜の顎』なのだ!」


「『大水槍ラージウォーターシュペーア』ー!」


「わが手元に集いて……………『雷豪円まじライトニングサークル』!」


「『巨土柱ビッグアースピラー』!」


 総攻撃が鎧を破壊されたヴァナフルトに襲いかかる。当然、攻撃を受けたヴァナフルトは一溜りもない。総攻撃による衝撃と煙が収まったときには─────ヴァナフルトはいなかった。


「ふぅ…………」


 レクスはやりきったというように額の汗を腕で拭った。
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