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50.わざと呼ばなかったのよ
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「オスカル様のご実家、グラセス伯爵家のことね」
伯爵家へ降格になる話は聞いていた。お母様は「伯爵家」と言い切ったので、どうやらすでに宣言されたみたい。
「ティナ、覚えておくといいわ。カルレオン帝国の公爵位は、最大3つまでなの。グラセスが降格し、エリサリデが陞爵する。残る公爵家は2つよ」
お祖母様が説明する内容に、驚いた。グラセス公爵家は、当主の妻が皇女のため、その孫まで公爵位を保つことが可能だった。その状況で降嫁した皇女が亡くなり、長男が爵位を継承した。
代替わりしたオスカルの兄は、娶った先妻である侯爵令嬢を病で失う。後妻に入った女性は伯爵家の出だが、本来はそのまま公爵家を名乗れたらしい。
長男の娘である公爵令嬢リリアナまで、爵位は継承されるはずだった。実際、エリサリデ公爵家も、ナサニエルの代まで公爵を名乗れる。その間に功績があれば爵位は維持され、逆に失態を重ねれば降格もあり得るのだ。
「エリサリデが公爵になったから、自動的に下ろされたのですか?」
それは気の毒なことだわ。そう感じた私の発言に、お祖母様は首を横に振る。
「いいえ、あの家は愚かにも皇帝の血族であるリリアナを虐待したわ」
言われてはっとした。そうよ、リリアナは虐待され、家を継ぐ予定がなかった次男のオスカル様が救い出した。逃げた先がアルムニア大公家だもの。
「公爵家は3つと言ったでしょう? 不思議なことにね、新しい公爵家が4番目に入ろうとすると、どこかの家が降格するのよ」
失態を犯した場合だけでなく、継承できる三代を終えた家も含まれる。大抵は侯爵になるが、大きく信用を失墜させた家は伯爵まで位を落とした。今回のグラセス家が、この事例に該当する。
「ご先祖様の思し召しかしら」
お母様が肩を竦める。頬がかなり赤いので、量を飲んだ様子。それでも赤ワインのグラスを頼んでいるわ。侍従が一礼して、グラスごと交換した。家で飲む時もだけれど、お酒はグラスごと、お茶は注ぎ足すのがマナーだった。
「では、今回参加なさらなかったのは」
ちらりと視線をお祖父様へ向ける。ナサニエルに夢中のお祖父様は、ひいお祖父様と競うように玩具を鳴らした。
「わざと呼ばなかったのよ」
お祖母様はグラスを侍従に返し、水の入ったコップを受け取った。もう飲酒は終わりにするみたい。
「国内の主要な貴族が集まった夜会に呼ばれない。これがどれだけ不名誉なことか、ティナも知っているわね?」
「はい」
皇帝陛下が臣下として認めていないと言うも同然の処置だった。罰と言い換えることも出来る。
「参加した貴族は理解したはず。グラセス家が伯爵になり、皇族に準じる存在ではなくなったと。知らしめる意味もあったのよ」
今回の夜会は、様々な意味が込められていた。呼び戻した第三皇女フェリシアが、エリサリデ公爵家を興すこと。愚かなモンテシーノス王国の顛末。皇帝の怒りを買ったグラセス家の没落。リリアナを連れて養子縁組した次期大公オスカルのお披露目。盛りだくさんだった。
「どうせ開く夜会だもの。一度に済ませたら楽でしょう?」
うふふと笑うお祖母様は、平然として酔っていないように見えた。でも……話し終えて立ち上がった途端によろける。
思ったより酔ってらしたみたい。支えたお母様が苦笑いし、慌てて駆け寄ったお祖父様が抱き締める。そのまま肩を抱いて退室した。大丈夫かしら。
「お母様はリリアナを可愛がっていたから、複雑なのでしょうね」
飲みすぎてしまうくらい、感情を揺さぶられたのね。お母様の呟きに頷いた直後、お父様がオスカル様と戻ってきた。
伯爵家へ降格になる話は聞いていた。お母様は「伯爵家」と言い切ったので、どうやらすでに宣言されたみたい。
「ティナ、覚えておくといいわ。カルレオン帝国の公爵位は、最大3つまでなの。グラセスが降格し、エリサリデが陞爵する。残る公爵家は2つよ」
お祖母様が説明する内容に、驚いた。グラセス公爵家は、当主の妻が皇女のため、その孫まで公爵位を保つことが可能だった。その状況で降嫁した皇女が亡くなり、長男が爵位を継承した。
代替わりしたオスカルの兄は、娶った先妻である侯爵令嬢を病で失う。後妻に入った女性は伯爵家の出だが、本来はそのまま公爵家を名乗れたらしい。
長男の娘である公爵令嬢リリアナまで、爵位は継承されるはずだった。実際、エリサリデ公爵家も、ナサニエルの代まで公爵を名乗れる。その間に功績があれば爵位は維持され、逆に失態を重ねれば降格もあり得るのだ。
「エリサリデが公爵になったから、自動的に下ろされたのですか?」
それは気の毒なことだわ。そう感じた私の発言に、お祖母様は首を横に振る。
「いいえ、あの家は愚かにも皇帝の血族であるリリアナを虐待したわ」
言われてはっとした。そうよ、リリアナは虐待され、家を継ぐ予定がなかった次男のオスカル様が救い出した。逃げた先がアルムニア大公家だもの。
「公爵家は3つと言ったでしょう? 不思議なことにね、新しい公爵家が4番目に入ろうとすると、どこかの家が降格するのよ」
失態を犯した場合だけでなく、継承できる三代を終えた家も含まれる。大抵は侯爵になるが、大きく信用を失墜させた家は伯爵まで位を落とした。今回のグラセス家が、この事例に該当する。
「ご先祖様の思し召しかしら」
お母様が肩を竦める。頬がかなり赤いので、量を飲んだ様子。それでも赤ワインのグラスを頼んでいるわ。侍従が一礼して、グラスごと交換した。家で飲む時もだけれど、お酒はグラスごと、お茶は注ぎ足すのがマナーだった。
「では、今回参加なさらなかったのは」
ちらりと視線をお祖父様へ向ける。ナサニエルに夢中のお祖父様は、ひいお祖父様と競うように玩具を鳴らした。
「わざと呼ばなかったのよ」
お祖母様はグラスを侍従に返し、水の入ったコップを受け取った。もう飲酒は終わりにするみたい。
「国内の主要な貴族が集まった夜会に呼ばれない。これがどれだけ不名誉なことか、ティナも知っているわね?」
「はい」
皇帝陛下が臣下として認めていないと言うも同然の処置だった。罰と言い換えることも出来る。
「参加した貴族は理解したはず。グラセス家が伯爵になり、皇族に準じる存在ではなくなったと。知らしめる意味もあったのよ」
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「どうせ開く夜会だもの。一度に済ませたら楽でしょう?」
うふふと笑うお祖母様は、平然として酔っていないように見えた。でも……話し終えて立ち上がった途端によろける。
思ったより酔ってらしたみたい。支えたお母様が苦笑いし、慌てて駆け寄ったお祖父様が抱き締める。そのまま肩を抱いて退室した。大丈夫かしら。
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