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第4章 魔王なら出来て当たり前
40.転移魔法陣の危険性を指摘する
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約束通りベールの話を満足いくまで堪能したルキフェルは、ご機嫌で中庭の魔法陣の点検を始めた。鼻歌が漏れる瑠璃竜王は、定期的に行う転移魔法陣の座標調整を終えたばかりだ。あちこちに漂う魔法陣を整理する方法を考えてみる。
なんでもそうだが、気分がいい時に行うとうまく行く。一箇所に纏めるか、必要な時だけ呼び出すか。二択まで絞って唸る。大量の魔法陣は焼き菓子に似ていた。重ねておいても味は移らない。つまり魔法陣を積み重ねて保管しても発動するのだ。
しかし、ひとつ問題があった。転移して来た者が重ねた別の魔法陣に干渉して、よそへ飛ばされる可能性は否定できない。というか、おそらくその事故が起きると溜め息を吐いた。危険があるのに纏めるわけにいかない。発動した時だけ、積み重ねた山から出てきてくれたらいいが……そこまで設定すると発動条件が厳しかった。
「うーん、普段は片付けておいて時々使う。互いが干渉しない条件を付属して……」
無理かな? いい案が浮かばず、調整と点検だけ終えた時点で諦めた。今後の課題にしよう。くるりと向きを変えた視線の先に、親とも兄とも慕うベールの姿を見つけた。
「ベール!」
名を呼ぶと嬉しそうに微笑んで足を止めてくれる。いつもの彼に駆け寄る途中で、うっかり魔法陣を踏んだ。転んだ先で手をついた魔法陣が発動する。顔色を変えたベールを見ながら、転送された。現れた先は火口の近くで、舌打ちして自力で転移する。
魔王城へ戻ったルキフェルは、この大量の魔法陣の処理を真剣に考えた。今後も同じような事故が起きる可能性があり、今は慎重に使っている魔族も徐々に慣れてくる。日常的に使うようになれば、手順を省くなどの危険が増えるのだ。
「ルキフェル、無事でしたか」
「あ、うん。火口へ飛んだ。というか、この魔法陣を何とかしよう。そのうち誰か死ぬよ」
言い方は過激だが、間違っていない。ルキフェルは竜族だから、ほとんどの場所でも生き残れる。飛ばされた場所で即死する可能性は低かった。だが高温に耐性のない種族が火口に飛ばされたら? 逆に水に弱い種族が湖の上に落ちる危険もあった。どちらも命に係わる重大事故になる。
「鳳凰が、隣の大陸の氷の大地に落ちたら凍えるし。水の精霊が火口に出たら、間違いなく蒸発すると思う」
具体的な危険を口に出したルキフェルに、ベールが頷いた。養い子の意見に反対する気はない。なにしろ、今さっきルキフェル自身が危険を経験したのだから。
「案を練るなら会議を開きましょう」
「うん。ところでルシファーは?」
ルキフェルほど専門的ではないが、直感で魔法陣を弄る魔王の居場所を尋ねる。彼がいたら先に話を……そんなルキフェルの言葉に、ベールが低い声で応じた。
「書類を置いて消えました。居場所を探知したところ、魔力を消し去る結界を使ったようで……魔王軍に指令を出しています」
ああ、やらかしたのか。ルキフェルは納得した。魔力探知を遮る結界を張り、リリスやイヴと遊びに出かけたのだろう。先日まで大人しく書類整理をしていたから、休日が欲しかったんだろうな。同情する部分はすぐに消えた。
魔王が署名すべき書類は、以前の半分以下だ。リリスが赤子の頃の半分しかないのに、ふらふらと遊びに出るなんて。しかも数日後には休暇が予定されたじゃないか。スケジュールまで思い出し、ルキフェルは同情する気持ちを捨てた。
「ねえ、魔力以外でも探知できると思うよ」
新作魔法陣のお披露目と行こう。にっこり笑う養い子に、ベールは微笑んで水色の髪を撫でた。青年と呼べる見た目に育っても、可愛い子どものまま。認識が変わらないベールは、幼子に接するように褒めた。
