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第30章 受け継がれる未来へ
525.知らないからこそ子どもは強い
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イヴと仲良く並んで食事を終えたゴルティーは、機嫌よく尻尾を振る。その鱗は琥珀の名に相応しい美しい色をしていた。じっと見つめるイヴが優しく撫でる。
「鱗抜けたら欲しいわ」
びくっと全員が動きを止めた。ぎこちなく振り返る大人の表情に気づかないイヴに、ゴルティーは真っ赤な顔で「えっと、その、本気?」と聞き返す。問われたイヴは「うん」と素直に頷いた。意味は理解していない。これが竜族への求婚であるなど……。
「ダメだ、ダメだ、そんなの許さん!!」
ルシファーが間に割って入って止めるが、ゴルティーはもじもじと短い手を揉むように動かした後、上目遣いに純白の魔王を見上げた。
「そんなに怒らないでください、お義父さん」
「お、とっ!?」
呼吸困難に陥りそうなルシファーを、アスタロトが回収する。リリスが「あらあら」とルシファーを仰いだ。真っ赤な顔で卒倒寸前の魔王は、かつてない深刻なダメージを受けていた。
「イヴ姫様、ひとまず鱗の話はあとでしましょう」
ベールが落ち着いた口調で間に入り、イヴを下がらせた。本人は何が問題なのか理解できておらず、具合の悪そうな父を不安そうに見つめる。
ベルゼビュートはまだ膨らまぬお腹を撫でながら、声を立てて大笑いした。苦しそうにしながらイヴを手招きし、彼女に言い聞かせる。
「いい? 陛下はイヴちゃんが大切なの。だから心配させないのよ」
「うーん。わかった」
理解しているのか怪しい返答だが、ぱたぱたと足音をさせて走ったイヴがルシファーに抱き着く。受け止めた魔王の顔が柔らかく崩れた。抱き上げようとするが、嫌だと言われ手を繋ぐ。
エリゴスに汚れた口元を拭いてもらったジルは、まだ学校に入るかどうかの年齢だった。極端に成長が遅い。妊娠期間が三年というのんびりさなので、成長が全体に遅いようだ。ベルゼビュートより濃いピンクの瞳を瞬き、母に抱き着いた。
「そういえば、ルーシアのところの子は来なかったのね」
「学校のお友達と遊ぶのが楽しい年頃みたいです」
苦笑いするルーシアによれば、最近はここに集まったメンバーの子と遊ぶ時間が減ったらしい。同族の精霊と遊ぶことに夢中なのだ。競うように魔法を使って、水や風を操る能力は高くなった。その分、幼馴染みに分類されるイヴ達と遊ぶ時間が減ったのだ。
「そのうち、また遊ぶんでしょうね」
顔を合わせる時間が増えれば、自然と集まる機会が増えるだろう。別に違う道を歩く可能性もあるから、無理に一緒にいさせる必要はなかった。納得した様子のベルゼビュートは、後見する大公女の娘達を姪っ子のように感じている。可愛いし我が侭も許せてしまう。
「そういえば、イポスが二人目を身籠った話を聞いたか?」
やや冷えた唐揚げをもぐもぐと咀嚼するルシファーが、思い出したように尋ねた。全員が顔を見合わせたり首を傾げ、視線がルシファーへ集中する。
「その話、本当ですか?」
「誰も知らないのはおかしいですね」
「別の人と間違えたのでは?」
疑いの眼差しを一身に受け、ルシファーは麦酒で口の中の唐揚げを流し込んだ。やや咽ながら、首を横に振る。
「間違いない、昨日聞いた」
もう皆も知っていると思ったんだ。口止めもされなかったし。まさか、勝手に話したらいけない類だったのか? ルシファーが青ざめたところで、黙っていたアデーレが口を開いた。
「そのお話なら、私も聞いております」
途端に周囲の空気が変わった。
「侍女長が聞いたなら間違いないわ」
「ほんと、お目出度いお話ね」
