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本編
83.つじつまが合わない情報
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「変ねぇ」
肘をついた行儀の悪い姿勢で、バルバラは唸った。叔父のジーモンから得た情報によれば、クンケル伯爵の後ろにはウテシュ王国がいると。
「つじつまが合わないのよね」
王太子が金を湯水のごとく使い込んだ、その噂は半分ほど本当だった。ただ、広まった時期がおかしい。すでに去勢して捨てた元王太子ニクラウスについては、別の噂のほうが有名だった。自称聖女のリリーを使って、金を稼ごうとして失敗した件だ。
腹を焼かれて子が出来ないならちょうどいいとばかり、娼婦にしようとした。個人的に客を取れば金が入って来ると思ったようだが、娼館の客は信用を買う。きちんと情報を制御され、衛生管理がされた宿だから金を払うのだ。通りすがりの道端で客を引く娼婦など、危険すぎて選ばない。
金を踏み倒すような悪客ばかり引いた挙句、自称聖女は狂って街を徘徊した。すぐに衛兵に確保され、王都の外へ捨てられたと聞く。そんな迷惑な存在なら、牢へ隔離してくれたらいいのに。バルバラがぼやいたのは、ほんの数日前だった。
元王太子ニクラウスの追跡は行わせているが、浮浪者の集落に転がり込んだらしい。
「よう、新しい情報あるか?」
「そういう聞き方は好きじゃないわ」
もっと包んで聞きなさいよ。溜め息をついてジーモンを見上げた。裏口から勝手に入って来る彼は、勝手知ったる娼館の常連だ。金払いのいい客だが、女達ではなく情報面だけ。バルバラの裏の仕事の顧客でもある叔父に、彼女は眉を寄せた。
「機嫌悪いな」
「クンケル伯爵の後ろにウテシュ王国っての、何かおかしいのよ」
間に誰かいるのか、ウテシュ王国そのものが関わっていないか。そう判断した理由の一つに、ゼークト王国との見合いがある。説明を始めたバルバラは、地図の上にコップを置いた。
「おかしいでしょう? ウテシュ王国が黒幕なら、ゼークト王国にちょっかい出すわけないの。ゼークトの公爵家がロイスナー皇妃の実家よ。藪をつつく愚か者ではないはず」
「……愚か者ってのは、学の有無に関係なくいるぞ?」
いい例がアードラー王国のニクラウスだ。そう告げるジーモンに、そうじゃないと否定した。上手に伝えられないもやもやが残る。ウテシュ王国が無関係かどうかは知らない。ただ、国王主導で国が動いたにしては、情報が洩れすぎだった。
「絶対に変なのがいるわよ」
「それがわかったら教えてくれ。それからゼークト王国とウテシュ王国の婚約、何か知ってるか?」
「カタリーナ王女と双子王子のどちらかよ」
相手は確定していないが、見合いは行う予定だった。その情報がすでに古くなっていると知らないバルバラは、ジーモンにあっさりと話した。迅速な情報伝達手段がないため、こういった時間の狂いが生じる。狂いが少ないほど上質な情報であり、今回の話は無料で提供できる程度のもの。
承知で聞いたジーモンは、軽く礼を言って干し肉を差し入れた。アードラー王国の王都では、徐々に食料が入手しづらくなっている。不満が噴き出して破綻する予感に、ジーモンは無言で目を伏せた。
肘をついた行儀の悪い姿勢で、バルバラは唸った。叔父のジーモンから得た情報によれば、クンケル伯爵の後ろにはウテシュ王国がいると。
「つじつまが合わないのよね」
王太子が金を湯水のごとく使い込んだ、その噂は半分ほど本当だった。ただ、広まった時期がおかしい。すでに去勢して捨てた元王太子ニクラウスについては、別の噂のほうが有名だった。自称聖女のリリーを使って、金を稼ごうとして失敗した件だ。
腹を焼かれて子が出来ないならちょうどいいとばかり、娼婦にしようとした。個人的に客を取れば金が入って来ると思ったようだが、娼館の客は信用を買う。きちんと情報を制御され、衛生管理がされた宿だから金を払うのだ。通りすがりの道端で客を引く娼婦など、危険すぎて選ばない。
金を踏み倒すような悪客ばかり引いた挙句、自称聖女は狂って街を徘徊した。すぐに衛兵に確保され、王都の外へ捨てられたと聞く。そんな迷惑な存在なら、牢へ隔離してくれたらいいのに。バルバラがぼやいたのは、ほんの数日前だった。
元王太子ニクラウスの追跡は行わせているが、浮浪者の集落に転がり込んだらしい。
「よう、新しい情報あるか?」
「そういう聞き方は好きじゃないわ」
もっと包んで聞きなさいよ。溜め息をついてジーモンを見上げた。裏口から勝手に入って来る彼は、勝手知ったる娼館の常連だ。金払いのいい客だが、女達ではなく情報面だけ。バルバラの裏の仕事の顧客でもある叔父に、彼女は眉を寄せた。
「機嫌悪いな」
「クンケル伯爵の後ろにウテシュ王国っての、何かおかしいのよ」
間に誰かいるのか、ウテシュ王国そのものが関わっていないか。そう判断した理由の一つに、ゼークト王国との見合いがある。説明を始めたバルバラは、地図の上にコップを置いた。
「おかしいでしょう? ウテシュ王国が黒幕なら、ゼークト王国にちょっかい出すわけないの。ゼークトの公爵家がロイスナー皇妃の実家よ。藪をつつく愚か者ではないはず」
「……愚か者ってのは、学の有無に関係なくいるぞ?」
いい例がアードラー王国のニクラウスだ。そう告げるジーモンに、そうじゃないと否定した。上手に伝えられないもやもやが残る。ウテシュ王国が無関係かどうかは知らない。ただ、国王主導で国が動いたにしては、情報が洩れすぎだった。
「絶対に変なのがいるわよ」
「それがわかったら教えてくれ。それからゼークト王国とウテシュ王国の婚約、何か知ってるか?」
「カタリーナ王女と双子王子のどちらかよ」
相手は確定していないが、見合いは行う予定だった。その情報がすでに古くなっていると知らないバルバラは、ジーモンにあっさりと話した。迅速な情報伝達手段がないため、こういった時間の狂いが生じる。狂いが少ないほど上質な情報であり、今回の話は無料で提供できる程度のもの。
承知で聞いたジーモンは、軽く礼を言って干し肉を差し入れた。アードラー王国の王都では、徐々に食料が入手しづらくなっている。不満が噴き出して破綻する予感に、ジーモンは無言で目を伏せた。
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