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第三章 女王ゆえの傲慢
第12話 女王の覚悟(1)
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主の悲鳴が聞こえる。
なのに近づくことは許されなかった。美しき彼の人の状況を透視することは出来るのに、転移はことごとく妨害される。
忌々しい『死神』の魔法陣によって――。
二つ名を持つ魔性は多くない。
魔王達を筆頭に、『女王』ヴィレイシェ、『氷雷』レイリ、『龍炎』ラヴィアなど、ほとんどの二つ名は『彼らの属性』を示した。炎を自在に操るラヴィア、氷と雷に特化したレイリの名は顕著な例だ。
女王の名を冠する彼女は、確かに魔王に次ぐ魔力を持っていた。
整った外見、豊満な肉体、そして奔放で自分勝手な性格……すべてが上級魔性の中で飛びぬけている。だから従った。美しいヴィレイシェを主と仰ぐことに誇りを持って、従ってきたのだ。
だが、魔王に次ぐ魔力は『歴然とした格差』があった。魔王と彼女の順位の間に割り込む強者はいないが、逆に魔王へ絶対に届かない魔力による格差が存在する。世界に選ばれ顕現した魔王達と、偶然の産物として生まれたヴィレイシェは、象と蟻ほどに違う。
それでも――。
「我が君……」
主の危機に、集まった魔性達が様々な手法を講じていた。透視を得意とする魔性の言葉で、転移阻止の魔法陣が主の身体に刻まれたと知る。
魔法陣はひどく美しかった。金色に光を帯びた魔法陣を読み解くことは難しい。完成され発動した魔法陣を書き換える技を彼らは持たなかった。そして、格上の魔法陣を書き換える魔力も足りない。
ゆえに心配つつ……失う不安に苛まれながら、新たな手段を探した。
「早くせねば」
「外側から崩すよりない」
「もう時間がないのだ!!」
必死になる彼らをあざ笑うように、悲鳴は小さくなる。透視の能力を持つ魔性の中には、耐え切れず発狂する者まで出ていた。
……黒い蟻に似た虫が、美しい主の身体を食い荒らしていく。生きたまま、少しずつ食われる恐怖……気を失うことさえ許さない魔法陣が、豊満な胸の上に刻まれていた。
「ひ…ぃ、あ、ああぁ……」
気高く、美しくあった主―――誇り高い彼女をして、ここまで壊される恐怖とは……。
格上の実力者に手を出したのだから、返されるのは当然だろう。そんな当たり前の話は馬耳東風、まったく意味を成さなかった。
女王の配下である我々は、ただ彼女を救いたいのだ。必要とされ、声をかけられ、見つめて欲しい。そのささやかな願いのために、命すべて使い尽くしても後悔はなかった。
なのに、今はどうしても届かない。
「やぁ…ぃや……めて……あぁ――っ」
あの美しい肢体を食い破る虫けらを掃って差し上げることも出来なかった。無力感に苛まれる時間すら惜しい。
「ヴィレイシェ様……」
転移阻止の魔法陣は滅多に使われない。使う必要性も場面もあまりないからだ。逆を言えば、転移できない場所を特定できるなら、その魔法陣の外側に転移してしまえば済む。
新たな転移地点を特定することさえ出来れば、大して難しくないのに……。
実用性のない魔術だが、今回は最悪の形で使われた。
『死神』を捕らえる為に作られた空間は狭く、中央付近でもがき苦しむ主を中心に展開する魔法陣に覆われている。外側に空間がないため、まず魔法陣の外を選んで転移する場所を作る必要があった。
そこから魔法で穴を繋げて近づくという、まどろっこしい方法を選ぶしかない。
なのに近づくことは許されなかった。美しき彼の人の状況を透視することは出来るのに、転移はことごとく妨害される。
忌々しい『死神』の魔法陣によって――。
二つ名を持つ魔性は多くない。
魔王達を筆頭に、『女王』ヴィレイシェ、『氷雷』レイリ、『龍炎』ラヴィアなど、ほとんどの二つ名は『彼らの属性』を示した。炎を自在に操るラヴィア、氷と雷に特化したレイリの名は顕著な例だ。
女王の名を冠する彼女は、確かに魔王に次ぐ魔力を持っていた。
整った外見、豊満な肉体、そして奔放で自分勝手な性格……すべてが上級魔性の中で飛びぬけている。だから従った。美しいヴィレイシェを主と仰ぐことに誇りを持って、従ってきたのだ。
だが、魔王に次ぐ魔力は『歴然とした格差』があった。魔王と彼女の順位の間に割り込む強者はいないが、逆に魔王へ絶対に届かない魔力による格差が存在する。世界に選ばれ顕現した魔王達と、偶然の産物として生まれたヴィレイシェは、象と蟻ほどに違う。
それでも――。
「我が君……」
主の危機に、集まった魔性達が様々な手法を講じていた。透視を得意とする魔性の言葉で、転移阻止の魔法陣が主の身体に刻まれたと知る。
魔法陣はひどく美しかった。金色に光を帯びた魔法陣を読み解くことは難しい。完成され発動した魔法陣を書き換える技を彼らは持たなかった。そして、格上の魔法陣を書き換える魔力も足りない。
ゆえに心配つつ……失う不安に苛まれながら、新たな手段を探した。
「早くせねば」
「外側から崩すよりない」
「もう時間がないのだ!!」
必死になる彼らをあざ笑うように、悲鳴は小さくなる。透視の能力を持つ魔性の中には、耐え切れず発狂する者まで出ていた。
……黒い蟻に似た虫が、美しい主の身体を食い荒らしていく。生きたまま、少しずつ食われる恐怖……気を失うことさえ許さない魔法陣が、豊満な胸の上に刻まれていた。
「ひ…ぃ、あ、ああぁ……」
気高く、美しくあった主―――誇り高い彼女をして、ここまで壊される恐怖とは……。
格上の実力者に手を出したのだから、返されるのは当然だろう。そんな当たり前の話は馬耳東風、まったく意味を成さなかった。
女王の配下である我々は、ただ彼女を救いたいのだ。必要とされ、声をかけられ、見つめて欲しい。そのささやかな願いのために、命すべて使い尽くしても後悔はなかった。
なのに、今はどうしても届かない。
「やぁ…ぃや……めて……あぁ――っ」
あの美しい肢体を食い破る虫けらを掃って差し上げることも出来なかった。無力感に苛まれる時間すら惜しい。
「ヴィレイシェ様……」
転移阻止の魔法陣は滅多に使われない。使う必要性も場面もあまりないからだ。逆を言えば、転移できない場所を特定できるなら、その魔法陣の外側に転移してしまえば済む。
新たな転移地点を特定することさえ出来れば、大して難しくないのに……。
実用性のない魔術だが、今回は最悪の形で使われた。
『死神』を捕らえる為に作られた空間は狭く、中央付近でもがき苦しむ主を中心に展開する魔法陣に覆われている。外側に空間がないため、まず魔法陣の外を選んで転移する場所を作る必要があった。
そこから魔法で穴を繋げて近づくという、まどろっこしい方法を選ぶしかない。
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