【完結】紅く染まる夜の静寂に ~吸血鬼はハンターに溺愛される~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第8章 赤い月の洗礼

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 数日後、リスキアがアイザックを伴って訪れた。

 久しぶりの友の訪問に、用意していた中国茶を出して歓迎する。アイザックが差し出した茶菓子をつまみながら、普段通りのお茶会が始まった。

「ライアン、頼みがある」

 突然切り出したシリルに、お茶のカップを置いて向き直る。隣で改まった様子で切り出すシリルがきゅっと右手を握り締めた。その様を横目に見つめながら、ライアンは続きを待つ。指先がくるりと金の三つ編みを回した。考え事をする時の癖だが、吸血鬼達は気づかない。

「リスキア……。フレディ達に、これを届けて欲しい」

 促した友人が取り出した小さな箱を、ライアンへ差し出す。受け取っても何の音もしない、まるで空のように軽い箱だった。大きさは手のひらに乗る程度だ。呼び出して渡せばいいのに、わざわざライアンに届けろと言う意図が掴めず、ライアンは目を細めた。

「オレが届けるのか?」

「ああ、アイザックも同行させる」

 平然と言い切ったリスキアは、どういうわけか目を合わせようとしない。

「おれも行くのか」

 初耳だったらしいアイザックも、珍しく驚愕を顕にしていた。互いにちらりと目で合図をすると、ライアンが考え込むように顎に手を当てる。

「その間、シリルの護衛は……」

「俺が務める」

 吸血鬼一族の長であり、現存する唯一の純血種であるシリルを守るために、守護者としてライアンは認められている。だが、元はリスキアが担当していた地位であり、立場であった。今は一族を纏めることが忙しい長老として君臨する彼が、わざわざ出向いたのは今回の頼み事があるからだろう。

「……それなら安心できるけど」

 気に入らない。

 僅かに滲ませたニュアンスに焦ったように、シリルはお茶を煽った。

 何かを隠している――同じように感じたアイザックと目配せし合い、ライアンは邪気のない笑みで2人の吸血鬼に了承を伝えた。ほっとした2人が表情を和ませる。だが、ライアンの夜明け色の瞳が笑っていなかったことに、吸血鬼達は気づけなかった。
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