【完結】魔王様、今度も過保護すぎです!

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
432 / 530
第24章 思っていたのと違う

430.悩み深き魔王の頬に赤い紅葉

しおりを挟む
 魔王ルシファーの頬に立派な紅葉もみじ模様――愛娘イヴの平手打ちである。最強の純白魔王の結界をあっさり突破する彼女は、ちょっかい出されてキレた。

 叩いて満足したのか、保育園へ入る時は笑顔で「ばいばい」と手を振る余裕があった。笑顔で手を振り返したルシファーだが、執務室へ転移した直後から無言である。真剣な顔で悩んでいた。

 一人娘だった可愛いイヴには、かなり自由にさせてきた。リリスの時と同じように、大切に育てている。だがリリスを育てした過程で起きなかった変化が、イヴに襲いかかったのだ。

 弟の誕生である。シャイターンが生まれたことで、親の意識は自然と赤子へ向かう。より弱い者を守ろうとするのは、本能に近かった。二人が同時に泣いたら、シャイターンの確認を優先する。イヴはある程度自分で意思表示が可能だからだ。

 本当はリリスとルシファーが手分けして対応すれば問題ない。だが、イヴは泣きつく相手を選ぶのだ。転んだ痛みを堪えて涙ぐむ時はリリスがいいのに、寂しいときはルシファーでも構わない。その違いがよく分からなかった。

 手を伸ばして拒絶されるのは辛い。大人も子どもも関係なく、傷つく。自分が傷つくなら我慢するが、イヴに我慢させるのは違うと思った。今日の失敗を示す頬の手型を癒すこともせず、机でじっくり考え込む。

 魔族の頂点に立つ王の頬に立派な平手の跡、それも冷やすでも治癒魔法を使うでもなく、真剣に悩んでいるとなれば……周囲は色めきたった。

 イヴの仕業だと推測出来るが、治さない理由は不明だった。変な性癖があるなら別なのだが、過去にそういった事例もない。となれば、反省しているのだろうと結論づけた。侍従のコボルト達が心配する中、彼らの上司であるベリアルが代表して動く。

「魔王陛下、顔の傷を……その、治されてはいかがでしょう」

「ん? あ、そうか。忘れてた」

 言葉通り、本当に忘れていただけ。いつもならアスタロトが口に出し、苦笑いしながら治し終えている。ただ注意する部下が不在だったのだ。

 気づけば傷は一瞬で消せる。だが娘に関する悩みは、そう簡単に消えることはなかった。

「あのさ、ちょっと聞いてくれ。ベリアル……確か弟がいたよな」

「あ、はい。弟が二人います」

「弟が生まれた時、ヤキモチ妬いたか? 親の愛情を取られたとか、そういう意識は皆持つのかな」

 ベリアルはぱちくりと瞬き、イヴ姫の話に違いないと考える。答えようとして、自分の記憶を辿り……思わぬ事態に固まった。確かに弟はいる。だが、近い方の弟は年齢差が二桁年数だった。きちんと表現するなら26歳差だ。コボルトの成人は18歳なので、成人後に生まれた弟に嫉妬はなかった。末の弟はさらに8歳も年下である。

 主君ルシファーの疑問は理解できるが、答える材料がない。迷った末、彼は正直に白状した。弟達は成人後に生まれたので、そういった感情は持たなかった。参考にならなくてすみません、と。

「そうか」

 あまりにガッカリされたので、扉の隙間から覗くコボルト達に声をかけた。

「誰か、歳の近い弟妹がいる人~!」

「「はい」」

 二人が名乗りをあげた。その二人の説明を交互に聞いて、ルシファーは結論を出した。

 ――子どもの成長過程のひとつだから、優しく見守る。きちんと不満を聞いてあげる。これを忘れないこと……ん? それってレラジェやルキフェルがしてなかったか?
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。

桜城恋詠
ファンタジー
 聖女見習いのロルティ(6)は、五月雨瑠衣としての前世の記憶を思い出す。  異世界から召喚された聖女が、自身を虐げてきた前世の姉だと気づいたからだ。  彼女は神官に聖女は2人もいらないと教会から追放。  迷いの森に捨てられるが――そこで重傷のアンゴラウサギと生き別れた実父に出会う。 「絶対、誰にも渡さない」 「君を深く愛している」 「あなたは私の、最愛の娘よ」  公爵家の娘になった幼子は腹違いの兄と血の繋がった父と母、2匹のもふもふにたくさんの愛を注がれて暮らす。  そんな中、養父や前世の姉から命を奪われそうになって……?  命乞いをしたって、もう遅い。  あなたたちは絶対に、許さないんだから! ☆ ☆ ☆ ★ベリーズカフェ(別タイトル)・小説家になろう(同タイトル)掲載した作品を加筆修正したものになります。 こちらはトゥルーエンドとなり、内容が異なります。 ※9/28 誤字修正

【完結】獅子の威を借る子猫は爪を研ぐ

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
 魔族の住むゲヘナ国の幼女エウリュアレは、魔力もほぼゼロの無能な皇帝だった。だが彼女が持つ価値は、唯一無二のもの。故に強者が集まり、彼女を守り支える。揺らぐことのない玉座の上で、幼女は最弱でありながら一番愛される存在だった。 「私ね、皆を守りたいの」  幼い彼女の望みは優しく柔らかく、他国を含む世界を包んでいく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/20……完結 2022/02/14……小説家になろう ハイファンタジー日間 81位 2022/02/14……アルファポリスHOT 62位 2022/02/14……連載開始

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...