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本編
第118話 帰ったらやります、は信用ゼロ
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半年しかない準備期間に、メフィストは焦っていた。魔王イヴリースの式典用衣装の採寸は終わっているため、すぐに婚礼用の衣装の製作に取り掛からせる。対でデザインさせたアゼリア姫の衣装に、問題が生じた。
まず、魔国での婚礼衣装は黒が主流だ。しかし獣人には淡い緑色が好まれ、人間は白を選ぶ。色がバラバラすぎて、アゼリアやイヴリースの意見を聞かないと話が進まなかった。
目の前に大量に積まれた未処理書類を眺め、メフィストは徹夜を覚悟する。仕方ない。昼間のうちに魔王の元へ赴き、話を決めてこなくては……無駄にできる日など1日もなかった。
「陛下の元へ行ってきます」
部下に端的に要件を伝えた途端、半泣きで書類の山を指さされた。
「何を仰ってるんですか! 間に合いませんよ、あの処理はどうするんです!? 明日の朝が期限です」
「帰ったらやります」
「陛下みたいな逃げ口上はやめてください!!」
心外ですね。本当に失礼な言い回しだが……イヴリースは時々書類を放り出して逃げる。毎回「帰ったらやる」と言った。それが部下達の耳に残っているのだろう。後でやるはやらないと同意語、そうインプットされた部下に言い聞かせた。
「いいですか? その大きな耳でよく聞きなさい。私は陛下と違って、約束は守ります」
「……ぐすっ、本当ですね? 絶対ですね?」
もちろんだと頷いたメフィストが転移魔法陣を描き、発動する寸前、部下の漏らした何気ない一言が刺さった。
「今の、陛下への不敬罪?」
反論する前に飛ばされたが、まあ問題ない。陛下と違うのも本当だし、あの人が書類に関する約束を3回に1回は嘘で逃げるのも事実だ。転移した先は、魔王の魔力から少し離れた地点にした。目の前に転移した時にアゼリア姫を抱き寄せていたら、攻撃される可能性があるからだ。魔王の嫉妬に駆られた一撃は、メフィストでも致命傷になり得る。
客間から窓の方へ向かって置かれたソファに、イヴリースが腰掛け、その膝の上に横抱きされたアゼリア姫が見えた。仲睦まじい様子は結構だが、書類や雑務に追われる自分との落差に気分は下降する。手伝えと言いたい気持ちを飲み込み、庭を眺める彼らの前で一礼した。
「陛下、アゼリア姫、婚礼の衣装についてご相談に伺いました」
空中から取り出した婚礼用の衣装デザインを差し出す。受け取ったのは、アゼリア姫だった。対でデザインしたため、双方の衣装が描かれた絵をじっくり眺め、1枚目を捲った。布の材質や地模様について書かれた2枚目を読み終えると、3枚目の刺繍の図柄に目を通す。アゼリアの肩に顎を乗せ、イヴリースも内容を読み始めた。
執務の際もこの形にしたら、執務の質が上がるかもしれませんね。妃の仕事として、アゼリアに提案してしまおう。メフィストは狡い策を練りながら、表面上は微笑んで先を促した。
4枚目は服に縫い付ける宝石の量とサイズや位置の指定、5枚目に王冠、6枚目に耳飾りや首飾りのデザイン画、7枚目で羽織るマントについて記された。そこまで読み終えると顔を上げる。
「何か問題があったか?」
「アゼリア姫の衣装の色でございます。人間は白、獣人は緑、魔族は黒ですが……どうなさいますか?」
「嫁ぐんだから黒でいいわ」
「何を言う! 美しいアゼリアの艶姿の披露なのだ、全部だ!!」
「「全部|(ですか)?」」
期せずしてメフィストとアゼリアがハモった。
まず、魔国での婚礼衣装は黒が主流だ。しかし獣人には淡い緑色が好まれ、人間は白を選ぶ。色がバラバラすぎて、アゼリアやイヴリースの意見を聞かないと話が進まなかった。
目の前に大量に積まれた未処理書類を眺め、メフィストは徹夜を覚悟する。仕方ない。昼間のうちに魔王の元へ赴き、話を決めてこなくては……無駄にできる日など1日もなかった。
「陛下の元へ行ってきます」
部下に端的に要件を伝えた途端、半泣きで書類の山を指さされた。
「何を仰ってるんですか! 間に合いませんよ、あの処理はどうするんです!? 明日の朝が期限です」
「帰ったらやります」
「陛下みたいな逃げ口上はやめてください!!」
心外ですね。本当に失礼な言い回しだが……イヴリースは時々書類を放り出して逃げる。毎回「帰ったらやる」と言った。それが部下達の耳に残っているのだろう。後でやるはやらないと同意語、そうインプットされた部下に言い聞かせた。
「いいですか? その大きな耳でよく聞きなさい。私は陛下と違って、約束は守ります」
「……ぐすっ、本当ですね? 絶対ですね?」
もちろんだと頷いたメフィストが転移魔法陣を描き、発動する寸前、部下の漏らした何気ない一言が刺さった。
「今の、陛下への不敬罪?」
反論する前に飛ばされたが、まあ問題ない。陛下と違うのも本当だし、あの人が書類に関する約束を3回に1回は嘘で逃げるのも事実だ。転移した先は、魔王の魔力から少し離れた地点にした。目の前に転移した時にアゼリア姫を抱き寄せていたら、攻撃される可能性があるからだ。魔王の嫉妬に駆られた一撃は、メフィストでも致命傷になり得る。
客間から窓の方へ向かって置かれたソファに、イヴリースが腰掛け、その膝の上に横抱きされたアゼリア姫が見えた。仲睦まじい様子は結構だが、書類や雑務に追われる自分との落差に気分は下降する。手伝えと言いたい気持ちを飲み込み、庭を眺める彼らの前で一礼した。
「陛下、アゼリア姫、婚礼の衣装についてご相談に伺いました」
空中から取り出した婚礼用の衣装デザインを差し出す。受け取ったのは、アゼリア姫だった。対でデザインしたため、双方の衣装が描かれた絵をじっくり眺め、1枚目を捲った。布の材質や地模様について書かれた2枚目を読み終えると、3枚目の刺繍の図柄に目を通す。アゼリアの肩に顎を乗せ、イヴリースも内容を読み始めた。
執務の際もこの形にしたら、執務の質が上がるかもしれませんね。妃の仕事として、アゼリアに提案してしまおう。メフィストは狡い策を練りながら、表面上は微笑んで先を促した。
4枚目は服に縫い付ける宝石の量とサイズや位置の指定、5枚目に王冠、6枚目に耳飾りや首飾りのデザイン画、7枚目で羽織るマントについて記された。そこまで読み終えると顔を上げる。
「何か問題があったか?」
「アゼリア姫の衣装の色でございます。人間は白、獣人は緑、魔族は黒ですが……どうなさいますか?」
「嫁ぐんだから黒でいいわ」
「何を言う! 美しいアゼリアの艶姿の披露なのだ、全部だ!!」
「「全部|(ですか)?」」
期せずしてメフィストとアゼリアがハモった。
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