【完結】魔王様、今度も過保護すぎです!

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第20章 子どもが増える理由

379.温泉街の屋敷はいつも賑やか

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 先日中途半端に起こしてしまったせいで、リリンは呼びかけに答えなかった。リリスによると、あと一年足らずで目覚めるらしい。彼女お得意の直感なので、信じてもいいだろう。

 魔の森が目覚めるのは、世界に循環する魔力量の調整が終わったとき。魔力の放出も一段落し、出産ラッシュ終了の合図だった。目標がはっきりしているなら、頑張る甲斐もある。滅びそうだった種族も延命し、いくつか新種の登録も行われた。

 魔族はさらなる多様性を得て、繁栄の一途を辿るのだろう。ルシファーは久しぶりの休暇を取り、リリスとイヴを連れて森へ出かけた。護衛はヤンのみ。小山ほどのフェンリルの背に跨り、目的を定めずに方向だけ指示して移動する。

 気に入った場所で止まり、休憩して昼寝も楽しんだ。午後の陽が傾き始めたところで、温泉街の屋敷へ向かう。転移を使ってもいいが、こうして移動する時間もたまにはいいだろう。森の青々とした大木の呼吸や木漏れ日を感じ、動物や植物を目で楽しむ。

 温泉街の端に到着する頃には、すでに夕暮れだった。町外れの高台から夕陽を眺め、もう少し離れた屋敷へ足を踏み入れた。今回はベルゼビュートを始めとした皆に「邪魔するな」と命じてある。

 リリスは妊婦なので、ヤンの背中で腹を刺激しないよう、やや浮いて移動だった。そのためあまり疲れていないらしく、屋敷内をあちこち見回っている。イヴが大喜びでついて行ってしまい、ルシファーは主寝室で小型化したヤンの毛皮を整え始めた。

「我が君、姫達は大丈夫でしょうか」

「平気だ。それより今日はご苦労だったな。明日も頼むぞ」

「この程度なんということはありませぬ。お役に立てて……」

 ガシャン。語尾に嫌な音が混じる。お互いに顔を見合わせ部屋を確認するが、音の原因は見当たらない。となれば、廊下だろうか。二人で顔を覗かせた先で、イヴが何かを背中に隠した。

「どうした、イヴ」

「んーん、何でもないの!」

 近づくなと威嚇されれば、逆に気になってしまう。小さな両足の間から、ちらほら覗くのは、割れた花瓶ではないか? 別に割ったくらい問題ないが、なぜ隠すのか気になった。

「イヴ、怒らないからおいで」

「やっ!」

 拒否される。父親としてはショックが大きい。のそりと近づく大型犬サイズのヤンにも「めっ!」と叱責が飛んだ。普段のお昼寝であんなに世話をしているのに、邪険にされるなんて。項垂れたヤンの尻尾と耳が力無く垂れた。

「あらぁ、割ったの? ルシファーに直してもらいましょうね」

 思わぬところから援軍がきた。イヴの死角になる後ろから近付いたリリスは、割れた花瓶を見つけたらしい。ひょいっと無造作に我が子を抱き上げた。と……割れた花瓶の隙間に何かいる。

「っ! 捕まえた」

「パッパ。酷いことは、めっ!!」

 魔力で捕縛した相手を、イヴの無効化で逃がしそうになる。だが腐っても魔王、これでも魔族最強の名を欲しいままにしてきた男は、二重三重の策を練っていた。無効化された捕縛の外で、今度は結界が逃走を阻む。

 これまたイヴの「えいっ」で無効化されるが、結界は全部で十枚重ねていた。一枚消えても影響はない。さらに外側へ五枚ほど追加する。イヴがここまでして隠すのは何か……ドキドキしながら手元へ引き寄せ、花瓶の破片から引っ張り出す。

「……イタチ?」

「テンではありませぬか?」

「違うわよ、多分フェレットよ」

 すべて不正解なのだが、現時点で答えを知る者はいない。イヴがじたばた暴れるので、リリスはムッとした顔で彼女のお尻を叩いた。

「イヴ、ダメよ」

「やっ、やああああ!」

 叫んで全力で暴れるイヴは、ぽろぽろと涙を溢した。伸ばす手の先は、イタチに似た長細く茶色い獣に向けられている。

「……我が君、悪役になった気分ですぞ」

「違うぞ、ヤン。今のオレ達は完全に悪役だ」

 男達は顔を見合わせて溜め息を吐いた。
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