「さすがです、ルキフェル。魔王軍の精鋭を差し向けるので、捕獲に協力してください」
「試したい魔法陣があるから、いいよ」
なんでもそうだが、気分がいい時に行うとうまく行く。一箇所に纏めるか、必要な時だけ呼び出すか。二択まで絞って唸る。大量の魔法陣は焼き菓子に似ていた。重ねておいても味は移らない。つまり魔法陣を積み重ねて保管しても発動するのだ。
しかし、ひとつ問題があった。転移して来た者が重ねた別の魔法陣に干渉して、よそへ飛ばされる可能性は否定できない。というか、おそらくその事故が起きると溜め息を吐いた。危険があるのに纏めるわけにいかない。発動した時だけ、積み重ねた山から出てきてくれたらいいが……そこまで設定すると発動条件が厳しかった。
「うーん、普段は片付けておいて時々使う。互いが干渉しない条件を付属して……」
無理かな? いい案が浮かばず、調整と点検だけ終えた時点で諦めた。今後の課題にしよう。くるりと向きを変えた視線の先に、親とも兄とも慕うベールの姿を見つけた。
「ベール!」
名を呼ぶと嬉しそうに微笑んで足を止めてくれる。いつもの彼に駆け寄る途中で、うっかり魔法陣を踏んだ。転んだ先で手をついた魔法陣が発動する。顔色を変えたベールを見ながら、転送された。現れた先は火口の近くで、舌打ちして自力で転移する。
魔王城へ戻ったルキフェルは、この大量の魔法陣の処理を真剣に考えた。今後も同じような事故が起きる可能性があり、今は慎重に使っている魔族も徐々に慣れてくる。日常的に使うようになれば、手順を省くなどの危険が増えるのだ。
「ルキフェル、無事でしたか」
「あ、うん。火口へ飛んだ。というか、この魔法陣を何とかしよう。そのうち誰か死ぬよ」
言い方は過激だが、間違っていない。ルキフェルは竜族だから、ほとんどの場所でも生き残れる。飛ばされた場所で即死する可能性は低かった。だが高温に耐性のない種族が火口に飛ばされたら? 逆に水に弱い種族が湖の上に落ちる危険もあった。どちらも命に係わる重大事故になる。
「鳳凰が、隣の大陸の氷の大地に落ちたら凍えるし。水の精霊が火口に出たら、間違いなく蒸発すると思う」
具体的な危険を口に出したルキフェルに、ベールが頷いた。養い子の意見に反対する気はない。なにしろ、今さっきルキフェル自身が危険を経験したのだから。
「案を練るなら会議を開きましょう」
「うん。ところでルシファーは?」
ルキフェルほど専門的ではないが、直感で魔法陣を弄る魔王の居場所を尋ねる。彼がいたら先に話を……そんなルキフェルの言葉に、ベールが低い声で応じた。
「書類を置いて消えました。居場所を探知したところ、魔力を消し去る結界を使ったようで……魔王軍に指令を出しています」
ああ、やらかしたのか。ルキフェルは納得した。魔力探知を遮る結界を張り、リリスやイヴと遊びに出かけたのだろう。先日まで大人しく書類整理をしていたから、休日が欲しかったんだろうな。同情する部分はすぐに消えた。
魔王が署名すべき書類は、以前の半分以下だ。リリスが赤子の頃の半分しかないのに、ふらふらと遊びに出るなんて。しかも数日後には休暇が予定されたじゃないか。スケジュールまで思い出し、ルキフェルは同情する気持ちを捨てた。
「ねえ、魔力以外でも探知できると思うよ」
新作魔法陣のお披露目と行こう。にっこり笑う養い子に、ベールは微笑んで水色の髪を撫でた。青年と呼べる見た目に育っても、可愛い子どものまま。認識が変わらないベールは、幼子に接するように褒めた。
「さすがです、ルキフェル。魔王軍の精鋭を差し向けるので、捕獲に協力してください」
「試したい魔法陣があるから、いいよ」
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