ルシファーは首を傾げながら「どうしてオレだと疑われるんだ?」と不満を述べた。だがある意味、自業自得。様々な騒動を起こした前科を思い浮かべながら、アスタロトがぴしゃりと言い切った。
「信用がないんでしょうね」
「鱗抜けたら欲しいわ」
びくっと全員が動きを止めた。ぎこちなく振り返る大人の表情に気づかないイヴに、ゴルティーは真っ赤な顔で「えっと、その、本気?」と聞き返す。問われたイヴは「うん」と素直に頷いた。意味は理解していない。これが竜族への求婚であるなど……。
「ダメだ、ダメだ、そんなの許さん!!」
ルシファーが間に割って入って止めるが、ゴルティーはもじもじと短い手を揉むように動かした後、上目遣いに純白の魔王を見上げた。
「そんなに怒らないでください、お義父さん」
「お、とっ!?」
呼吸困難に陥りそうなルシファーを、アスタロトが回収する。リリスが「あらあら」とルシファーを仰いだ。真っ赤な顔で卒倒寸前の魔王は、かつてない深刻なダメージを受けていた。
「イヴ姫様、ひとまず鱗の話はあとでしましょう」
ベールが落ち着いた口調で間に入り、イヴを下がらせた。本人は何が問題なのか理解できておらず、具合の悪そうな父を不安そうに見つめる。
ベルゼビュートはまだ膨らまぬお腹を撫でながら、声を立てて大笑いした。苦しそうにしながらイヴを手招きし、彼女に言い聞かせる。
「いい? 陛下はイヴちゃんが大切なの。だから心配させないのよ」
「うーん。わかった」
理解しているのか怪しい返答だが、ぱたぱたと足音をさせて走ったイヴがルシファーに抱き着く。受け止めた魔王の顔が柔らかく崩れた。抱き上げようとするが、嫌だと言われ手を繋ぐ。
エリゴスに汚れた口元を拭いてもらったジルは、まだ学校に入るかどうかの年齢だった。極端に成長が遅い。妊娠期間が三年というのんびりさなので、成長が全体に遅いようだ。ベルゼビュートより濃いピンクの瞳を瞬き、母に抱き着いた。
「そういえば、ルーシアのところの子は来なかったのね」
「学校のお友達と遊ぶのが楽しい年頃みたいです」
苦笑いするルーシアによれば、最近はここに集まったメンバーの子と遊ぶ時間が減ったらしい。同族の精霊と遊ぶことに夢中なのだ。競うように魔法を使って、水や風を操る能力は高くなった。その分、幼馴染みに分類されるイヴ達と遊ぶ時間が減ったのだ。
「そのうち、また遊ぶんでしょうね」
顔を合わせる時間が増えれば、自然と集まる機会が増えるだろう。別に違う道を歩く可能性もあるから、無理に一緒にいさせる必要はなかった。納得した様子のベルゼビュートは、後見する大公女の娘達を姪っ子のように感じている。可愛いし我が侭も許せてしまう。
「そういえば、イポスが二人目を身籠った話を聞いたか?」
やや冷えた唐揚げをもぐもぐと咀嚼するルシファーが、思い出したように尋ねた。全員が顔を見合わせたり首を傾げ、視線がルシファーへ集中する。
「その話、本当ですか?」
「誰も知らないのはおかしいですね」
「別の人と間違えたのでは?」
疑いの眼差しを一身に受け、ルシファーは麦酒で口の中の唐揚げを流し込んだ。やや咽ながら、首を横に振る。
「間違いない、昨日聞いた」
もう皆も知っていると思ったんだ。口止めもされなかったし。まさか、勝手に話したらいけない類だったのか? ルシファーが青ざめたところで、黙っていたアデーレが口を開いた。
「そのお話なら、私も聞いております」
途端に周囲の空気が変わった。
「侍女長が聞いたなら間違いないわ」
「ほんと、お目出度いお話ね」
ルシファーは首を傾げながら「どうしてオレだと疑われるんだ?」と不満を述べた。だがある意味、自業自得。様々な騒動を起こした前科を思い浮かべながら、アスタロトがぴしゃりと言い切った。
「信用がないんでしょうね」
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