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本編
第123話 国境を跨ぐ敵を殲滅せよ
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脅し宥めすかして頭数を揃えた。滅亡寸前のユーグレース国は北の端、それより先は異形の地だ。人間が治める国はユーグレースを入れて、現在21カ国だった。数が多すぎるとぼやいたのはベリル国、その真意は無駄に数ばかり増えた周辺の穏やかならざる政情を嘆いている。
ひとつの国がクーデターで倒れると、3つほどに分裂した。王族支持派、平民を束ねる改革派、独立した有力貴族派が主な展開だ。時折、貴族派の数が分裂したり、王族派が潰されたりと変化があった。その度に地図を書き換えるベリルとしては、いい加減にして欲しかった。
表敬訪問という名目で訪ねてきて、なんとか姫や王太子以外の王子と縁を結ぼうとする。自分達の国の政権争いに、大国を巻き込もうとする思惑が透けていた。そのくらいならば、自国の勢力をまとめ上げる方が先だろう。鼻で笑って跳ね除けるベリル国は、最南端の国家だ。
ユーグレースと国交があるのが不思議な位置だが、数世代前から付き合いがあった。王家ではなく、宰相を務めるへーファーマイアー公爵家との繋がりゆえに、ベリル国は北の情勢も詳しい。
アゲート国をはじめとする小国は勘違いしている。最南端の海に面した土地のほとんどを支配するベリルは、地の利だけで君臨してきたわけではない。むしろ海があるからこそ、軍備は整えられていた。勝手に生まれては消える小国に粉をかけられるたび、群がる羽虫を追い払ってきた強国なのだ。
「来るか」
「間違いなく」
兄王に王弟は頷いた。腹違いであっても、母親同士は仲が良い。2人を含めた他の兄弟姉妹も、王妃と側妃の生まれの差はなく一緒に育てられた。公的な場でなければ、互いに愛称で呼び口調も砕けるほどだ。
「どのくらいかな」
まだ幼さの残る末の弟王子に、歳の離れた兄達はひとつ質問をする。
「お前ならどうする?」
「現在動いた国家の数は13だ」
考える上での前提条件を口にする。地図を見せて、各国の位置にピンを刺して示した。人間の国はクリスタ国を含め21、崩壊したユーグレースと自国ベリル、クリスタを除き18、そして動いたのは13。だが残った5つの国がどう動くのか、まだ判断材料はなかった。
「そうですね。僕なら……13国すべてを北に向かったと思わせ、全力でこの国に攻撃を仕掛けます」
「理由は?」
なかなか面白い視点を持つ末っ子に、兄王が尋ねる。考えながら言葉を選び、末王子は口を開いた。
「クリスタ国の戦力が不明です。魔国や獣国が軍を置いている可能性を思えば、迂闊に攻められません。でしたら、後ろが海で逃げられないベリル国を襲って吸収してから、クリスタを狙います」
平時の海は恵みだ。だが荒れ狂えば国を削り、戦になれば、逃げ道がなかった。海は背を守るのではなく、撤退を許さぬ状況に追い込むのだ。この案は末っ子が優秀である証明であり、アゲートが盟主である時点で成立しない仮定だった。しかし、残った5つの国は襲ってくるかも知れない。
「戦略の教師は誰だった?」
褒める兄王が頬を緩めて、息子ほども歳の離れた末王子の頭を撫でる。擽ったそうにしながらも、素直に受ける弟の脇に立ち、仰々しく一礼したのは王弟クリストフだった。
「陛下、私が戦略講義を担当いたしました」
「ならば褒美をやらねばならぬか」
兄達の三文芝居にくすくす笑う末っ子を交え、彼らは戦略談義に花を咲かせた。そして日が暮れる頃、ようやく兄王の決断が下だる。国境を跨ぐ敵を殲滅せよ――その命令は、国に散らばるすべての軍人へ届けられた。
ひとつの国がクーデターで倒れると、3つほどに分裂した。王族支持派、平民を束ねる改革派、独立した有力貴族派が主な展開だ。時折、貴族派の数が分裂したり、王族派が潰されたりと変化があった。その度に地図を書き換えるベリルとしては、いい加減にして欲しかった。
表敬訪問という名目で訪ねてきて、なんとか姫や王太子以外の王子と縁を結ぼうとする。自分達の国の政権争いに、大国を巻き込もうとする思惑が透けていた。そのくらいならば、自国の勢力をまとめ上げる方が先だろう。鼻で笑って跳ね除けるベリル国は、最南端の国家だ。
ユーグレースと国交があるのが不思議な位置だが、数世代前から付き合いがあった。王家ではなく、宰相を務めるへーファーマイアー公爵家との繋がりゆえに、ベリル国は北の情勢も詳しい。
アゲート国をはじめとする小国は勘違いしている。最南端の海に面した土地のほとんどを支配するベリルは、地の利だけで君臨してきたわけではない。むしろ海があるからこそ、軍備は整えられていた。勝手に生まれては消える小国に粉をかけられるたび、群がる羽虫を追い払ってきた強国なのだ。
「来るか」
「間違いなく」
兄王に王弟は頷いた。腹違いであっても、母親同士は仲が良い。2人を含めた他の兄弟姉妹も、王妃と側妃の生まれの差はなく一緒に育てられた。公的な場でなければ、互いに愛称で呼び口調も砕けるほどだ。
「どのくらいかな」
まだ幼さの残る末の弟王子に、歳の離れた兄達はひとつ質問をする。
「お前ならどうする?」
「現在動いた国家の数は13だ」
考える上での前提条件を口にする。地図を見せて、各国の位置にピンを刺して示した。人間の国はクリスタ国を含め21、崩壊したユーグレースと自国ベリル、クリスタを除き18、そして動いたのは13。だが残った5つの国がどう動くのか、まだ判断材料はなかった。
「そうですね。僕なら……13国すべてを北に向かったと思わせ、全力でこの国に攻撃を仕掛けます」
「理由は?」
なかなか面白い視点を持つ末っ子に、兄王が尋ねる。考えながら言葉を選び、末王子は口を開いた。
「クリスタ国の戦力が不明です。魔国や獣国が軍を置いている可能性を思えば、迂闊に攻められません。でしたら、後ろが海で逃げられないベリル国を襲って吸収してから、クリスタを狙います」
平時の海は恵みだ。だが荒れ狂えば国を削り、戦になれば、逃げ道がなかった。海は背を守るのではなく、撤退を許さぬ状況に追い込むのだ。この案は末っ子が優秀である証明であり、アゲートが盟主である時点で成立しない仮定だった。しかし、残った5つの国は襲ってくるかも知れない。
「戦略の教師は誰だった?」
褒める兄王が頬を緩めて、息子ほども歳の離れた末王子の頭を撫でる。擽ったそうにしながらも、素直に受ける弟の脇に立ち、仰々しく一礼したのは王弟クリストフだった。
「陛下、私が戦略講義を担当いたしました」
「ならば褒美をやらねばならぬか」
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