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本編
第44話 終わってから顔を出す者達
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幾重にも施した魔法陣をひとつずつ解除していく。復元が終わった場所に埋め込んでいた透明の魔法陣が姿を現し、すぐに消滅した。少し考えて、いくつか魔法陣を新しく設置する。
魔力を常に供給するタイプではなく、必要に応じて発動させるタイプを仕掛けると満足気に頷いた。見回す室内は昨日の会議後の状態に復元している。足元に落ちたゴミまで復元していたことに気づき、苦笑いして拾い上げて燃やした。
「終わったか?」
「いい御身分ですね、陛下」
メフィストの形の良い指先が眼鏡を押し上げる。口調や言葉に棘があるのも仕方ないだろう。面倒な蛇を相手にしながら仕事を終えた部下は、婚約者の腰を抱いて現れた上司に文句を言う権利くらい与えられるべきだ。イヴリースも同じように考えたのか、肩を竦めて返答を避けた。
「あの……直していただき、ありがとうございます」
爆発直後の様子を見ているため、アゼリアは丁寧に礼を言った。空中で腰を抱かれているため、両手はイヴリースの首に回ったままだ。多少情けない姿だが、礼を後回しにする理由にならなかった。真面目なアゼリアの言葉に目を見開き、メフィストは眼鏡を外して一礼する。
「お気になさらず」
「オレにもそのくらい優しく接してもらいたいものだ」
「これ以上なく優しいでしょう?」
嫌味を嫌味で返され、イヴリースは溜め息をついた。ちらっと視線で黒幕の存在を確認し合った2人をよそに、アゼリアは浮いた足元が怖い。ずるずると身体を滑らせて足元に飛び降りる機会を狙っていた。飛び降りようと首から手を離すが、すぐにイヴリースが抱きかかえた。
「危ないだろう、我が愛しの婚約者殿。ケガをしたらどうする」
「降ろしてくださいません?」
直球で問いかけたアゼリアに微笑み、2人の両足が着地した瞬間……見ていたように扉が開いた。駆け込んだアウグストが唸る。
可愛い愛娘の細い腰を当然のように抱き寄せる男に襲い掛かりたいが、妻と娘に叱られる。柄頭にかけた指がぎりぎりの心境を示して、剣の柄を握っては離すを繰り返した。
「お父様!」
「あ、アゼリア。身体は大丈夫か? どこか痛かったり苦しくはないか?」
矢継ぎ早に問いかける父の混乱した姿に、イヴリースの手を離したアゼリアが駆けだす。手を広げて受け止めた父が、ぎこちなく娘の肩に触れた。年頃の娘なので触る場所に気を使っているのだろう。困ったあと、抱き寄せた娘の赤毛を撫で始めた。
「平気よ。イヴリースが治してくれたわ」
「そうか」
嬉しそうなアゼリアの微笑みと言葉に、魔王に可愛い娘を奪われるのだと実感したアウグストは複雑な心境で眉を寄せる。いつか手放す日が来ると知っていた。あの王太子よりマシだが……王家との婚約を理由を付けて解消してずっと一緒に暮らそう! その思惑は儚く消えかけていた。
アゼリアの幸せが一番と自分を納得させながら、アウグストは顔を上げる。愛おしそうな眼差しで娘を見つめる魔王――彼に娘を渡す? やっぱり無理だ。絶対に嫌だ。アゼリアは手元で笑っていて欲しい。遠い魔国に嫁がせるなど許せない。
ぎりりと歯を食いしばったアウグストの鋭い眼差しに反応することなく、イヴリースは艶やかな婚約者に釘付けだった。
魔力を常に供給するタイプではなく、必要に応じて発動させるタイプを仕掛けると満足気に頷いた。見回す室内は昨日の会議後の状態に復元している。足元に落ちたゴミまで復元していたことに気づき、苦笑いして拾い上げて燃やした。
「終わったか?」
「いい御身分ですね、陛下」
メフィストの形の良い指先が眼鏡を押し上げる。口調や言葉に棘があるのも仕方ないだろう。面倒な蛇を相手にしながら仕事を終えた部下は、婚約者の腰を抱いて現れた上司に文句を言う権利くらい与えられるべきだ。イヴリースも同じように考えたのか、肩を竦めて返答を避けた。
「あの……直していただき、ありがとうございます」
爆発直後の様子を見ているため、アゼリアは丁寧に礼を言った。空中で腰を抱かれているため、両手はイヴリースの首に回ったままだ。多少情けない姿だが、礼を後回しにする理由にならなかった。真面目なアゼリアの言葉に目を見開き、メフィストは眼鏡を外して一礼する。
「お気になさらず」
「オレにもそのくらい優しく接してもらいたいものだ」
「これ以上なく優しいでしょう?」
嫌味を嫌味で返され、イヴリースは溜め息をついた。ちらっと視線で黒幕の存在を確認し合った2人をよそに、アゼリアは浮いた足元が怖い。ずるずると身体を滑らせて足元に飛び降りる機会を狙っていた。飛び降りようと首から手を離すが、すぐにイヴリースが抱きかかえた。
「危ないだろう、我が愛しの婚約者殿。ケガをしたらどうする」
「降ろしてくださいません?」
直球で問いかけたアゼリアに微笑み、2人の両足が着地した瞬間……見ていたように扉が開いた。駆け込んだアウグストが唸る。
可愛い愛娘の細い腰を当然のように抱き寄せる男に襲い掛かりたいが、妻と娘に叱られる。柄頭にかけた指がぎりぎりの心境を示して、剣の柄を握っては離すを繰り返した。
「お父様!」
「あ、アゼリア。身体は大丈夫か? どこか痛かったり苦しくはないか?」
矢継ぎ早に問いかける父の混乱した姿に、イヴリースの手を離したアゼリアが駆けだす。手を広げて受け止めた父が、ぎこちなく娘の肩に触れた。年頃の娘なので触る場所に気を使っているのだろう。困ったあと、抱き寄せた娘の赤毛を撫で始めた。
「平気よ。イヴリースが治してくれたわ」
「そうか」
嬉しそうなアゼリアの微笑みと言葉に、魔王に可愛い娘を奪われるのだと実感したアウグストは複雑な心境で眉を寄せる。いつか手放す日が来ると知っていた。あの王太子よりマシだが……王家との婚約を理由を付けて解消してずっと一緒に暮らそう! その思惑は儚く消えかけていた。
アゼリアの幸せが一番と自分を納得させながら、アウグストは顔を上げる。愛おしそうな眼差しで娘を見つめる魔王――彼に娘を渡す? やっぱり無理だ。絶対に嫌だ。アゼリアは手元で笑っていて欲しい。遠い魔国に嫁がせるなど許せない。
ぎりりと歯を食いしばったアウグストの鋭い眼差しに反応することなく、イヴリースは艶やかな婚約者に釘付けだった。
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